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人格形成は環境のせいで49

こんばんは。

9月、秋の夜長はお勉強月間で、小説は息抜きできる唯一の楽しい習慣になっています。

10月入ったらもっと楽しもう、とか今から考えています。


お付き合いのほど、よろしくお願いします。


        ※


 誰かが自分を取り囲み、ボソボソと相談しあっている声が聞こえていた。

 近くて、遠い声。

 身体を起こそうとするのに、頭がぼんやりとして起き上がれない。


「こいつほんとに生き返る?」

「なんてこと聞くんだよ。勝手に僕の薬を使っておいて」

「だって仕方ないだろう? 総帥様がお望みだったんだから」

「仕方ないじゃ済まないよ。ーーもし生き返らなかったら、生まれてこの方ほんっとに健全に生きてきたのに、ぼぼぼ僕っ、今頃になって人殺しになっちゃうしさ」


 聞いたことのある懐かしい声だった。

 私は瞼を開けたくて意識を保とうとするが、石のように固まった身体はいうことをきかない。


「人殺しになった挙句、殺されるかもなぁ」

「ば、ば馬鹿なこと言わないでよっ! 相変わらず性格悪いんだから、冗談でもさ、そ、そんな物騒なこと想像しないでくれる?」

 一人の男は自分がよく知る男で、そうだ。確かに性格については恐らくかなり難ありの人間だような気がする。

 そしてもう一人は何を動揺しているのか、何度も言葉を詰まらせている。


 ああ。

 こっちの世界じゃ吃音って言ったかな?

 私はぼんやりと二人の会話を聞いている。


「冗談で言ってるわけじゃないんだよなぁ、残念ながら。だってさ、サナレスって昔からキレてるでしょ。なんていうかさ、非常識だし」

「は? サナレス殿下は僕の可愛い教え子だよ!」

「可愛い!? 笑えるなそれ」


 私の脳がその名前を聞いて覚醒する。

 サナレス!


「だってもうすぐ7日経つだろ? これでこの人戻ってこなかったら、多分私はサナレスからぶっ殺されるだろうし、お前もな……、流刑になるぐらい覚悟しといた方がいいんじゃない?」

 私の心臓がどくんと跳ねた。


 ここにいる二人を私は知っている。

 一人はヨースケ・ワギ。そしてもう一人は彼の友人、リトウ・モリだ。


「まだ7日経ってないよ。もう少しすればきっと」

「ショック療法でもやってみる?」


 二人が何を言っているのか察してから、心が流行った。

 七日経つーー?

 それは私が彼らの側いる身体、つまりアセス・アルス・ラーディオヌに戻らなければならない期限だったはずだ。


 戻ってきたのか?

 二人の声は聞こえていたが、動こうにもひどい頭痛があって、まつげの一本も動かすことができない。焦ってはいても、まるで底の深い水中に沈められていくような感覚があり、手を伸ばしても二人のいるところに届かないもどかしさがあった。


 けれど確かに聞こえている。

 悠希として生を受け、自分の前世の記憶を持ってはいても、それすらが狂気なのかと疑う瞬間があり、心が崩壊しそうになっていた。


 私は確かに、戻らなければならないところがあるのだ!


 それなのにヨースケとリトウの声は少しずつ自分から遠ざかっていく。

 待ってくれ!

 私は戻らなければ。

 約束を果たさなければならない。


 もがいても、もがいても二人に手が届かない。

 

 代わりに違う者の声が聞こえてきた。

「ねぇ、やっぱりこれって犯罪じゃない?」

「そう言ってもさ、俺は今回ばっかりは木杉っちに賛成。あんな化け物みたいな力見せられたらさぁ、こうするしかないでしょ?」

「化け物って、あなたも充分規格外」

「うわぁ、みゆき先輩に褒められたぁ!」


 「ちょっと、うるさいよ」

 高岡蓮と深山みゆき、そして二人の会話を遮ったのが木杉貴男だ。


「薬効きすぎでしょ? 全然起きてこないじゃない。もう深夜だし、普通はさ親とか心配するでしょうし。下手すればこれって誘拐……」

「みゆき先輩、高校生男子なんて深夜徘徊は老人並みよぉ。可愛い女子の元渡り歩いてさぁ」

「それは蓮だけでしょ? 山村君とこ、今妹さんのことで大変じゃない」

 頭が割れるように痛かった。


 山村悠希ーー。

 それを取り巻く環境が、再び私の周りで現実になっている。


 今度は少しだけ睫毛が持ち上がり、私は低くうめいた。

 どうやら服薬させられたらしい。そのせいか脳だけが覚醒していても、なかなか身体を動かしたり、声を出すことが難しい。


「ああ、そろそろ3人目の部員がお目覚めだよ」

 一番の食えない男であるはずの木杉は、優しげな声で他の二人に合図している。


 そうだ、私は彼にしてやられ、こうして伸びていたらしい。

 少しだけ視界を確認できるようになると、そこは何度か来たことがある部室の中だった。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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