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人格形成は環境のせいで37

こんばんは。

今日も仕事して食事して、勉強してお風呂入って、やっと小説を書く時間確保!

充実しています。


またご意見感想など聞かせてくれたらモチベはぐっと上がります。

応援よろしくお願いします。


あとこの主人公ーー悠希の過去ですが、「ラーディオヌの宝玉」に書いていますので、もし興味持っていただけれうようでしたら、お読みいただけると幸いです。

        ※


 同日その頃、私の家では大変なことになっていたが、この時の私には知る由もない。理由は、地下施設の中に建造された大きな公園の中にあって、携帯電話の電波が一切遮断されていることのついて思いもしなかったからだ。


 後で、よくよく考えてみればそのことに気付く方法はないわけではなく、私は自分の迂闊さに舌打ちすることになる。


 父の亘は仕事中、携帯に出ない。そしてラインやメールにも反応していなかった。唯一職場のパソコンのメールだけを受信しているようだったから、私は父に連絡するときには、必ずその方法をとっていた。


 わかっていたはずなのに。

 つまり父の職場、地下の施設内は物理的に電波が飛んでいなかったのだ。


「悠希! 悠希……、悠希!」

 私の家では、母の悠美が狼狽え、何十回と自分の携帯を鳴らしていた。もちろん亘の携帯に対しても、同じようにコールを繰り返している。


 その日の朝から嫌な予感はあり、悠美はだから言ったのにと繰り返し、祈るような気持ちで携帯を握り締めて家族に連絡を取ろうとしていた。


「パパ、悠希……」

 気が狂いそうだ。


 ほんの数十分前までは、悠美はいつものように酒の缶を手にしていた。


 昨夜、娘の真由が帰ってきていないと聞かされてから、悠美は朝からイライラしていた。

 心配ないという息子の意見を鵜呑みにはできず、それでも娘が無断外泊をしたことは初めてではなかったので、放蕩娘がまた常識外れたことをしているだけだと、心配な気持ちと腹立ちを、なんとか酒の力で心を落ち着かせようとしていたのだ。


 あの子は本当にどうしようもない子ーー。

 悠希は子供の頃からよくいうことを聞いて、思いやりがあってーー?


 アルコールで神経がぼやけていく中、息子である悠希の顔を思い出す。

『支えようか?』

『明日から少し帰るのが遅くなるよ』

『何かあれば携帯に電話してこいって言ってるから』

 悠希がかけてくれる言葉はいつも優しかった。


 気遣われっていることはわかっていた。

 それなのに悠希の表情は、まるで冷凍庫に入っている凍った肉片のように愛想がない。

 時々、この子は本当に生きているんだろうかと不安になり、温もりを確かめたくなった。けれど悠美が手を伸ばすと、赤ん坊の頃からずっと悠希は、萎縮して体をかわす。

 嫌われているのだろうかと、何度も自問し、何を馬鹿なことをと母親としてそんなふうに考えてしまうことを恥じる。


 アレキシサイミア、失感情症ではないのかと夫に相談し、検査してもらっても杞憂に過ぎなかったではないか。

 悠希は優しい。


 そう、今問題なのは、真面目で問題を起こさない悠希じゃない。

 日毎に素行が悪くなる真由の方だ。


 悠希については並外れたIQのために、アスペルガー(自閉症スペクトラム症)の傾向があると言われただけ。あの子はいい子だ。


 それに比べて真由は、女の子だからと女子校に通わせたというのに、不良と交際しているようだ。


 自分がいくら必死で止めても、彼女は余計に反発して、悪い付き合いを続けているようだった。

 夏祭りに行きたいと言って聞かなかったのも、柄の悪い男子に唆されてとった行動だと思っていた。


 子供なんて言うことを聞いてくれない。どれだけその身に危険が降りかからないように、彼らがいく先に手を伸ばしてみても、無駄なんだろうか。

 父親は当てにならない。

「私が二人をちゃんと育てないと……」


 そう思いながらも常習的に飲まずにはいられなくなった度数の高いアルコールを、その日の蒸し暑さも手伝ってぐいと飲み干す。

 それにしてもよく降る雨だ。


 真由はこんな雨に何処に行っているのか。

 悠希は雨の日は具合が悪そうに見えるが、無事学校で授業を受けているのだろうか。


 思いを馳せるのは二人の子供のことばかりだった。

 そんな時、珍しく家の電話が鳴った。個人端末で連絡が取れる時代になって家の電話なんて滅多に鳴ることはなく、家の電話に入電されたことを個人端末の着信音が二重音楽で聞こえてきた。


 途端にけたたましく鳴り出したので、悠美は嫌な予感がした。

 恐る恐る、家の電話から転送されてきた着信履歴を個人端末で確認する。


 どくん。

 心臓が跳ねた。

 電話番号だけで、何処からの電話であるのかわかってしまう。末の番号が0110だなんて、考えただけで電話を持つ手が震えてしまう。


「警察です。突然なんですが確認したいことがございまして、今から新宿西署に来ていただいてもよろしいでしょうか?」

 淡々とした口調だった。

「落ち着いて聞いていただきたいのですが、今日、お台場で若い娘さんのご遺体が上がりまして……」

 

 頭の中が真っ白になった。

 事務的に伝えられる内容が途中から頭の中で途切れていく。


「ご近所の目もあることだと思いますので、公用車では……」

 え?

 遺体が上がったのと、確認したいことと、迎えにいくのはパトカーではなく。

 脳の中の内言が暴走して、思考が壊れ始めていく。


「あの……? 私に何を確認しろと?」

「いえ。あくまでも身元不明の若い女性のご遺体が発見されまして、現場近くに、いえ全く無関係だと言うことも考えられるのですが、こちらの娘さんの学生証が入った鞄が」

 これ以上電話で伝えることはどうも、と言葉を濁してきたので、悠美は青ざめた顔だったが、「あはは」と乾いた笑いを漏らしてしまった。


 新手の詐欺だろうか。

 昔から、子供が事故に遭ってとか、警察を語って電話してくる、あれかもしれない。

「騙されませんよ……」

「いえ。突然のことで驚かれるのは当然だと思いますので、署員を今向かわせています。先にそのことを電話で……」


 全身に大量の虫が這いまわったのかと思うほど、ぞくぞく震える。

 悠美は咄嗟に電話を切った。

 きっと悪戯だ。

 それもとてもタチの悪い悪戯に違いない。

 よく啓発されている、詐欺師は心の隙をついてくるのだ、こんなことで動揺して騙されてはいけない。


 自分で自分に言い聞かせようとするのに、悠美は真由の携帯に電話していた。

 何度電話しても出ない。


 そう、いつものことだ。

 あの子はいつも私の電話には出ない。


 悠希に電話する。亘に電話する。

 どれほど代わる代わるコールし続けても、家族は誰一人として出なかった。


 マンションのチャイムが鳴った。

「先ほどお電話しました新宿西署の者です。奥さま、いらっしゃいますでしょうか?」

 制服ではなかったがモニター越しに見せられた身分証を見て、悠美はヒッと引っ込むような悲鳴をあげた。

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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