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人格形成は環境のせいで44

こんばんは。

いい章のナンバーになりました。


        ※


「今のままじゃダメなんだよ」

 深山は真剣な顔をしていた。私の制服の肩の辺りを押さえている彼女の手が、溢れ出す感情を物語って震えている。


 私はわけがわからず、咄嗟に彼女の手を押さえ、不意をつかれた行動にどう対処しようか迷っていた。


 力の制御が難しくなっている。

 それを感じたのは指先にチリチリと溢れ出す呪力の流れを感じるからだ。

 片腕を振り上げただけで、その力は発動する。


 深山でなければ、自分を防御し、無自覚に吹き飛ばしてしまっていたかもしれない。

 そうならなくてよかったと安堵するけれど、今の私は、もう何もかもを気だるさで片付けてしまいそうになっている。


「放していただけますか?」

 自分で想像するよりもずっと、邪険に彼女からの束縛を退けようとしていたと思う。

 この世界は自分のいる世界ではないという意識が強くなってしまっていた。真由という存在を失って、心の中で何かが音を立てて少しづつ壊れて行く。


「落ち着きなって、みゆきちゃん」

 私と深山の間に割って入ったのは、木杉だった。日頃どこか余裕綽々としている彼の顔からも表情が消えていて、私はこの二人が思うところに想像が付かず、ただ壁に押し付けられたままの姿勢に甘んじていた。


 ただ一触即発の緊迫感がある。

 このままここで交戦かと相手の出方を伺っていると、木杉が更に強い口調で静止した。

「止めるんだ」


 何か、言葉の圧を感じた。

 言霊だろうか?

 響く声は、身体の奥に届き、宣告まで吐く息で肩を上下させ得ていた深山も、一瞬びくりと身体を硬らせる。


 深山は何か言いかけ、そして私から視線を逸らせた。

「とりあえず放課後話そうか」

 木杉の提案に不承不承深山はうなづき、私の身体を解放する。


 深山みゆきの気を衒った行いを問い正したい気持ちにはなったが、私は咄嗟に取り落とした鞄を拾い上げ、雨水を払った。

 払った指の先に、自然と集まった水の精霊が宿り、泥水を含めた水滴全てが鞄から退去していく。


 五分の一になった魂の自分でも、容易いことだ。私は笑った。

 そうか。

 雨というものが鬱陶しいなら、その水滴の一粒でさえ自分の身体に触れささぬ方法はいく通りもある。


「チャイムが鳴るので行きます」

 人と関わるのは相変わらず苦手意識があり、どう対応したらいいのかさえよくわからなかった。私は時計を確認して、二人に背を向ける。


「ねぇ」

 私の後ろ姿に深山は声をかけてきた。

 その声はとても心許なく小さな主張で、私はふと歩みを止めそうになった。

「私達は敵じゃないよね?」


 おかしなことを問うてくる女だ。


 私はまた馬鹿みたいなことだと笑っていた。

 この世に生まれ落ちてから、敵だと思うような存在に、私は一度も出会ったことはない。ーーつまり自分と肩を並べる存在に会ったことなどない。


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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