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私の高校の課題はデスゲームです。  作者: 栗尾 りゅう
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2.女子としてのスタンダードデス!

 今からおよそ8年前、時代の最先端技術である、視覚・聴覚を始め、嗅覚・触覚・味覚に至るまでを完全に再現し、まるで別の世界に移動したかのような体験ができる『VR技術』というものが開発された。

 

 それは、自立した生活へ復帰できる見込みのなく、病院の一室にて死を待つのみであった患者への心のケアを願う関係者にとっては、大いなる福音であったと言われる。

 また、常に新しい刺激を求めるユーザーを数多く抱える業界ーーゲーム業界ーーにおいて、ユーザーの獲得競争が激化。

 VR技術は、医療・ゲームの分野から、教育、果ては政治においてまで食い込むような、爆発的な広がりを見せた。

 

 ーーしかし、それはもう過去の話だ。

 

 戦後最大の殺戮事件。そう称する者も多い。

 犠牲者、実に千三百六十二名。

 生還した者の中にも、目の前で友人や恋人を失い、未だに夜穏やかに眠れぬ者も数多くいるという。


 数百万人のファンが待ちわびた、ビデオゲーム黎明期からゲーマー達を熱狂させてきたモンスタータイトルのVR処女作、悲劇はそのゲームで起こった。

 

 仮想空間での自らの分身が命を落としたとき、現実世界のプレイヤーもまた、死亡してしまったのだ。

 ある者は、全身火傷を負い焼死。

 またある者は、腹部を食いちぎられたように失った状態で死亡しているところを発見された。

 

 仮想空間での状態が現実世界の肉体にフィードバックされるという恐ろしい現象を引き起こした事件の名を、かのモンスタータイトルになぞらえ『ロストミステリー事件』と呼ぶ。

 このような凄惨な事件が、人々の心から消えることなどあり得ないのに、この名前は皮肉にも程があろう。

 

 当然の帰結として、一時は社会を席巻したVR技術も、急速に下火となった。

 今では、ゲーム業界で細々と生存しているのみである。

 

 

「裕翔、今日も見かけなかったけど、またどっかに引きこもってたの?」

「引きこもってたって言い方はないだろ、莉愛。掘ってたんだよ。」

 

 裕翔がクラスメイトの日本人らしくない金髪の女子から帰りに声をかけられると、面倒くさそうな声で答えた。

 

「げげっ。掘ってた⁉︎ 誰のを⁉︎」

「アホか。鉱石だよ、鉱石。莉愛はどうしてすぐそういう方面に話を持って行きたがるんだ?」

「ふふふ。健全な女子としてのスタンダードデス!」

「いや、そんなわけないから。クラスの女子を莉愛の趣味に巻き込むな。」

 

 アメリカ人と日本人のハーフで帰国子女の鴨志田莉愛とは、裕翔はクラスメイトでありゲーム仲間だ。

 裕翔の一般的でないゲームの嗜好を理解し、ついて来られる数少ない友人である。

 戦友、と裕翔は莉愛を評価している。

 

 

 二人が通う私立紫陽花学園には、『VR生活課題』という一風変わった授業がある。

 時代の潮流に逆らうように設けられたこの授業は、当然ながら、ロストミステリー事件の被害者団体を中心に、大きな非難を浴びた。

 

 しかしながら、学園を運営する『ゲーム制作会社アンフォース』は、VR技術は生活に必要という確固たる信念の下、VR生活課題をカリキュラムに取り入れ、学園で先進的な技術を学んだ卒業生達が卓越した能力を社会で発揮したことが注目を集めたことにより、根強い反発はあるが、VR技術が再び市民権を得るようになるだろうと言われるようになった。

 

 

「そういう莉愛は、今日はどこで何してたんだ?」

「ワタシは、リトス平原でグリフォンを倒しマシタ!」

「はぁ⁉︎ 莉愛、それ、ソロで⁉︎」

 尋ねられたことは、お返しするのが礼儀とばかりに裕翔が発した質問への莉愛の回答に、裕翔は仰天する。

 

 リトス平原とは、二人が所屬する二年四組において、戦闘スキルがトップクラス、加えてクラス内カーストもトップクラスの陽キャグループの面々ですらソロでは絶対に狩りに行かない高難度エリアである。

 そして、そこに生息する魔物の中でも、グリフォンは上位に位置する。

 世界の英雄クラスのキャラクターでも、単独討伐は、逆に殺されかねない程だ。

 

「莉愛って、槍持ちだよな。近接戦闘スキルは今いくつ?」

「ランク6デス!」

「えぇ⁉︎ 先輩達の攻略情報だと、平原でソロ狩りが安定する戦闘スキルの目安が11からになってたよな?」

 

 目を見開いて莉愛に詰め寄る裕翔に、莉愛はそのメリハリの利いた胸を張って得意気に答えるのだった。

 

「攻撃当てて1ダメージでも与えられれば、回避し続ければ必ず勝てマス! 女子としてのスタンダードデス!」

「いや、それができるのは莉愛、お前だけだ」

 

 目に毒なバストや、直視しがたいキラキラした莉愛の笑顔から目を逸らしながら、裕翔は呆れたように呟いた。

初めてのなろう様への投稿なので、書式とか大丈夫か、読者さんの反応とかドキドキです!笑

コロナでお仕事が休みの間は、なるべく毎日更新できるよう頑張ります!


よろしければ、ご評価のお星様を頂けたら嬉しいです!

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