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人格形成は環境のせいで70

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

        ※


 悠希ーー。

 あの子が待っているから、こんなところにはいられない。


 病院に連れてこられた個室の中で、悠美はベットを降りてそわそわと室内を歩き回る。狭い病室内で同じ場所を何度も踏みしめて、行ったり来たりしながら焦っていた。特に悠希が学校から帰ってくる時間になると落ち着かず、悠希の夕飯の心配をし始めた。

 不安が膨れ上がる。


 手が震え携帯を胸に抱き寄せ、悠希が帰ってくる時間を確認しようと、決意して握りしめ悠希にコールしようとする。けれど携帯を見ると、瞬時に嫌な思い出が蘇ってきた。


 ああ、真由のように悠希も私からの電話に出てくれないかもしれない。真由が自分を疎ましく思っていたように、悠希もそう思っていたのかもしれない。

 そうして真由を助けられなかった。


 交際関係の中に悪いものが混じらないように、女の子だから余計に目を見張っていたけれど、結果的に疎ましがられた。女の子は肉大敵に男子に劣ってしまうから、危険がないように周囲のものを排除しようと頑張ってきたつもりだ。


 悪い男にかかったら一生を棒に振る。

 それくらい交際相手は大切なはずで、自分が結婚する時も親が決めた婚約者と安定した家庭を築けるように努力した。


 安定していたかどうか?

 そんなことを眼差しで子供たちに指摘されてしまえば、答えることなんて何もなかった。


 けれど自分は、親の教えの通り主人に仕えて家庭を守り、誇る家業である医師の妻としての役割を果たさなければならないと思っていた。


 アルコールは唯一の息抜きで、主人に対して言いたいことを言うための装具で、反面全てをめんどくさくするガラクタだった。


 真由ーー。随分前からずっと家庭は壊れかけていた。自分と亘の夫婦関係が危うくなっていたのに、次女の懐妊を知ることになった。そして生まれたのが真由で、正直その懐妊を知ったとき手放しで喜べたかどうかと問われれば、否定しなければならない。


 親にとって子供は全て均等に愛しい子だと、それは理想論で社会が押し付けてくる闇だった。


 肉親に対する愛情がないわけでもなく、まして自分の腹から生まれた子供を無条件に守らなければと思わないわけではない。思わない親は非道だと、悠美は教育からくる背景で判断しているのか、真実自分の思いからなのか、考えるほど余裕のある日常を送ってはいない。自分が産み落とした生命二人の人生、その先について幸あることを願い、自らの教育が間違っていなかったのかばかりを自身に問う毎日なのだ。


 それで私は育児に失敗した。

 悠希は私に対して距離を置いて接してくるし、真由はーー。

 子供が親よりも先に死ぬなんて、これほどの親不孝はない。仕打ちはない。


 真由を恨みに思うことなど微塵もなかったが、置いて行かれた悲しみが過去ばかりを振り返らせた。

 どうして、あの時、自分が、彼女を、追い詰めなかったら、もしかするとーー?

 どうして、彼女が、ああいった行動をとった時、自分の行動が、もっと、彼女の、気持ちを、汲み取れていたらーー?


 真由、真由、真由!

 失ったものが計り知れなくて、悠美は病院の狭い個室内を忙しなく歩き回った。


 悠希まで同じ轍を踏ませてしまう母親であってはならない。夕飯すら用意できないで、悠希は一体何を食べて過ごすのか。そうそう亘は仕事で家に戻れない。そうすると悠希は、誰もいないあの、真由も帰らず、無機質になってしまった我が家で一人何を食べるのだろう?

 気になって仕方がなかった。


 室内の扉を開く。鍵でもかかっていそうなくらい、入れ替わり立ち替わり院内の看護師に監視されていると思っていたのに、病室の扉は開いてくれた。


 真由はーー?

 悠希はまだ学校だろうか?

 真由のことを心配して悩んでいるかもしれない。

 あの子は普通の子供とはいつも違っていたから。

 感情すら表象化出来ない不器用な子だったから。


 すぐにでも悠希に連絡を取りたくて、悠美は携帯だけを手にして、病院を抜け出した。


今日は再び、こんばんは。

うむ。

書くことがない。

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