食べられません
好き嫌いじゃないよ…
「ダメな食材があるんですけど、対応ってしてもらえるんですか?」
オウムのような魔法生物の蓋栓電羽で予約してきた男は心配そうに尋ねる。
「もちろんですよ。アレルギーですか?」
おれの問いに男はこたえる。
「あ、いえ。牛とか豚とか」
「菜食主義でしょうか?」
「あの、宗教なんですが…」
おずおずと男がこたえる。
「宗教…ですか?」
やり取りを聞いていたタオがおれに「代わりましょうか?」と聞いてきたので、おれはあっさりと蓋栓電羽の前の席を彼女にゆずった
「すみません、係代わりました。不浄食材の事でしょうか」
「そう、そうなんです」
「アスラン教でいらっしゃるのですね」
「ああ、そうなんですよ!良かった、知っている人がいて」
おれには耳馴染みのない宗教だったが、さすがはBランクの僧侶だけあってタオは宗教にも精通していた。
「残念ながらこの宿では完全な許可食材を取り扱わないので、不浄食材以外の食材の使用はお客様判断となりますが、いかがいたしますか?」
「とりあえず、ダメなものは牛と豚、犬、虎。鳥類ならキツツキもだめですが、他にはどんな食材が取り扱われますか?」
豚はともかく、犬とか虎、キツツキを調理したことはない。
ないはず
たぶん…
「わかりました。ではワニはいかがでしょう?」
「わ、ワニですか…?たぶんだめだと思います」
「カエルはどうですか?」
「カエル!?カエルが出るのですか?」
「まれに鶏の代用食材として」
「に、鶏は大丈夫です。でも闘鶏はだめです!カエルはちょっと…」
「ではヘビは?もしくはウミヘビ」
「ヘビ!?ウミヘビ!?」
「少し小骨がありますが淡白で美味しいですよ」
「あの、す、すみません!」
「もしくは動物系がダメなようでしたら蜂の子とかイナゴ、ワームやマイマイなどの…」
「ちょちょ、ちょっとまて!」
一生懸命に蓋栓電羽に向かって話しかけているタオにおれがストップをかける。
「タオ、後半は完全にゲテモノ食材のオンパレードなんだが…」
案の定、電羽の通信はきれていた。
「す、すみません…先日、料理長から食材についていろいろと教えていただいたものですから、つい…」
どうやら、この前の食堂でのマチルダ氏との一件があってから、タオは予約の際には食材の確認もとるようになったらしいが、ダンカンの余計な入れ知恵のおかげで、大事な客を一人逃した。
その日の夕食後、おれは厨房でダンカンにちょっとした皮肉を込めていった。
「ダンカンがジビエ料理得意なのは承知なんだが、さすがに虎は食材にならないよなぁ」
「うーん…ぞうでずねぇ」
ノイズののったディストーションをきかせて腕組みをする
「四、五日ほど時間をもらえれば…」
「できるんかーい!」