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人格形成は環境のせいで27

こんばんは。

今日は好きな本の話。


こうやってファンタジーや異世界ものを書いていますが、無類のホラー好きです。

なので京極夏彦さんの世界観とかが好きです。

でもって文章は、小池真理子さんのが素敵に思う。


作風によって文章や世界観変えていくのもいいな。

週に1冊ペースで本を読んでいると、素敵な本にたくさん出逢いますね。


いつも私の文章も読んでいただいてありがとうございます。

誤字脱字やら、言い回し、そのうちまとめて訂正していきます。あくまで日記なのでお許しください。

        ※


 正直こんなにも放課後が待ち遠しかったことはない。

 深山の記憶操作によって生徒達の記憶は消え、その上彼女は外傷を負っていた生徒の怪我の治癒までやってのけた。並の術師ではない。


 それから木杉に呼び付けられた高岡蓮が、私に生徒の座席位置を確認しながら、信じられないほどの腕力とスピードで、教室内を元通りにしていった。


 そうしてまるで何事もなかったかのように、午後の授業は再開したのだ。


「なんか眠い……」

 悠希の斜め前に座る学生がぼやきながら目を擦っているが、さっきまで蒼白で震えていた女生徒だった。


「うわぁ、なんか制服濡れてるし」

 それ多分出血の後だと思う。傷は癒していったけれど、破れていたり血液で濡れた制服などは、流石に元に戻せなかったようだ。


 一部の生徒が違和感を覚えてはいるようだったが、嘘のように作られた日常が戻ってきた。記憶操作をされていない私以外にはーー。


 イライライライラ……。

 不可解なことが多すぎて、説明を求めたかったが、木杉は放課後のお楽しみだよ、などとふざけたことを言いながら立ち去ったのだ。


 それから何事もなかったかのように平然と授業を受けるというのは、なかなか苦痛だ。

「なんだ山村、トイレにでも行きたいのか?」

 違いますよっ!

 他人から見ても私の様子は平常心には見えなかったようで、頭の悪い教師から声をかけられる。


 児童期にはアレキシサイミア(失感情症)を疑われて、母親に病院に連れて行かれた自分が、今は傍目にも明らかに落ち着きなく苛立っていた。


 最後の授業が終わるまで、自分の席に着席していられたことが奇跡だった。

 私は机に手を置いて勢いよく立ち上がり、リュックを右肩にかけて、視聴覚室へと急いだ。


「あ、早いねぇ。感心、感心」

 こちらの気も知らず、木杉は昨日と同じように視聴覚室のモニターを睨みながら、背中越しに声をかけてきた。

 丸めた背中で椅子に座り、片足を椅子の上に上げた、なんともだらしない姿である。


 初めて出会った時から、誰かに似ていると感じていたが、木杉の幼い容姿とこういった怠惰な感じが邪魔をして、考えに至らなかった。


 この飄々(ひょうひょう)として、人のことを最初から掌の上で転がしてくるような態度。そして自分が熱中していると人のことを視界の端にすら入れない変人ぶり。木杉貴男という男は、サナレスそっくりではないか。


 私は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 この手の人種に私は免疫がなく、弱いのだ。


「深山先輩は? 昼間のことどうやったのか聞きたくて」

 記憶を消して、治癒までするなんて並大抵のことではなく、その技術を取得できるものなら学んでみたいと思った。


「あー。深山? みゆきちゃんは当分起きてこないよ。力使いすぎたからねぇ、保健室でぶっ倒れてる。情けないよねぇ」

 おそらくは木杉の指示に従った結果で倒れたというのに、あんまりな言われ方である。


「あれ、どうやったんです? 並大抵の力じゃないーー」

 思わず呪術と言いそうになり、漠然とした「力」という言葉に言いかえた。


「みゆきちゃんねぇ。ほんと多才なんだよ。説明して欲しければ僕から説明するけど、悠希って人体について、ちゃんと知ってる?」

 机を蹴って椅子の方向をこっちに向け、片眉を上げて質問してくる。小学生かと思うような棒のついた飴を神経質そうな指で持って、揶揄う(からかう)ように笑う。


「人ってさぁ、当たり前に生きてると思ってるでしょ。だから自分の身体のこと、つまり人体の構造に無関心な人多んだよねぇ。それだけじゃないよ、文明が発達しすぎて、物が溢れて、身の回りにあるもの一つとっても、どうしてそれがそこにあるのかってこと、わかってない人がいっぱい。ーー君は違う?」

「さぁ」と、私は軽く対応した。


 この手の人と真っ向から意見を交わしても、ブラックホールに突入していくだけだ。事実だけを答えようと、私は決めた。

「人体について知っているかどうかですよね? あなたが調査した通り、うちは父が医者なので、医学の観点から人体についてはひと通りの知識があります」


「ふぅん、さすが主席で入学式の挨拶するのを、あっさり断っただけのことあるじゃん」

 馬鹿じゃないなら理解しそうだから教えてあげる、とかなり高飛車だ。


「人の脳の情報伝達の仕組み、ニューロン同士は電気信号で情報を伝えてるのは知ってるだろ? ニューロンは二つの突起を持ってて、これが軸索と樹状突起ね。脳が働くってのはニューロンの樹状突起から細胞体を経て軸索へ伝わって、この電気信号が次の樹状突起へ伝わっていくんだけど、その接合部分の隙間、これ有名だろ?」

「シナプス」

「そ。みゆきちゃんの能力は特殊な魅了眼で、このシナプスに作用することができる。つまり脳内の情報伝達を操作できる。だから脳の中にある主として記憶を司る海馬にも介入して記憶を消す。情報を操作することができるんだ」


 それだけとは思えなかった。

「怪我をした生徒の体を治癒していた。怪我をした生徒たちは全く痛みを感じていないようだったし、あの後平気で授業を受けることができていた。脳への作用だけじゃ理由にならない」


「治療? してないよ、そんなの。てかできないよ」

 私の推測はおかしいと、きっぱりと否定された。


「怪我した人は怪我したまま。みゆきちゃんは束の間痛覚を消しただけ。だから怪我した人はちゃんと外傷残ってるし、外傷が消えたように視覚を支配しただけ。かわいそうだけどさ、明日は意味もなくめちゃくちゃ痛むと思うよぉ」

「いや……」

 確かに傷は消えてーー。


「まさか、私にもそう見せかけたのか?」

「正解。みゆきちゃんの優しさだよぉ。悠希だってあんまりグロいと、昼からの授業出られないでしょ?」

 絶句した。

 知らないうちに彼女の術中にハマっていたことにも驚いたが、それ以上に能力の特異さが際立つ。


「悠希もさ、結界張ってたけど、それも君の能力の一つ? 風のように早く走れて、結界も張れるなんてねぇ、オールラウンダーだね」

 チラと除いた木杉の舌は、緑の飴を舐めてその色に染まっていた。

「やっぱり悠希は、この部にふさわしい逸材だよね」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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