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出発

?歴????,未開の大陸 未知・不明な座標


「うう・・・」


望は、目を覚ました。体の節々は痛み、意識は朦朧とする。下半身の欠損も、再生してはいなかった。


「ここは・・・?」


「GOOOOOON!!!」「グギャ!?グギャギャ?」


頭上には悠々と飛ぶドラゴン、足元には見たこともない草。時折耳に入るのは、奇怪な鳴き声。

ちなみにクローバーの葉が逆向きになったようなこの植物はアンチクローバー、オレンジ色の樹皮の針葉植物は橙松(オレンジパイン)。やたら固い石杉(ストーンシダ)である。


『あ、ここ、まじで異世界だ・・・』





 絶望。

これまでの自分の全てが、欠片も残さず崩れ去っていくような感覚。


知識、常識、自身、思考、感情、全部が全部バグって停止し飽和していく。


ここは何処なんだ?そもそもこの世界が現実であるという保証は?むしろ、自分は存在しているのか?嫌だ、嫌、嫌

生きていてもいいのか?生きれるのか?イノチッテナンダッケ・・・


落ち着け。慌てても何もかかか変わらない・・・


これまで大切だったものは?元の世界に帰れるのか??世界が、僕を拒絶している。いっそ心ごと消し去ってくれたらよかったのに。




ぐちゃぐちゃになった頭では何も考ることができない。




 “ソレ”が産み落とされ、成長していく。心の闇、絶望悲観憎悪殺意といったモノたちが瞬時に心を制圧して、空虚な破滅願望へとつながった。

自然と舌を噛み千切ろうとする顎に力が入り―――――




――――――やめた。


まだ、死にたくない。パンドラの箱の希望の如く、この言葉によって再び火が灯る。壊れた心は再起動した。




望はとりあえず、この世界でどう生きるかを考えることにした。生きる意志がないと、生ける屍と同義だ。


『召喚した奴に復讐・・・必要ないな。本の世界への帰還・・特に未練はない。やりたいこと・・なんだ?』


 今は夕暮れ、うっすらと星が出ていた。地球のどの観測点、いや太陽系内のどこから見た星空も今の景色には一致しない。天の川のように空に掛かる、不自然なほどにキラキラと輝く星屑の帯が、望を魅了する。





『一番星か。そういえば宇宙の本を読むの、小学生のころから好きだったんだ・・・よし、とりあえず、望遠鏡でもつく――


「グギャギャ!」


「うわ~~!」




認知した敵の存在から逃げるため、手を足代わりにして走り出した。『勝てない戦はする前に逃げる』望のポリシーだ。一種の決意がなんとも締まらない形で終わったが、彼の口角はなぜかつり上がっていた。


「僕は生き抜いてやる!!」







 数分後。黎明望は、全力で移動していた。

なぜ『走る』ではなく『移動する』なのか、それは――


『下半身欠損の人間相手にハードモードすぎないかこの世界ぃぃ!!!――いや、当たり前か。当たり前だな。うん。そもそも人間は二足歩行する動物で、両手を使って走るわけではない。召喚した奴の顔、絶対一発ぶん殴ろう。なんで肉体の保護ができてないのに未開の地に放り出すのかなー。チートを貰って俺TUEEEとかは期待してなかったけどさー、王城に召喚されて王と謁見とかあるじゃん。どうでもいいけど腹減ったなー』

『現実逃避ナウ★』


状況を説明しよう。後方にはゴブリンが5,6体、両側にはうっそうと茂った森。森に入れば間違いなく()られる。


『いや、もっとよく見るんだ。何か現状を打破するきっかけがあるはずだ。エート後方のゴブリンは・・・木の棍棒らしきものを待っているのが三匹、弓をもっているのが一匹、体格のいいのが一匹・・ん?弓!?』


弓持ちのゴブリン【ゴブリンアーチャー】が矢を放った。望の背筋に悪寒が走った僅か1/10秒後、矢は顔の横数mmを風を切って通過し、その先の木に当たった。


『やばい死ぬ!』「うおおおおおおお!!!!」



 少しだけ、ゴブリン達を引き離した。

『今だ!』左へと進路を変え、中規模の洞窟に文字通り転がり込んだ。岩陰に身を隠し、息を殺した。


「ギャギャ!ゲギャ!?」「ギョゴギャ、グギャ?」

じっと耳を澄まし、気配を探って敵が離れてくれるのを待つ。


「ゲギャ?ゲギャ?(ドコダ?ドコダ?)」「ギャギャ!ギャギャ!(サガセ!サガセ!)」

何となく、言っていることが分かった。(多分、[言語理解能力]のおかげだな。)


しかし、五分ほど待っても、立ち去る気配はない。見つかるのも、時間の問題だ。望は、手元にあった石を投げて注意をそらさせることにした。


コツンッカンッコロコロロロ・・・




「ガギャ!ガギャ!(アッチ!アッチ!)」

音を追ってゴブリン達は森の中へ去っていった。




「ふう~」


緊張が解けたため、望に強烈な睡魔が襲ってくる。疲れ切った体を癒すため、そのまま眠りに落ちた。


―――――――――

―――――――

―――――






目が覚めても、そこは異世界だった。『夢オチだったらよかったな』

とりあえず起きて、はっと気付く。『そうだよ、異世界転生の定番のアレ、試してみよう!』


「ステータスオープン!」


五秒たち、十秒たった。何も起こらない。




30秒後――


『言葉が違うのか?』「ステータス!」「インベントリ!」「メニュー!」「スキルボード!」

何も起こらない。



60秒後―――


「status」指ビシィ! 「menu」何かを開くような動作



75秒後――――


「よし、今日の計画を立てよう。」

なかったことにするようだ。え、そこに触れるなって?



「最後にダメ元でやってやる!荒ぶる炎よ、燃え上がれ!≪ファイア≫」


その時、頭に魔方陣が浮かんできた。円の外縁部に文字が描かれていて、中央に六芒星が入っている。文字は、[fire][+300][][][brain][unknown][]と読めた。体から力が外気に漏れ出て渦巻いているような感覚があった。目の前に、形が定まっていない火が現れた。




魔法だ。魔法である。大事なことなので二回言いました。いや、書きました。が正しいのか?


『ここ、まじで異世界だ!wohooooooo!yeahhhh!』しかし、それでも大声は出さない。さっきの呪文は除く。


「今日の計画は決まりだ!魔法を使えるようになろう!いや、なります。なってみせます!」


いや、思いっきり大声出してた。


「≪ファイア≫」


ボッ




完全な呪文の詠唱は必要ないことを発見したのだろう、簡略詠唱(PIC spell)(Play-informalCharm)【祈り―略式呪文】を発動している。

「」≪ファイア≫(魔方陣をイメージ)


ボッ




『うん。魔方陣が発動のみそだね。黒歴史確定、今日寝る時に悶えよう。いや、過去は振り返らない。僕は未来に生きる!』

思考活性化式改略式呪文(BIT spell)(Better Informal charm-activate by Thinking)もう訳が分からないからBit魔法とでも呼ぼうか。魔方陣をイメージすることで直接魔法を呼びだす応用技術だ。因みにPicは基本技術に分類される。



「アイス」


しーん。


「アイス」


静寂。一陣の木枯らしが春なのに吹き抜けた・・・ような気がした。勿論、魔法で気温が下がったわけではない。




『あ、最初の魔方陣を覚えるまでは詠唱が必要なのか。』


『魔方陣見て魔法覚えよう』思い立ち、周囲を見回す。木々の間に目を凝らすと、遠くの方に魔法らしき発行する物体を見つけた。


『そうと決まれば早速・・あれ?動けない?そういえば僕、下半身なかったわ。よし、足を作って、出発!』



望の物語は始まったばかりだ。

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