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人格形成は環境のせいで4

こんにちは。

久しぶりにお昼の投稿です。

少し仕事がバタついていて昼休憩を活用できずじまいでした。

また時々、昼休憩と夜でUPしていきます。



 ここは冥府。

 レテの川の対岸を散歩する。

 出発点であり終着点であるそこは、得体の知れない魂がウヨウヨしていた。


 カフェイン中毒だと自覚がある私は、しばし嗜好品に別れを告げて、肉体から離れていた。

 日頃アッパー系の投薬ばかりしているので、私の身体にダウン系の薬は、思いの外効き目が早かった。


 別れ際、その時わりと親しかったヨースケやナンスに何か言わなければならない気持ちにはなっていたのに、すぐに指の一本も持ち上がらなくなってしまい気がついたらここにいる。


 まぁ、それはそれで仕方がない。

 二人ならばこの旅路の間、私の身体を見守ってくれるだろう。


 一族のしがらみを束の間離れ、鼻歌すら歌いそうな清々しさで、魂の微風を感じていた。


 短く切った髪が、おかしなことに伸びていた。

 この世界ではどうやら、自分にとってより長く馴染んだ姿をとどめるらしい。


「お前……、また来たのか!?」

 そうしていると冥府で見たことがある数少ない者である少女が側にやってきて、不快そうに眉根を寄せた。

 少女の後ろには亡霊のように、白い髪の男がフードを被って控えている。


 二人ともこの空間を自由に移動できるようで、地に足を付けていない。


 ええっと……。

 久しぶり、とは言えなかった。


 見たことはあるとは思っても、なんと反応していいのかわからず、自分はかけられた声を一旦無視して歩みを止めなかった。知り合いというには乏しい関係性を無視したいという思いが強い。


「おい!」

 けれどずいぶん乱暴な言葉遣いをする少女に、歩みを止められる。

 ナンスよりも幼く見えるので、思わず言葉遣いを諭してやりたい気持ちにはなったが、ここは冥府だ。見た目通りの年齢ではないことは推測された。


「なんで無視する?」

 一暼だけして通り過ぎようとする私に、少女は何かを投げ飛ばしてきた。

 ひらりと身を交わした自分の足元に、攻撃というには粗末な、小さな衝撃で小石が跳ね飛ぶ。


「私に何か御用ですか?」

 足を止められたことを障害物だと不愉快に思って、アセスは仕方なく少女を眺めた。


 暗い闇の中でそれは煌めく。

 金色の大きな瞳。

 それは鼻の左右に等しくついた両目と、額に大きく縦に開いた3つの瞳が同時にこちらを捉えていた。


「私はこの冥府の管理を任されている。冥府はお前のように自由意志でフラフラと行き来していい場所じゃないんだ」

「へぇ。そうなんですか。結構皆さん自由に出入りしているように思いますが」


 生きたり、死んだり、生きたり、死んだり。

 再生を繰り返す場所、もしくは再生すらできずに囚われる場所だと認識しているが、と目で口ほどに物を言うと、少女はムキになってきた。


「それは記憶というものをちゃんと消去してから行われる、至極まっとうな活動だ。お前は、記憶を持ったまま、同じ肉体を行き来して、明らかに冥府の法を犯している」


「……」

 法ーー、嫌いな言葉だ。

 肉体を失くしてまで、どこの誰だかが決めた事になど縛られたくはない。


「では私は法を犯したと? そして貴方は管理者として私をどうこうすると?」

 せっかく自由な旅なのだ、邪魔されたくはないと剣呑になると、後ろの男が少女を庇おうと消していた気配に殺気を混じらせてきた。


「早速ですか……」

 面倒臭い。


 そう思いはしても、即座に顎に手をやって首を捻った。


 いや、ものは考えようかーー?

 ここであれば自分の力を自由に解放しても良いのではないか?

 そんな好奇心が頭をもたげた。


 ラーディオヌ一族で飛び級で天道士になり、その道では神童と言われた自分だったが、本当の意味で自分の力を行使した経験がなかった。


 唯一過去に魔道士シヴァールと対峙したとき、一瞬は真剣になりかけたものの、周囲への被害を考えて力をセーブした。


 うちに煮えたぎるような力の源が宿っており、魔と契約した後は更にその力を解放したい欲求に駆られていて、持て余した。


 ーーけれど、一族の総帥たるもの、然るべき必要な時にしか呪術を行使できない。

 破壊欲求は、ここでなら解放しても差し支えないのだろうか。


 そう考えると少し愉しくなった。

「自由な旅の時間を邪魔するというのであれば、お手合わせしますよ」

 くくくっと私は喉を鳴らして笑った。



 

 偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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