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人格形成は環境のせいで5

こんばんは。

かなりの天然のアセスの一人称、書き進めながら、どうなることやらと案じています。

本編の続きにはなるけれど、どうかなぁ。


       ※


 天道士の試験に合格する少し前から、呪術の使用に詠唱は必要なくなっていた。

 身体の奥から四肢の先端まで、流れる電流のような力がみなぎっているのを感じていた。


 私がこの力を解放したらどうなるのか、恐ろしくて試すことができなかった。

 水月の宮で半人半漁に襲われた時でさえ、殺されることよりも一度力を使ってしまえば、制御できなくなるのではないかと躊躇った。


 そういえばあの時、自分に契約を持ちかけた魔物はいったい何だったのだろう。


『死にたくなければ私と契約しろ。私の力を解放しろ』

 そう言って自分を誘惑してきた。


 あの時から力は更に潮が満ちるように膨らんでいったが、あれから例の魔物の声は聞いていない。

 ふとあの時のことを思い出すと合点がいかないことがいくつかあった。


 絶体絶命の状態だったので記憶が不確かだが、私は水月の宮には用意周到な結界を張っていたはずだった。半人半漁が生物だとして侵入を許してしまったのは手落ちだったとしても、魔物が宮内に入ることを私が使役する精霊の長達が許すだろうか。


 禍々しさは魔物でしかない。

 魔導と契約がなされたものに刻まれる印が、自分の身体には刻み込まれた。


 けれどーー、ただの魔物ではないような……。


 三つ目の少女は手の中に青い火の玉を作り出し、それをこちらに投げてよこす。

 右へ左へ俊足でその攻撃を交わしながら、頭の中でそんなことを考えていた。


「フィス、捕らえて」

 少女の声とともに、自分の背後の空間が歪み、白くて大きな手が影のように伸びてきた。


 しまったと思った時には、黒いフードを被った長身の男に腕で首を拘束されている。


「相手をするなんて言って口ほどにもないんだ。人形さんなら人形らしく振る舞っていればいいものを」

 そう言って少女は悦に入って笑っている。


「同じアルス家の血統の貴族だというから、もう少し骨があるのかと身まがえたけれど、金髪の男ほどじゃないじゃない」

 少女がそういうと同時にアセスの体は青年に捉えられたまま数十メートル宙に浮いて、次の瞬間重力以上の風圧を感じながら、地面に叩きつけられる。


 顔面からぐしゃり。

 これが肉体のある世界であれば、瞬殺されていたかもしれない。

「……いっ」


 痛みが走って、血を吐いた。

「あぁ、ちゃんと痛覚は感じるわよ。冥府で私たちに処刑されれば、もう二度と生き返らないから、大きな口を叩いてられないんじゃない?」


 少女は床に這いつくばっている私を見下しながら、かなり饒舌になっているようだ。


「もう一人のアルス家の血統、金髪の男より骨がないわね。ヨアズ様は怒るかもしれないけれど、フィス、おまえを怪我させたアルス家の血統へ、報復しちゃう?」


 アセスはなんとか手をついて、床に血液まじりの唾を吐いて、口元を手で拭った。


「今なんて言いましたか……?」

「あんたと同じアルス家の血をひく金髪の男に、フィスは怪我を負わされたの。その腹いせにあんた、殺しちゃおうかしらって」


「その前です!」


 私は逆上しそうになるのを抑え、重くて強い言葉で確認する。

「私のことを金髪の男より骨がないと?」


 こいつらがいう金髪の男は、先だって冥府で煉獄の炎に焼かれたと言っていた、アルス家の直系であるサナレス・アルス・ラーディアのことだ。


 痛みもあって、身体の底からゆらゆらと力の源が煮えたぐってくる。

 

 よりにもよって、今私をサナレスと比べるなんて、ーー命知らずなことを。

 まだ彼との勝負はついていないというのに、第三者に比べられ勝敗を言い渡される覚えはないと、アセスの全身から怒りが震え、力となって溢れ出してくる。


 そうーー。

 ここならいくら力を解放しても、構わないのだ。


 試してみよう。


 腹の底に飼った魔物を一気に解放するような気分だった。

 ドンーー!!


 ものすごい爆音と共に、四方八方、自分たちがいる空間が破裂して消失した。

 フィスというフードの男も、三つ目の少女も、白い空間で斜めに引き裂かれるように消失していくのを目にする。


 こんな力規格外だ。

 解放した本人である私ですら、目を見張った。


 あれ?


 そして力自体を暴発させてしまった私の身体も、いや今は魂でしかないのか。

 吹っ飛ばされて、影も形も無くなってしまう。


 これって敵もろともに自分も、ぶっ飛ばしてしまったようだ。


 まるで自爆テロみたいに魂が吹き飛ぶのを見て、私は呆然と運命を天に任すより他なかった。

 偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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