ミカヤ登場。そして…
「もぅっ!この私が来てるのに、レムは何やってるの?」
俺がミカヤのいる部屋の前に来た時、部屋から怒る声が聞こえた。
「ミカヤ様、申し訳ございません。只今ナアマ様が呼びに行かれております。」
あ、ナアマは俺のお母様の名前な。俺の家は王族の傍系だっていったろ?ちゃんと英才教育受けてんよ。じゃなかったら、お母様なんて呼ばないし。
さて、気はのらないが、ミカヤに会うとするか。
俺は足元を歩いていたイポスを抱き上げた。そして、頭に乗せる。
俺は覚悟を決めて、戸を開ける。
「失礼します。」
俺は礼儀に気をつける。
部屋の中央にある椅子にミカヤは座っていた。傍らには従者がいる。
ミカヤは金色の長髪に、これまた可愛い顔をしている。お母様にだって負けていない。ミカヤといい、お母様といい、なんて美形の多い世界なんだ。
ミカヤは動きやすさ重視の、軽めのワンピースのようなものを着ていた。そして左肩には、王家の紋章である六角形をモチーフにしたブローチをしている。
ミカヤはな、王族なんだよ。しかも俺にとって、ただの王族じゃあない。俺の許嫁らしい。しかもありえないぐらいの魔法の才を持っているらしい。ま、俺にはかなわないだろうけどな。
「レム!遅いのよ。はやくしなさい!」
「悪かったな。これでも急いだんだよ。中庭にいたんだぞ?」
「知りませんわ。と、とにかく遊びにいきましょ?」
ミカヤはいつも、俺を誘う時に顔を赤くする。すごく可愛いと思う。
俺はミカヤの座る椅子の前まで行き、手を差し出す。
俺は男だからな。ちゃんとエスコートしちゃうんだよ、これが。前世では考えられないよなぁ。あいつが見たら必ず、間抜け面してくれるはずだ。
ミカヤは俺の手をしばし見つめ、そして、いつものように手をさしだしてきた。
俺はその手を優しくつかむ。
《相変わらずだね、ご主人。ミカヤ姫はご主人のこと、大好きなんだね。》
(……イポス、黙っとけ。)
《あぃあぃ。ご主人のデートの邪魔はしないよ〜?隠れて見守ってるねぇ?》
イポスは俺の頭から、ストンとしたに降りた。俺はミカヤの目を見つめて言う。
「どこ、行きたいんだ?」
「……あ、えと…。」
俺に見つめられたせいだと思うが、顔を赤く染めたミカヤは、あたりをキョロキョロしている。
……ノープランだったのか。ただ単に俺と遊びたかったんだな。
「じゃ、丘の向こうの花畑行くか!綺麗に咲いてたから、ミカヤにも見せたかったんだ。」
「……!うんっ!行きたい!」
ミカヤは顔を輝かせる。
ミカヤはな、いつもお高くとまっているように見えるが、そんなわけない。
かなり単純で、普通に可愛い。
「レム、はやく!私、はやく見たい……!」
いつのまにか、玄関まで歩いてきてたようだ。
「ミカヤ様、レム様、いってらっしゃいませ。」
「あぁ、いってくる。」
俺は従者に挨拶して、玄関から出る。もちろんミカヤの手はつないだままだ。
「ミカヤ、急ごう!」
「はいっ!」
俺とミカヤは同時に唱えた。
「「ハイスピード」」
俺とミカヤの体から、青白い光が発生する。
名前のとおり、ハイスピードとは素早さをあげる魔法だ。これは闇魔法の初級である。
俺たちは滑るように地面を走り、花畑を目指す。陽は西に傾いていた。
「よし、ついたぞ。」
俺たちは丘をこえ、花畑についた。
花は咲き乱れており、視界全てを彩っている。
ここまでくるのに、約2分程度かかった。多分、魔法を使わなかったら、10分くらいか?
「わぁっ!綺麗なお花……。」
ミカヤは座り込み、黄色い花の匂いをかいだ。俺はミカヤのほうへ行こうとしたが、ふと、ミカヤとは反対側に赤い花が咲いているのが見えた。
バラ……に間違えなかった。
俺はなんだか嬉しくなる。
俺はその赤いバラをミカヤのために持って行こうと決めた。
《ご主人っ!危ない、避けて!》
バラまであと少しという時、イポスの声が聞こえた気がした。