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人格形成は環境のせいで25

こんばんは。

ロングバケイション突入、って思っていたのに、明日は仕事に駆り出されることになりました。

あああぁ。お出かけの予定もコロナで飛ぶし、なかなかのお休みになりそう。


せめて執筆だけは楽しみたい。

        ※


 気にかかることを言われた。

 けれど教室に入っても、特段異変を感じることはなく、教科書を読むような退屈な講義が続き時間が経っていく。


 自分のことをいぶかしんでいるフラグにしては、神妙な面持ちだった。

 だから何も起こらなくとも用心しておいた方がいいのだろう、と私は精霊を使役して教室に結界を張った。


 5分の1の魂になった今の私に操れる精霊には限りがあった。この国の陰陽道の文化で言えば、式神と言い換えられるものだ。

 札や詠唱は必要ない。

 内言を強く念じることで、波動は言霊になり精霊に届く。それくらいの力は残っていた。


 午前中は何も起こらなかった。

 呪術というのは、呪術者の力量によって、発動時間が関与することが多い。


 昨夜は誰もいない教室で、丑三つ時に心霊現象が起きたという。

 生徒たちが大勢いるこんな真っ昼間から、心霊現象なんて起こらないのかもしれない。


 昨夜一睡もしなかったこともあって、昼食後の午後の授業では眠気が刺してきた。

 空腹時間を長くしていた時は神経が研ぎ澄まされたが、一日三食という不健康にも暇を持て余して食べる時間が余りあると、すぐに消化器系が疲弊する。


 教科書で顔を隠し、机に突っ伏しながら、私は完全に寝落ちしそうになっていた。


 珈琲を飲みたい。

 そんなことを考えながら意識を混沌とさせていると、不意に、ドンっと大きな音が振動として、身体や机など周囲のものを震わせた。


「きゃーっ!」

 女生徒が悲鳴をあげ、生徒達が座席を立ち、何が起こったのかとパニックになる。

「地震!?」

 そんな狼狽えた言葉を耳にしたとき、再び腹の底に響いてくるような振動が起こった。

 ドン!!!


 それは空気が膨張して膨らんだり縮んだりしているような圧を伴い、外に面した窓ガラスがミシミシと音を立てる。

 何かが結界に入ろうとして暴れているのだ。


 私は生徒同士怖がってひしめき合う教室内の空間で一呼吸した。

 呼吸で式神から状況を把握し、生徒達から極力離れた後方に移動する。


 まずいですね。

 どうやら自分の結界では長時間持ち堪えられそうにない。

 どんな相手だよと苦笑しながら、私は生徒達に窓側から離れるように声をかけた。


「割れると危ないですよ。中央でひとまとまりになっていてください」


 生徒を保護する義理なんてないけれど、これ以上恐怖に支配された悲鳴ばかり上げられては、うるさくて仕方がなかった。

 相手の正体も、目的もわからない以上、闇雲に能力を振るうわけにはいかないので、更に使役霊を呼び寄せ、結界への侵入を許した後の対応を算段する。


 呪術師の姿が見えていないことが厄介だった。

 相手がわからない。


 すごい勢いで教室の温度が下がっていった。

 しがみつくように寄り集まっている生徒たちの吐く息が白い。


 霊障が来ると室内の温度が摂氏0度より下がると木杉が言っていた通りであり、突然の事態に怯え切った生徒の1人が、教室の外に出ようと扉に近寄る。


「開けてはいけません!!」

 私の制止を振り切って、男子生徒は勢いよく扉を開いてしまった。


 結界は外側からの侵入を拒むが、内側からの物理的な力には作用しない。

 突如、教室内に禍々しい気配が立ち込める。


 何人かの生徒が恐慌状態で震えて腰を抜かし、その足元に黒い影が広がっていく。教室の床にヘドロのような赤い水溜りが出来、それが生徒たちを今にも飲み込もうとしている。


 これが霊障?

 私は、チッと舌打ちした。


 力で吹き飛ばすのは簡単だが、自分の力では生徒達もろとも教室を吹き飛ばしかねない。

 冥府で試した時は自分ごと木っ端微塵にしてしまったのだ。苦い思いが力に歯止めをかけていた。


「悠希!」

 その時教室の外から、声をかけられた。

「この護符、生徒に張って!」

 腰の高さまである廊下側の窓を蹴破って、足をかけて教室に乱入してきた木杉は、アセスに白い紙切れを手渡した。


 そう言いながらも彼は一人一人の体に、その紙を飛ばし、貼り付けていく。

 私はそれに従い、十数人の生徒に護符を貼った。


 赤黒いヘドロのような水溜まりは、木杉が入ってきてすぐに小さくなり始め、消失していく。

「ーーなんだ?」

 確かに何かがーー。

 ヘドロの中から出てきそうな気配があったのだが、それが止んだ。


 そして護符を貼られた生徒達は、順々に意識を手放していく。全員に貼り終えた時、意識があるのは木杉と私、ただ2人だけだった。


 木杉が悔しそうに指を噛んで言った。

「3人やられたな……」

偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

シリーズの8作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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