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女性の品格

どこまでがセーフラインなのでしょう…

「なんでこんな田舎ところ弓手アーチャーなの?」


先日の一件で、ハリーが以前に第一階層の有名カジノのディーラーをしていたことを知り、おれは彼に問いかけた。


「ああ、タオについてきました」

「ついてきましたって何?君たち知り合い?」

「幼馴染ですね」

「はぁ、それでその…君たちは付き合ってるのか?」

「いえ、僕が一方的に彼女についてきました。この階層アマンデイは海と森ばかりだから、勝負師ギャンブラーよりも弓手アーチャーのほうが需要があると思ったので、ジョブチェンジしたんです」


ハリーは相変わらずのポーカーフェイスでこたえる。

なんだ、この男?何考えてるのかさっぱりわからん。

とりあえず真面目で優秀であることには変わりがないので、しばらく様子をみることにする。


翌朝、今度はタオに声をかけた。


「おはよう」

「おはようございます、支配人」

「いきなりだけど、ハリーとは知り合い?幼馴染と聞いたんだが」

「はい、彼とは出身が同じ村です。どういうわけか、彼とは旅先でよく会います。同じ職場は初めてですが」


この女はハリーがついて回っていることには無自覚らしい。


「ちなみにハリーとパーティ組んだりとかは?」

「それはありませんでした。気づいたら、また会いましたねという感じでしょうか?」

「そう、わかった。ありがとう」


タオは上品な微笑みを置き土産に朝食の準備に向かった。彼女のぴんととがった耳が後ろ姿でもその存在を主張していた。


おれとタオのやりとりを見ていたサツキが声をかけてきた。


「何かあったんですか?」

「うん、ハリーとタオが知り合いだそうだ」

「へー、世界て狭いですね」

「いや、ハリーがタオを追っかけてきたらしいぞ」

「何それ、怖っ!」

「とりあえず、今のところ無害みたいだから、様子見だな」

「大丈夫ですかねぇ。あ、それはそうと、また例の二人組の女の名前入ってますよ」

朱姫しゅき蓮華れんげ?また難儀な…こないだのメンバーで?」

「いえ、男の方はふたりとも変わっていますね」

「前回から2カ月でもうパーティチェンジ?ちなみにその日の宿泊の状況は?」

「うーん…戦士系中心です。かなり男臭いですね」

「そうか、また一波乱あるな」

「そうですね……」


サツキがじっと考え込む。


この朱姫と蓮華のふたりは若い女性の冒険者で、この階層アマンデイにはよくやってくるようだ。

それで、このふたりの何がいけないのか。


おれがいうとアレなんだが、高いのだ。

その……


露出度が。


若い女の子がほとんど下着のような姿でこの田舎の宿屋の中をウロウロするので、他の客からも「品がない!」というお叱りから、「紹介しろ」という無茶苦茶な要求まで、良くも悪くも反響がすごいのだ。


宿屋というのは本来、客人のプライベートがしっかりと保たれる場所ではあるが、ロビーや食堂は公共の場に近いわけで、当然そういったなりの者に対して不快に思う客がいてもおかしくない。

やはり最低限の品位くらいは守って欲しいのだが、どうしても男のおれにはこの手の客の扱いが苦手なのだ。


これまではサツキにふたりを諫めるように頼んでいたのだが、先日ふたりから「うるさい、オバサン」という言葉の暴力を受けてからは完全に敵意むき出しになっている。


「どうします?断る?」

「いや、さすがにそれはなぁ……」

「いうこと聞かないんじゃ、断ってもいいと思いますよ。生意気だし」


不満顔のサツキを放っておいておれは腕組みして考える。


「そうだ、ウチにはもうひとりちゃんとした女子がいるではないか!」

「ちゃんとしたぁ?」


サツキが般若のような顔で反応するのを無視して、俺は食堂で朝食の手伝いをしているタオを呼びに行った。


数日後、予定通りに朱姫と蓮華が宿にやってきた。

朱姫は虎柄のビキニタイプのセパレーツで左胸には革の胸当てと、腰に矢を入れるうつぼをさげ、脚はビキニと同じ柄の膝まであるロングブーツだった。

十代の女の子とは思えない厚めの化粧で、アイラインが青くポイントされており、唇もたっぷり潤いあるジェルタイプでぷっくりと見せている。

首元には赤く光る紅玉のあしらわれた首飾り。

そのなりは完全に夜のお仕事モードに見えるが、Cランクの弓手アーチャーである。



一方の蓮華はというと、これまた豹柄のワンショルダーのセパレートタイプで、本来すっぽりと全身を覆うはずの天衣ローブを腰に巻き付け、左足は太ももの付け根付近から下がすっかり露わになっている。

脚には革紐を巻き付けたようなデザインのグラディエーター。

南国リゾートでバカンスの雰囲気漂う彼女は、Bランクの賢者ハーミットだ。

しかし、これでは誰がどう見ても愚者である。


ふたりが連れている男は細マッチョでシックスパッドばっきばきの槍使ランサーいと騎士ナイトだった。


それで、予想通りというべきか、宿に遊女を呼んだ奴がいるなどといった噂がひろまり、夜の食堂は色に餓えた男どもで危険な状態になっていた。


ふたりににせめて館内では天衣ローブを着用してもらえないかと依頼してみたものの、馬の耳に念仏。

「は?なんで?」の一言で、全く聞く耳を持たなかった。


仕方なく、早々と秘密兵器タオの投入と相成ったのだが、ここで時間が来てしまったようだ。


そう、次回に持ち越しなのである。



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