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人格形成は環境のせいで67

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

        ※


 リンフィーナが壊れていく。

 愛しくて、満身創痍で彼女にこの身を捧げようとしても、彼女の心が壊れていく音が耳から離れない。


 大丈夫だ。

 お前はリンフィーナ。

 決して魔女ソフィアではない。

 17年間育てた、気が強くて無鉄砲な、それなのにどこか自信を持てない小さな姫君。


 子供だった彼女が、夜毎自分の葡萄酒を飲む。さして強くもないというのに、眠れないのか酔った様子でぶつぶつと何かを呟いている。


 自分にしなだれかかってきながら、つぶやく名前は別の男の名前なのだ。

 全くなんて残酷な姫君なのだと、妹として育てながら笑えてくる。心の声が丸聞こえだ。


 しどけない仕草で酔いながら絡みついてくるのを袖にしながら、寝転がって適当にあしらう。

 飲めないのに、飲み過ぎなのだと、彼女のおでこを軽く指で弾き、大人しく寝るようにあやしている。これでは異性に対してというよりは、妹としての扱いよりも原点に戻り、猛獣使いの気分になる。


「兄様、私そんなに子供かな!?」

 そう言いながら縋り付いてくる彼女の太ももが、あられもない姿で下半身に絡みつく。縋り付いてくる力も、酔っているのか容赦がなく、片腕は首に回しもう片方の手で髪の毛を掴んで離さない。


 ーー酒臭いし。

 笑えるくらい色気がない。


 だがそんなことを言えばこの野性味溢れる環境で育ててしまったリンフィーナに殺されかねないと苦笑する。私はゆるく彼女の眉間の辺りを指で弾き、「飲み過ぎなんだよ」と傍に寝そべっている。


 それで彼女の憂さが晴れるのならいいかとも思うが、対して自分は酒を絶った。

 この状態で戯れられて、理性を保とうと思えば酒は厳禁。断酒していてこそ、保てる義理というものがあるし、責任感はシラフの時の判断に委ねたかった。


 かつての友人に、お前は酒に逃げる性質があると手厳しい指摘を受けたことがあり、今回ばかりはそうもいかず、退路を断つつもりで一滴も口にしなくなった。

 その代わりとばかりに、リンフィーナが自分の代わりにグラスを傾けているのだ。


『飲んでいないと兄様は私なんて抱けないんだ』

 そんな挑発的に気持ちを試すようなことを言っておいて、喉元過ぎれば寝る時に常用的に飲酒して寝落ちするのは彼女の方だ。 


 アセス・アルス・ラーディオヌ。

 彼が居なければ、彼女はどうあっても死線を彷徨い、精神が安定しない。寝所で抱いている時だけ、彼女は自分のものになり、だからその瞬間に依存して危うく彼女の心を蔑ろにしそうになる。

 このままなし崩しに自分の幸せだけを追ってしまいそうになる。


 けれどーー。

 いくら身体で繋がっても、心は別物であることを、この歳になって知らなければならない。

 わかっていたはずなのだーー。自分とリンフィーナが同時に興味をそそられる存在が、どれほど大きな存在となっているかということ。


 自分にとっても、リンフィーナにとっても、彼に出会う前は二人だけで感結していた未来に胸躍らせた。ラーディア一族という王族に縛られるか否か、そんなしがらみは無視して、ずっとふたり一緒にいるという未来。


 それがアセスーー、彼と出会って大きく変化する。それほどに無視できない存在だ。


 漆黒の髪の美しく整った顔の男の顔をじっと見つめる。

 こうして眠っていれば女人のようだが、ひとたび目を開いて口をきけば、その眼光は鋭く、その毒舌にこちらが舌を巻くほど棘がある。

 彼にとって棘はスパイスのように魅力があり、積み重ねた努力が自信となって表出するため、目を覚ました彼を誰が軽くあしらえるだろう。


「どこで何をやっているんだか……」

 早く目を覚まして、彼の口から、たとえ100年育てたイバラの棘のような非難の言葉でも浴びせられたかった。


 明日で八日目の刻を迎える。

 アセスのことだ。

 戻ると信じてはいるけれど、少し焦っていた。


 同時に彼が目を覚ました時、どんな顔をして会ったら良いのかわからずにいる自分を持て余す。

 アセスとリンフィーナの間に割り込んだ形になった自分は、とんでもなく我儘で強欲なのだと身に染みて知ることになった。


 恋愛なんて何処吹く風とご無沙汰にしてきたツケがここで回ってくるとは思いもせず、まるで初恋を拗らせているかのような稚拙さだった。


 そっけなく、絡めてくるリンフィーナの太ももを引き剥がし、そこにいる自分は、まるで十代でレイトリージェに入れあげた時のままだ。サナレスは自分の頭をぐしゃぐしゃに掻き上げた。


 気持ちのない男女関係ほど気楽なものはないというのに、よりにもよって本気になってしまった相手が、自分が子供から育て上げた妹だというのが情けない。

 本当に情けないーー。


 リンフィーナは一人しかおらず、こればっかりはアセスとの話し合いで彼女の所有権を決めるというわけにもいかない。

 妹の前では死んでも見せられない姿で、サナレスは頭を抱え枕元で項垂れた。


 アセスの言葉を思い出す。

『やっとスタートラインに着いたわけですね』

 そう言ってうちに秘めた怒りをオーラで現してきたアセスと話したのが、もうずいぶん昔のことのようだ。

 スタートラインどころか、誘惑に負けてフライングして、どの面下げて毎日お前の顔を見に来ているのか、いつも迷うよ。

「アセス」

こんばんは。

一人称逸脱しています、最終話に向けて。

そこはご容赦いただきたい。

自覚ありなので。


これは偽りの神々シリーズという長編の中の一部です。


オタクとも十Gシリーズとも絡んでいます。書いている人の脳が一つなので、ご容赦ください。

なるべく、一話ずつ完結したいのですが、所々絡みを自然と書いてしまいます。

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