プロローグ
魔法やモンスターが存在するこの世界で、とある国に世界に名の知れた騎士が居た。
騎士は生きる中で剣一筋で育ち、女性や遊びなどは触れたことも、むしろ興味すらもなかった。
そんな騎士にある日、王命が出されたその内容は「最凶の古龍が目を覚まし世界を破滅の道へと導こうとしている。それを阻止して欲しい」と言う物だった。勿論、王の命令は自身の命の次に大切な物、そして、王から下される任務は騎士にとっては誇りだった。
騎士は命を受け取った。
そして竜の住処にて戦いが始まった。
何日も何日も剣の金属音、飛び荒れる魔法弾が竜の住処で爆ぜ、響き渡り、遂に竜は最後を迎えた。
編成された討伐隊は全滅、生き残りは剣の道に精を注いだ騎士一人だけ、だが、その命はもう長くはない。
騎士としての名を歴史に刻んだのだ、自分は勿論、討伐隊の皆もきっと誇りに思えるだろう。
だが、それは間違いだった。
「我ガ、叶えタ、願いノ恩を仇デ返すのか?」
瀕死の古龍が初めて発した言葉は騎士には驚きを隠せなかった。だがもうそんな気力はない。片腕からの出血量が多い、目の前が暗く頭が回らない。
そんな中、騎士には竜の存在が今までの自分の様にと思えてしまった。
勝手だとは思う。
幼い頃から、使われる道具として功績を上げ、親の名を売り、地位を得る。最後には多額の金を受け取る為だけに自分を王の元へ飛ばしその下で働かせた。
そんな俺はいつでも孤独だった。だから孤独だったかもしれない竜に最後は寄り添ってあげたいと思った。
騎士は重い身体を起こし、倒れ込んだ竜へと血を流しながら歩き倒れる。その姿に竜は閉じかけた瞳を上げる。
「ナンの、ッツモリだ?」
黒い鱗に手を当てるとかすれた声で言う。
「す…す…まない…」
その声はとても小さく今にもかき消されてしまう程だが、古龍にはそんな小さな囁きが、彼の願いが届いた。
「スマナイか…ニンゲンは何処までモ落ちるな、コンな優しい者を駒にするトハ…」
竜はその場で冷たくなる心優しいくして悪にされた人間を近くに寄せる。
そして、微かに残る魔力と周りに散らばる魔力をかき集め自分自身の命を引き換えに最後の願いを込め、咆哮をあげた。
その咆哮はこの人間の転生を願う竜自身の最初で最後の奇跡の力だった。
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