人格形成は環境のせいで62
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー
※
「断っておきますが、私達は戻ることが目的ですが、死霊まであちらの世界に連れて行ったら、あなたが言っていた現での百鬼夜行が実現してしまいますからね」
だから決して深山みゆきを媒介にされ、転生する道を開いてはいけない。
「わかってるって、蓮しっかり働いて」
「ああ? 人使い荒いって」
「施設の子供達を盾にこっちの建物、拠点を守れ」
「わかってるって。でも木杉先輩も手伝ってくださいよ」
冥府にあってもこの二人は学校にいるかのようにおちゃらけた会話を続けている。
ことの重要性がわかっているのかどうかーー、私は嘆息して二人の様子を見守っていた。
「アセスちゃんとみゆきちゃんには絶対に指一本も触れさせないからね」
木杉は、見た目で完全に私の性別を勘違いしている。
ちゃん付けはいただけないと複雑な内心をうまく表情に表せない私を置き去りにして、木杉はわざとらしく指を鳴らして魍魎が通ってくる通路に降りて行った。上物を破壊してしまっているので、瓦礫の下になった階段に続く足場が悪い。
木杉、ーーこいつに殺意を覚える。
許されるなら、どさくさ紛れにこいつをここで葬ってしまいたい誘惑に駆られたが、ぐっと私情を飲み込んだ。
「一緒に行きましょう」
少なくとも私は山村悠希として過ごしてきた別世界を嫌ってはいない。
私を生み出した両親という存在がまだ現には健在なのだ。魑魅魍魎が行き交う通り道を開いてしまうことは阻止したかった。
深山の守りを子供達に任せるのであれば、ここを離れてもいいかと、木杉についていく。
右手にはアセスとして使用していた長剣を召喚している。冥府というのは空想上のものが現実に現れる。というか一番馴染んだものを手元に置くことができるのか。
便利な世界だった。
「危ないよ、気をつけて」
先導する木杉は私をまた女人扱いしてきたので、不機嫌も相まって私は彼よりも前に出て、向かってくる亡者を長剣で薙ぎ払った。
「うっわー、美しいのに勇ましいとか、萌えるわ〜」
背後から緊迫感のない口笛が聞こえ、私は力が抜けて壁に手をついて項垂れる。戦意喪失させてくれているのは味方であるはずのこいつじゃないだろうか?
「木杉博士もそろそろ、本領発揮したらいかがですか?」
蓮が火炎竜なら、木杉の正体はなんだろう?
不意に沸いた殺意で発作的に葬ってしまわないうちに、せめて彼の正体を知りたかった。
「僕はもっと美女に信頼されたいから、頑張るねぇ」
彼を取り巻くオーラの色が少し変化したのを私は見逃さなかった。やはりただの博士ではないらしい。
彼は左手を頭上に持ち上げ、私達が進む進行方向に向かって力を蓄積していく。
水の属性だと瞬時に悟った。
手の中に溜められて行く力は強力で、水の属性を持つ天道士と同等、もしくはそれ以上かもしれない。
アセスとして地の天道士だった私からしても、充分警戒しなければならない存在だった。
「確かに尋常じゃなさそうだ……」
木杉が右手を振り下ろした瞬間、病院の自動ドアのガラス戸に張り付いていた亡者が、入口ごと吹き飛んだ。
こんばんは。
今日はもう少し書こうかな。




