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死と呪いと君  作者: ジェニファー
7/10

客船ー

義隆と別れ家にたどり着く頃には、辺りが夕闇に包まれ始めていた。

父も兄も今日は忙しく帰りは遅くなるだろう。暗い家に入った影吉は次々と電気を灯し、リビングのソファへ体を預ける。テーブルにあったリモコンを引き寄せテレビをつけると、夕方のニュースが流れていた。

なんとなしに見ていると、見覚えのある景色が映し出される。

イザヨイ浜と、“例”の漂着した客船の姿だった。

『海上保安庁によりますと、今際島に漂着した客船は、一九八十年にカリブ海で消息不明になったアメリカ船籍の<ディフェンダー号>だということです。この船の乗客乗員共に行方がわからなくなってますが、船内での遺体発見との情報は現在入っていません。専門家の話では、船の周囲には海洋生物や堆積物が付着しており、かなりの間海底に沈んでいた可能性が高いとの事です。さらに、船の後部にある部分に爆発のものと見られる破損が見つかっており、これが沈没の原因となったのではないかと見られています。一度沈没したはずの客船がどのようにして浮上し、今際島へと流れ着いたのか今のところ全く分かっておらず、海上保安庁は人が入らないよう厳重に警備し、船の持ち主と撤去の交渉をしながら調査を続ける予定だそうです。突如幽霊船が現れるというミステリーに、日本全体が困惑しています』

若い女のレポーターが客船をバックに話す後には、ピースする子供や船を見物するお年寄り、観光客の姿が映っている。外が明るく太陽が西に傾く前の景色なので、影吉たちが浜辺に訪れる少し前に撮ったもののようだ。

ふと、時計を見ると、午後七時を回っていた。

母親というものがいない木霊家では、夕食の準備はその日できる者がする事になっている。父も兄も今日は家で食べないだろう。自分だけだと思うと余計にやる気が起こらず、影吉はそのまま目を閉じた。

窓際の後ろの席で授業を聴いている優香子の姿が浮かび上がる。

いつもひとりぼっちの彼女。

昨年、養母のタヌキ婆が亡くなってから彼女と話すものはこの島にはほとんどいない。島外から来た教師は彼女と他の生徒に分け隔てなく接して話すが、どこか及び腰になっているのも事実だ。そんな彼女だからこそ修学旅行に一緒に行きたかったのに……。

朝の父や兄とのやり取りを思い返し、影吉は深くため息をついた。

一日を終えた心地良い疲労が、ねむりのせかいへと強引に引きずり込もうとする。

消えゆく意識の中、影吉は父が気にしていた、行方不明の漁師の話を思い出した。

そういえば、あの件どうなったんだろう―

意識をなくしかけたその時、家の電話がけたたましく鳴った。

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