人格形成は環境のせいで16
こんにちは。
一日一章以上、平日はたいていUPしています。
お付き合いよろしくお願いします。
※
この世界では呪術や精霊、呪いの類は胡散臭いものだと認識されていることを知っている。テレビでスプーン曲げがトリックだの、メンタリストの技術がすごいなどと取り沙汰されるような俗世である。
だからこそ子供の頃から、呪術の力をひた隠しにしてきたというのに。
ここに来て見破られた!
しかも、心霊現象研究部などという胡散臭いものを研究する更に胡散臭い学生の部活動に勧誘されるとはーー。
もはやママゴトではないか。
全身全霊で拒絶したかったが、弱みを握られていてどうすることもできず、意識外で授業を受け、意識外で昼食をとり、クラスメイトに話しかけられても愛想笑いの一つも浮かべられず、かつて自分についたクリスタルドールという異名の通り、鉄壁の無表情で放課後を迎えた。
バレたならいっそ口封じでーー。
不穏なことを一瞬考えたが、この世の法は相当厳しく、殺人は死刑や無期懲役という決して面白くなはないものだ。
病気でバタバタと死んでいく割には、命の重みを大切にしている。
また刑事事件もおそらくは家族に迷惑をかけるので、自分自身にご法度だと言い聞かせていた。
「ああ、よく来たね」
重い横開きの古びた扉をがらがらと音を立てて開いて中に入ると、自分以外に三人の学生がいた。
一人は木杉貴男、彼は視聴覚室の教壇にどっかりと腰を下ろし、決して長くはない足を宙にぶらぶらさせている。
「皆に紹介するよ」
「まだ入部すると決めたわけじゃありませんよ」
即座に否定するが、机から軽快に飛び降りた木杉は、自分の方に近寄ってきて肩に手を回してきた。
急に距離感を詰められると居心地が悪く、私は彼の制服の袖を摘んで、その手を払った。
魂胆がないわけがない。
魂胆しかない、と後退る。
「はいー。この体格の割に人見知りで繊細な一年生は、山村悠希君って言います。待望の四人目、入部希望者でーす」
だから希望していないですって。
木杉は全く私の話を聞いておらず、右の奥歯を噛み締める。
「でね、こっちの美人のお姉さんが同じく3年の深山みゆき、でこの暑苦しいのが2年の高岡蓮」
「ちょっとひどくねー? 俺の紹介だけめちゃくちゃ雑じゃね?」
いや、人見知りで繊細と紹介されているこっちも嬉しくはないよ。
「ねぇねぇ、君すごいよね〜。この部って入るの部長の審査難しいだろ?」
いや、入りたくはないから。
ーーでも審査難しいって?
オカルトなんて怪しくて誰も入りたがらないだけなんじゃないのか?
「で、君の能力は?」
「は?」
「だから言ってるでしょ。この部、そういう素養がないと入いれないのよ。木杉さんてば部長のくせに、部員を研究対象として扱っているからねぇ」
意外な展開に絶句して、私はしばらくぼんやりと突っ立っていた。
ーーということは、なにか?
ここにいる三人も、私と同じ呪術師ということなのだろうか?
この世界には呪術なんてものは存在しない。否定されるものだとばかり思っていたが、これはどうして、ーー面白い。
「はい、入部届」
気杉から手渡されて、私はすんなりとそれを受け取った。
横文字で育ってきた私は、相変わらず漢字を書くのが苦手だったけれど、思いの外さらさらとサインしてしまう。
「お、仲間じゃん。俺は蓮、炎を使う」
「私は霊視」
そう言って美人と紹介されたみゆきという女性は、片目に手をやってコンタクトを外した。
両目の色が違うオッドアイ。片目が漆黒で、片目がクリスタルのように透き通る薄い青だ。
「では、あなたは?」
木杉に向かって私が聞くと、木杉は笑って「それはまあおいおいに」とサラッとかわしてしまった。
「それよりもあなたの移動能力、偶然学校の監視カメラに映っていたのを見てみよう」
彼は視聴覚室の機材を私物化しているようだった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
シリーズの8作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
異世界未来ストーリー
「十G都市」ーレシピが全てー




