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私の高校の課題はデスゲームです。  作者: 栗尾 りゅう
3/7

3.今日はモフモフモフって来た!

 如月裕翔には、二歳歳下の妹がいる。

 名前は結海だ。

 両親ともにとある会社の役員をしていて多忙なため、夕食は結海と二人で取ることが多い。

 ちなみに、裕翔は、朝が弱いので朝食は取らない。

 如月家の夕食の席で最初にのぼる話題は、大抵いつも同じものになる。

 

「ね、お兄ちゃん。今日は『ユニヴェール』で何してきたのー?」

「うん? 鉱山で鉱石掘ってたよ。」

 そして、結海の質問に対する裕翔の回答も、ここ数日間同じものだ。

「えーっ⁉︎ また一日中ハイホーしてたの⁉︎ それ、毎日してて飽きない?」

「ハイホーに飽きるというか、むしろなぁ……。」

 ーーヌルゲーの異世界ユニヴェール自体がすでにつまらなくなってきている、とは、VR生活課題に興味を持ち、来年の紫陽花学園入試に向けて受験勉強を頑張っている結海の前ではさすがに言いづらい裕翔なのであった。

 

 

 異世界ユニヴェール、それが紫陽花学園で行われているVR生活課題の舞台となっている世界の名前だ。

 

 ユニヴェール世界は、主に五つの大国と二つの未知の地域で構成されていると言われている。

 清らかな水の国メルキュール・華やかな金の国ヴェニュス・勇ましき火の国マルス・豊かなる木の国ジュピテール・広大なる土の国サーテュルヌが五大国であり、それらが巨大な内海を取り巻くように配置されている。

 ドーナツやバームクーヘン型に陸地があり、真ん中の穴に海があると考えるとイメージしやすいだろう。

 

 裕翔や莉愛が所属する二年四組の仲間は、木の国ジュピテールの人間である。

 これは彼らが自分の意思で選択したものではなく、単に一組が水の国メルキュール、二組が金の国ヴェニュス……などと機械的に割り振られているのみで、他クラスと差別にならないように、実は国の名前が違うだけで、資源や兵力などはほぼ同一らしい。

 この辺り、ユニヴェールが作られた世界であり、現実のものではない都合の良すぎる部分が見える

 ちなみに、バームクーヘンの外側も海であり、そのさらに外側に何があるのかは、未だ解明されていない。

 

 未知の地域と言われるものは、その名の通りユニヴェール世界のどこにあるのかも知られていないのであるが、その存在は伝えられている。

 混沌なる地プルトンは、魔族の王が統治しており、五大国に所属するものは、いずれ来るという魔族からの侵略に備えて国力を高めている。

 もうひとつの未知の地域である、約束の地テールには、この世の幸福全てが満ちていると言われ、この地に至る道を解明し、到達することが人々の悲願である。

 

 つまるところ、紫陽花学園のVR生活課題の最終目的グランドクエストは、クラスメイトと協力し魔族の脅威から自国を守り、他クラスに先んじて約束の地テールに至ることなのである。

 もっとも、過去の卒業生たちは、誰ひとり約束の地テールを発見することすらできていないのだが。

 

 

「お兄ちゃんは小妖精さんなんでしょ? 手先が器用で裁縫とか工作とかが好きなんだよね?」

「そうだな。」

 

 最近ユニヴェールで何をしたか尋ねても、毎日鉱石掘りの話しか聞けずに、あまり楽しい気分ではなさそうな表情の結海は、無言で自分の皿の焼き魚を片付けていたが、ふと疑問が生まれたように裕翔に尋ねた。

 

「あれー? でも去年は全然ハイホーとかモフモフとかしないでモンスター倒してばっかりだったよね? どして?」

 先程から散々会話に出てきている『ハイホー』だが、これは採掘のことであり、『ハイホーする』とは、採掘することである。

 元ネタは、言わずもがなだが、ハイホーという言葉が連発される歌が有名な映画からだ。

 また、『モフモフ』であるが、これは羊や長毛種の山羊などのことを指し、それらの毛を刈ることを『モフる』などと言ったりする。

 そのため、放課後の教室内ではーー『今日はモフモフモフって来た!』『どこのモフモフ?』『あのハイホーするとこにいるモフモフ!』『あー、あのモフかぁ』ーーなどと異次元な会話がなされることがある。

 最早意味不明である。

 

 閑話休題。

 

「そもそも初めからモンスターと戦うなら、戦闘が苦手な小妖精さんじゃなくて、猫さん系の獣人さんとか、普通に人間族の方が良かったんじゃないの?」

 

 そう、裕翔のプレイスタイルは、決して一般的なものではない。

 積極的に魔物を狩りに行くなら他の種族を選んだ方が有利であるし、生産行為が得意な小妖精族であれば、冒険に役立つモノを作ってサポートをした方が、クラスに貢献できるはずなのだ。

 だが、裕翔は、それらの常識的なスタイルを選ばなかった。

 

「そりゃ、戦闘が苦手な種族で戦った方が……。」

「うん。」

 そして裕翔は、結海に向かって得意気に言い放った。

 

「難易度が上がって楽しいだろ?」

「あ、うん。やっぱりお兄ちゃん変態だね。ごちそうさま。」

 

 常にゲームは最高難易度で。

 それが如月裕翔のプレイスタイルである。

主人公の名前は、ゆうと。

妹は、ゆうみ。

莉愛は、りあ、と読んで下さい!


可能な限り毎日更新して参りますので、どうぞお星様の応援の程を!

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