夢の中で
俺は目を覚ました。そこは暗い部屋?だった。
(……確かここは。)
《ご主人〜!僕のこと、わかりますかぁ?イポスだよ。》
猫耳……否、ライオンの耳を生やした7.8歳くらいの少年が自分のすぐ隣にいた。
そして気づく。俺の体が赤ん坊ではなく、前世……つまり死んだ時のものにもどっている。赤ん坊とは違って違和感なく、動かしやすい。
「イポスって、確かネ…ライオンの?」
《ご主人ひどい……。まぁ、言い直してくれたけど。》
しょげたように座り込み、地面を指でグリグリしている。なんとも可愛い姿だ。
《そうだよ、ご主人!僕ね、ご主人をここに連れてきたんだよ!》
ニコッと笑いながら、イポスは俺の手をとった。そして突然走り出す。その小さな体に合わない力で引っ張られる。
《バエル様はこっち。ご主人いくよ!》
「お、おう。」
ライオン耳を生やした少年、イポスと俺は真っ暗で何も見えないところを駆ける。
しばらく進むと暗くてよく見えないが、扉らしきものがある場所についた。イポスはためらうことなく、その戸を開ける。その部屋も真っ暗だった。
《……ん?来たか。》
声がしたかと思うと突然、真っ暗だった部屋に、フッと明かりが灯った。
《バエル様〜!ご主人連れて来たよ!》
立ち止まったイポスが嬉しそうに言う。そして俺の手を掴んてでいたほうの手をあげて、バエル様とか言うやつに手をふった。
《イポス殿、お疲れ様。助かる。》
その声の主、バエルは俺のほうを振り返った。
その姿はとても堂々としていて、全てを知り尽くしたような表情で見つめてくる美青年だった。歳は多分、18とかだろう。
頭には金色に輝く王冠をかぶり、その王冠の下から、猫耳のようなものが姿を見せていた。黒色だ。
《来て頂き感謝する。我らの新しき王よ。》
バエルは立ち上がり、俺の前までくると、サッとひざまづく。その姿に戸惑っていると隣にいたイポスがバエルの隣へと向かう。
《ご主人、バエル様は僕たち悪魔の王なんだよ。》
イポスが笑いながら言う。そして俺は思った。
(あれ?なんでイポスは俺のこと、ご主人って呼ぶんだ?それにこのバエル様っていう王も。)
今更なことに気づく。
イポスは初めてあった時からずっと、俺のことをご主人と呼んでいる。
《どうやら我らの新しき王はこの事態を把握できていらっしゃらないようだね。》
ひざまづいていたバエルが顔をあげ、立ち上がる。俺と同じくらいの背の高さだ。180くらいか?
《ふむ、ヴィネ殿か。》
《バエル、いつも言ってるじゃないか。呼び捨てでいいよって。》
ヴィネは蛇を撫でながら現れた。バエルと同い年くらいだろうか?
薄い笑みを浮かべている。
《初めまして、我らの王よ。僕はヴィネ。この子はコフィンという。よろしく。》
ひらひらと手を振る。体は細く、筋肉なんてものはなさそうだ。
だが俺の本能は叫んだ。こいつはヤバイやつだと。
「……っ!」
《あれ?もしかして嫌われました?》
バエルのせいだよ〜といいながらヴィネはバエルを小突く。バエルは俺のほうへと一歩進み出て頭を下げる。
《レハブアム王よ、失礼した。》
《ごめんなさい、レハブアム王。あのソロモン王の力を受け継いだ人だから気になってしまい……。》
「いや、こっちこそすいません。あからさまに驚いてしまって……。」
俺も頭を下げる。
その様子を見たバエルが慌てた。
《レハブアム王よ。我らに頭を下げる必要などありません。》
《ご主人〜!ご主人は僕たちのご主人だから、そんな態度はおかしいよ?》
イポスは頭にハテナを浮かべているのがわかる様子でいう。
ヴィネはコフィンを撫でながら言う。
《レハブアム王は我らの元王、ソロモン王の力を受け継いだ、僕らの新しき王なんですよ。》
《うむ、いかにも。ソロモン王亡き今、その力を持つレハブアム王のみが我らの新しき王。》
バエルも続けた。