人格形成は環境のせいで39
こんばんは。
まだ少し書き足りなくて、書き進めてしまいました。
自分で思うけれど、何だかアンニュイ。
※
家族なんてものは、ただ一緒に暮らすだけの集合体に過ぎない。
まして私は転生者で、アセス・アルス・ラーディオヌで、ラーディオヌ一族の総帥なのだ。そして7日間ほどすればまた、元の世に帰らなければならない。
だからーー。
この世にいる自分は空蝉で、極力人と関わらないようにした。
他人とも、そして家族とも。
私には記憶があった。
転生する前の記憶が鮮明にあり、愛する人はリンフィーナ・アルス・ラーディア。そして唯一、私の敬愛するサナレス・アルス・ラーディア。
それなのにこの世で、16年近く生きてきた年月は重い。
どれほど前世での記憶を持ち続け、悠希としての人生を虚なものとして生きていても、アセスとして生きた18年を、悠希として生きた16年が凌駕していく感覚すらある。
施設を出てもまだ雨は止んでいなかった。
どんよりと淀んだ空からは鉄砲雨が降り、車体に激しく降り落ちてくる。
「大丈夫だ」
警察に向かうタクシーの中、横に座っていた亘の手が自分の手を握ってきた。
震えている。
亘の手が?
ーーそれとも私の手が震えているのだろうか?
「運転手さん、悪いが急いでくれないか?」
「そう言われましてもねぇ」
フロントガラスの前で、忙しなく動くワイパーから、時折視界が開けるが、天候により車の流れはのろのろ運転をやむなしとしている。運転手は困った客だとぼやくように、額の汗をハンカチで拭っている。
悠美からきたメールの内容がただならぬことで、亘はすぐに彼女に電話をかけたらしい。
それなのに完全に動揺してしまっている悠美は、真由のことについて何の情報も伝えようとせず、「わからない」を繰り返すばかりだったという。
亘は新宿西署の担当官に電話を代わってもらい、お台場で上がった女子高生の遺体が司法解剖されたこと、そしてDNA鑑定の結果それが真由であるらしいことを聞かされたようだが、はっきりと言葉にはしていなかった。
ただ亘の尋常じゃない様子と、言葉の断片から嫌な情報が浮き彫りになっていく。
何が大丈夫なものか。
警察に補導されたとか、厄介ごとに巻き込まれただけなのであれば問題ないだろう。
けれどそこまで状況証拠を辿々しく呟くように伝えておいて、何が大丈夫だというのだろう。誰に向けることもできない怒りが、私のなかで膨張していく。まるで割れる寸前の風船のように、神経がぱんと張り詰めていく。
タクシーを降りた私たちは、傘も刺さずに署内に飛び込んでいった。
受付で用件を伝えると担当の警察官がやってきて、私達は一般人があまり出入りすることのない警察内の遺体安置所へ誘導された。
「本来は承諾していただいて解剖となるのですが、今回の場合、ご遺体の損傷がひどくてーー」
監察医だという女性が私達に挨拶してきた。
少し俯きがちに目を伏せるが、仕事としてそれを業務にしている女性らしく、伝えるべきことを淡々と口にする。
「ご家族にはご遺体の確認をお願いしたいのですが、奥様はご気分を悪くされて別室で休んでいらっしゃいます」
「そうですか。ーーじゃあ、悠希は母さんのところに……」
「いえ、一緒に確認させてください」
私はこの目で確かめたいと思い、亘が行く先に同行した。
亘が頼りなげにうなづく。
そうして二人の前に、無機質な、通路側に窓のない扉が開いた。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




