人格形成は環境のせいで2
こんばんは。
ほぼ日課になっているんですが、タイトルどうよ。
センスのなさに、涙ぬぐうわ。
三人称で色々書いて、視線飛ぶのもどうかと思い、今回は一人称で勧められるところまで物語進めるぞ。
てかX G都市UPした時点で、もうやっぱり徒然なるままに。
評価とかブクマとか、欲しいのです、たとえ私の日記だとしても。
お付き合いよろしくお願いします。
※
私が住まうラーディオヌ邸は薄暗い。
きっとそのせいだけではないのだろうが私の性格も、物語の主人公のように溌剌として明るいかと問われるとそうではない。
自分が歩く道は、常に日陰であることはわかっている。
アルス家の直系、次代の総帥ではあったとしても現実はそんなものだ。
ラーディオヌ一族の皇族は王族血族であるアルス家がかろうじてその座に着いていたが、それに継ぐハプスブルク家が実権を握り、王家の血筋であるフィラ家という次勢力等が、今にもアルス家に成り代わろうとしている。
隣国であるラーディア一族の王族で絶対的な繁栄を誇る古き血筋のアルス家とは違い、ラーディオヌ一族内ではいつも緊迫感があった。
だから私は、今目の前にいる太陽の申し子のように快活な人とは人種が違う、と思っていた。
ラーディア一族の第三皇子、見事な白金の髪以上に、彼の動作の全てが輝いて見える。
「今日は風向きもよく、二刻もかからずここに来れたぞ」
彼は何を自慢したいのか、早馬でラーディア一族からラーディオヌ一族にかけてくる時間の短縮について、毎回報告するところから会話を始めてくる。
「そうなのですね」
そういえば初回の報告から、かなり時間を縮めているな、と私は軽く相槌を打った。
本で読んだが、人は三度会った人間に心を許す傾向があるらしい。
三度会って、やっと知った人だと認識するのだそうだ。
サナレスは私の前に脚繁く(あししげく)通って来ている。
本で読んだ知識が正しければ、そういう意味で自分はかなりサナレスに親しみを覚えているらしい。
無視しないくらいには。
「アセスさぁ。ラーディア一族の女官達ってほんと美人揃いだよなぁ。黒髪のミステリアスな雰囲気も素敵だしさぁ、ボディラインもいい女ぞろいだ」
ただ早馬飛ばして到着時間を測ってくるような人の目的が、こんなくだらないことをいう為だなんて、意味がわからない。
何か深い意味があるのだろうと勘繰って待つものの、サナレスは何度でもくだらない訪問を続け、私はすっかり当初の警戒心を解いてしまっていた。
「はぁ……。そして本日の要件は?」
軽口になってきてしまっているのがその証拠だった。
ラーディア一族の次期総帥を門前払いできない自分は、執務室でわずかばかり敬礼しながら、その実面倒臭いと思ってしまっていることを彼に悟られないようにため息をついた。
人生とは面倒くさいの連続なのだ。
これも不意に沸いた仕事だと思う他なく、ルーティーン的になった人を裁く裁判の仕事の延長線上にあることを受け入れる。
さて今日はどんなくだらない会話を、どのくらいの時間続けるのか。
しかしこの日、油断していた私にいきなり直球で本題が降ってきた。
「私の妹を婚約者にしないか?」
想像外の提案に、私は全ての動作が一時的に停止する。
「はぁ?」
今なんと?
呪術を否定し、ラーディオヌ一族を迫害したラーディア一族の皇女と、反骨精神で呪術で繁栄しようとしてきたラーディオヌ一族の総帥である自分が、婚儀をあげるなんてあり得ない。
この日彼が確信に迫ってきた気概は察知しても、ーーたとえ半年に渡るほどの長い期間、しょっちゅうくだらない会話を続けに来た理由がそこにあったと想像してみても、私は「なんの酔狂ですか?」としか言葉が出てこなかった。
「お前さ、私の妹のこと好きだろう? 私とお前が血の関係性を結ぶことで、もう一度ラーディアとラーディオヌ一族を一つにできないものかな?」
言葉を失った。
なぜ言葉を失くしたかというと、私が好きな相手が彼の妹リンフィーナであるということを見透かされていたからだ。
どうして彼にバレている!?
誰にとも打ち明けたことのない片思いの相手が彼の妹だと、いつから気付いていたのか!?
続けて畳みかけるようにサナレスは言った。
「会う機会を設定するからさぁ、ちゃんと考えてくれない?」
ちゃんとってその意味!
私は絶句した。
正式に、ーーつまり正妃としてってことを言っているのか。
「…………」
私はよく表情がない人形のようだと言われてしまうが、言葉まで失うとまさに人形そのものだ。
「好きなんだったらさ、悪くない提案だと思うんだけど」
その提案は正気ではない。
それなのに彼から言われたことを、至極真面目に考えるとぞわぞわっと戦慄が走った。
思いもしなかった彼女との明るい未来に、私の錆びついて固まっていた感情が急速度で傾き、そしてサナレスの顔をゆっくり振り返る。
悪戯っぽく微笑むサナレスは、私に一筋の光を見せた。
そして気づく。
どうやら私は、サナレスという人を信頼し好感を抱いていた。
かの姫を手に入れられる。
自分の人生において初めて生まれた、欲望だった。
サナレスが言ったことはあまりにも甘美で、瞬間的に「結構です」と断ることができないでいる。
ラーディオヌ一族の総帥という重責を背負う運命を受け入れた私と、ラーディア一族の次期総帥であるサナレスは似た運命を背負っている。
運命を受け入れながらも自然体でいられるサナレスのように、私もなれるのだろうか?
私は初めて、サナレスに聞いてみたくなった。
神の氏族の総帥などという重荷、捨てたくはなかったか?
サナレスは、ラーディアの生誕祭で手合わせできずにいた後日剣の腕において確認しても、努力家であることがわかる。そして国の発展に貢献し、功績を残し続けている。王族でありながら実力者として有名だ。
どうして同じ総帥という楔に繋がれながら、あなたはそんなにも自由でいられるのか。
一層眩しく思い、彼に憧れにも似た思いを持ってしまっていることに蓋をしながら、私は冷静になるように吐息をついた。
「あなた何をしたいんです?」
ラーディオヌ一族の力など軽んじているラーディア一族が、目的なく妹を娶れと言ってくるはずはない。
どちらかというとこちらのラーディオヌ一族だけではなく、ラーディア一族の貴族からも猛反対される案件じゃないか。
無理な話だと、私は喉から出かかった欲望の手を懸命に引っ込めようとする。
「妹ね〜。今は幼いんだけど、将来はすごい美女になることは約束できるんだけど、まぁまぁ。ーーほんとまぁまぁ、ちょっとだけアセス、お前に興味あるみたいなんだけど、紹介して欲しい?」
第一声はかなり嫌そうで、紹介すると言いながら、サナレスは私の印象上たいそう勿体ぶっていた。
けれど私の心は決まってしまった。
かの姫が私に興味を持っていると聞いて、正気ではいられなくなる。
今すぐにでもサナレスに真相を問いたくなったが、そのようなはしたない真似は出来なかった。
サナレスは紹介するか否かをまだ迷っているようだった。だから半年という時間をかけ、じっくりと自分という人を観察してきたのか。
そしてようやく話を切り出した。
ただ、ここにきてもどっちつかずのむかつく態度だったので、私はぶっきらぼうに「あなたの采配はどっちでもいいですよ。最終的には運命が相手を選ぶのでしょう」と、言ってしまった。
「で。会う? 会わない?」
「会いますよ。あなたに設定していただかなくとも、すでに彼女には会っています」
私はサナレスの策略外のところでリンフィーナに出会い、数年が過ぎ、それでも彼女は私を忘れていないらしい。
リンフィーナの気持ちが、今どうであっても、私は忘れられていないだけで満足だった。
それからの自分が置かれる環境は、騒音だらけになった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー