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人格形成は環境のせいで41

たぶん若さゆえに失敗はある。

けれどそれは時として取り返しがつかないーー。


        ※


 人の死に価値観を持つものがいたとすれば、真由の死は完全に巻き込まれ事故としかいいようがなかった。見せ場や意味というものをまるで持たない、あっけない死。


 お台場の海で、それこそ東京に初めてきたという観光客に発見され、事件性があると司法解剖までされた真由の死には、どれほどの意味があったというのだろうか。


 遺体に損傷があった。おそらくは交通事故にあったようで、司法解剖の結果事件性が浮かび上がった。理由は、身体の四肢には傷痕がひどかったというのに、頭部だけは損傷していなかったからだ。死因は頚椎骨折だという。


 喋れなくなった真由から何があったのかを訊くことはできないが、警察は後部座席に乗っていた上でのバイクの事故だろうと原因を突き止めていた。真由の血痕は海ではなく近くの道路にタイヤのスリップ痕と一緒に付着しており、一緒にバイクで走っていた輩がいたことを示唆している。


 真由はまだ中学生で、バイクになんて乗れない。

 誰かが真由を乗せて、事故を起こし、真由が死んだ。

 そこまでは想像がついたが、不可解なのは真由の死体が海から上がったことである。


 警察はあっという間に、事件の全貌を露わにし、一人の少年を逮捕した。

 事後に真由の死場所の理由を聞いて、母は寝込んだ。


 家族というのは共に生活をする。真由のことなんて、同じ環境にいる生命体だとしか思っていなかったというのに、私の目つきは気が付かないうちに少し剣呑になっていた。


 真由は男を見る目が無い。

 そんなことは今更言っても仕方がないことだ。


 真由を乗せてバイクを運転していた相手は、真由が交際していた相手だった。

 彼氏だと言っていたあの男だ。

 彼氏なのに、そいつは真由が死んで、事故を起こしたことが怖くなって、真由を海に放り投げた。


 病院に連れて行ってもらい、手当てされることもなく、傷んでしまった人形のように海に放り投げられた真由を思う。


 どこが好きだったんだろう。あんな男の。

 心の結びつきがあったなんて、到底信じられない。

 身体で結びついたなら、見る目がなくとも若さゆえにのめり込んだ。それなら理解る。


 魂と身体なんて所詮別のもの。

 それなのにどうして身体に、そして魂に、人は縛られ続けているのだろうか?


 この世の葬儀は味気なかった。

 まるでラーディオヌ一族の日常のように、黒い装束を羽織って、夜に活動して眠らない。知り合いだけが顔を突き合わすそんな質素な葬儀であるので、魂の抜け殻となった亘が、式の喪主を務めていた。


「大丈夫?」

 木杉貴男が式に参列しており、自分の前に足を止めた時、こちらを伺ってきた。

「何を持って大丈夫だと?」

 私は思ったことをそのまま口にしてしまっていた。

 どこかで木杉は、常識から外れた存在であることを認めてしまっている自分がいる。


「こちらよりも、学内はその後どうですか?」

 私はどこかで予感している、つまり想定内である現状を木杉に確認する。

 木杉は笑った。

「そうですねぇ。あれからとりかえばやは進み、かなりの生徒が取り込まれた状態になってきています」

 私は事の重大さに気づいていたが、軽く片眉を上げただけだった。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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