人格形成は環境のせいで48
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騒動となった教室の外で、木杉、そして深山みゆきと高岡蓮まで雁首を揃えている。
私は一瞥しただけで、彼等の呼びかけに応じる気持ちは失せている。
彼等はおそらく、このとりかえばやによって薄気味悪い傀儡になってしまった生徒達をどうにかしようとするだろうが、私にはどうでもいいことだった。
廊下で騒いでいる木杉達からついと目を逸らして素知らぬふりをしていると、木杉のやつが大人気なくも、私に向かって中指を立てた。
呆れ果てて、私はため息をついた。その肩越しに傀儡1人が手を伸ばしてきて、煩わしさが二倍になる。
どうせもう魂は入っていない。いいだろう。
先ほどよりも制御できない力で吹き飛ばしてしまう。
勝手な解釈で行動を決める私のしたことを、しかし蓮が止めに入った。壁に叩きつけられる瞬間の傀儡を、とてつもない瞬発力移動し、すんでのところで受け止めたのだ。
ほう、と感心して私は軽く拍手する。
すると蓮は私に対して「馬鹿野郎、死んだらどうするんだ!?」と声のトーンを荒げて愚痴ってきた。
「死んでいませんか? すでにそれ」
指を刺して嘲笑すると、必死で走り込んだ蓮は、こちらに対して身構えたようだ。
とりかえばやが進んだ傀儡が敵ではなくて、私に歯向かってくるのか?
お前達の敵は誰だと思っているのだ、と怪訝に思い、私は顎を上げてその顔に侮蔑の色を濃くしてしまった。
「お兄ちゃん」
ここ1ヶ月、幻聴が聞こえた。
耳元で囁かれる声は、あっけなく死んだ真由なのかと思ったが、真由という妹の影に私は小さな少女の幻影を見ていた。
真由と同じように、他人によって意味もなく奪われた小さな命のことが思い出されて、仕方がない。
ベルーー。
ラーディオヌ一族の貧民街で出会った少女は、私にクッキーを食べさせようとして、高級な甘味を貴族街に買いに出かけて、貴族の馬車に跳ねられた。
彼氏だと主張するくだらない男が起こした事故に巻き込まれ、あっという間に消えた命が、私の過去の記憶から感情を揺さぶってくる。
命の重みにも優劣というものがあり、死んでも見過ごされるような小さな存在がある。
奪われる命があるのなら、たとえば私が些細な命を奪っても咎められることはないだろう。ーー私は、王族なのだから。
正直、ベルを跳ねた貴族を探し出し、極刑に処したいと考えたし、真由の命を奪っておいて海に捨てた少年を見つけ出し、八つ裂きにしてやりたいという気持ちがある。
自分の中に、どこからこれほどの怒りが生まれたのか?
そして感情に宿った禍々しい憎悪というのもが、なぜ身体中から溢れ出すエネルギーに変換されてしまうのか。
人の心すら持たない傀儡などアンデットと同じで、何体損傷させても大したことではあるまい?
廊下に出て、私は木杉達を横目に通り過ぎようとした。
深山がまた、必死で私を静止しようとするその腕を木杉が掴んで押さえている。
後を追ってくるアンデットを不可抗力とばかりに吹き飛ばしていく私の顔を見て、木杉は最初目を細めていたが、口の端でニヤリと笑うのが見えた。
そして彼は口にする。
「超常現象研究部への入部誓約書に基づいて、部長権限を発動する。今すぐ呪力の全てを放棄せよ」
瞬時に、私の身体は呪縛を受けた。
これは言霊ではない。そして呪禁でもない。
私が彼に誓約した入部届が、私を呪縛する力となって発動される。
身体から放出されて止まらなかった熱量による呪力の全てが、一瞬で消え、私はその圧力に膝をついた。
「蓮! ほら部室へ連行するよ」
木杉の一声で私は蓮に首根っこを押さえられた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




