メデューサと少年
これはある国の話
昔々、その国は極悪非道の王様に苦しめられて
いましたが勇者により民が治める国へと変わり
ました。
民はその日から陽気に踊り飲み明るい国となり
ました。
そんな、陽気さとは異なる異質な雰囲気をした
屋敷が1件森の奥にありました。
そこには知らない人はいないという
有名な博士が住んでおりそこに訪れる者は
助手の女性だけでした。
噂だと人間と獣のハーフやゾンビ化の研究をし
ているそう。
実際のとこ確かに国の命より研究や実験をして
いましたが最愛の恋人が実験により事故死して
依頼は恋人の復元に没頭していました。
不気味な紅い朧月が登った夜
その屋敷では狂気的な笑い声と女性の悲鳴と鈍い
音…そして断末魔が響いた…その中心には半裸の少
女が不思議そうに横に転がっている石をみつめて
いた。
その少女は白い肌には似合わない黒い鱗の紋様が
肩や頬いたる所にあり遠目からみると黒い髪は近く
でみると1つ1つが蛇で蠢いていた。前髪から覗く
瞳は不気味なほどに紅くその容姿は最早メデューサ
だった。
博士はその少女を愛しそうに見つめ「マリア」と呼ん
だ。その少女は見た目こそは異質だが確かに恋人の
面影が残っていた。
マリアと呼ばれた少女は博士をみつめ這うように
して博士の足にしがみつく。
「…あ…ぁあ」
言葉が話せないのか呻き声を出しながら博士に必死
にしがみついている少女ことマリアに博士は前髪部分
から覗く紅い瞳を隠すように包帯を巻きつけてもちあ
げる
「マリア。君は私の娘だ。わかるかい?」
「あー…あぁ」
「わかるのか。」
もちあげられているマリアは足をバタつかせた後され
るがままになっていた。
それから月日は流れ…
博士はマリアが15歳になるまでの間ひたすら自分で
生きる知識を教え沢山の愛情を注いだ。
発育は遅く見た目は8歳になるかならないぐらいで幼
さが残っていた。
「マリア?何処にいるんだ?」
「父さまっおご飯作ったの!!」
「おぉそうかそうか。マリアの作ったものは
美味しいからな」
博士とマリアは目を合わせずに会話をする。
それは、昔からのルール。
目を合わせると石になってしまうからだ。
博士は老い自分で何かをすることが不自由になって
いるため家事や洗濯はマリアの仕事。
けして裕福ではないが2人で過ごす事が幸せでずっと
このままでいれればよかった。
しかし、この時代に無くなったとされていた魔女狩り
が密かに復活した…罪のない老女や異質な姿をした
老若男女が犠牲になっていた…森の奥の屋敷で暮らし
ている博士達だって魔女狩りの対象になっていた。
そしてそれは前触れもなくおきた…
草木も眠る丑三つ時静かな空間が騒がしくなる
破壊音と叫び声でマリアは目が覚めた…小さな小窓
から外を覗くと揺らめく炎と数多の影が踊っている。
怖くなって父さんのいる部屋に行こうとすると部屋に
鍵がかかっていて開かない…
その時…銃声と愛しい人の叫び声が聞こえ遠のい
ていく…
「父さぁぁあぁまぁっ」
必死にドアを叩いて名前を呼ぶが周りの破壊音に
紛れ消えるがマリアは必死に叫んだ
「とう…さぁ…まっひとり…しないでぇ…」
その時、ドアの前で数人の男性の声がした
「あのイカれた博士には子供がいたよな?」
「噂だと居るらしいぜ」
マリアは自分の事だとさとり後ろに後ずさりを
した。
ガタッ
「あっ」
後退した拍子に本の山にぶつかり倒してしまった
のだ…
「何か音しなかったか?」
「その、子供か?」
怖くなったマリアは近くにあった布を被り震え
る体を抑さえるようにくるまった
ドンッ
ドアの方から破壊音が聞こえたあと靴音が沢山
して部屋に入ってきた。
そして、くるまっていた布を剥がされて男と眼が
あう。その瞬間男の動きが止まり徐々に石化しは
じめる…それをみていた仲間たちは怖くなり近く
にあった棒やら本などでマリアを叩き始めた。
(眼があうと石になってしまうの?どうしよう。
怖い…痛いっ。父さまたすけて…)
散々殴っていた男達の動きが止まった…
「君…大丈夫?」
さっきの男達より高くて父さまのように優しい声
がした。マリアは少年の顔を見ないように俯いた。
「どこか痛いの?」
少年は不思議そうにマリアの色の白い肌に触れる。
びくっと肩を揺らしたマリアに驚いて手を引っ込め
謝ったあと少し震えた声で言った。
「君はメデューサなの…?」
メデューサ。それは神話の中にでてくる悪役で物語
ではいつも悪役で勇者に殺されている自分にそっく
りな怪物だった。
(私…メデューサ…怪物だったんだ…)
「そうだとしたら…怖い?」
震える声でいうと少年は可笑しそうにクスッと笑っ
た。
「怖くないよ。」
「でも…眼があったら石になるよ?私…怪物」
「君は怪物なんかじゃない。人間だよ?怪物
は怖くて人を襲うけど君は襲わないだろ?」
「でもっ「怖くないから大丈夫だよ。」」
気づいたら僕は少女を抱きしめていてた。初めて
あったその少女は異質な姿をしていたが震えて僕を
避けようとする姿は儚げで怖がっていたことが馬鹿
らしくなってしまった。
この屋敷に居るということはきっと血まみれで運ば
れていた男の人の娘なのだろう。あの人はきっと助
からない…だけどこの少女は僕が守りたい。そう思っ
た。
僕の腕の中にいる少女に問いかける
「僕はハイリって言うんだ。良ければ友達になって
くれないかな?」
「友達…なりたい。」
そ
の答えに満足しあるものを渡した
少年は私の手に何かをおいた。
それは月の光りで淡く光っている若葉の形
をあしらったものがついたブレスレットだった。
「こんな綺麗なの…いいの?」
その時、朝が来るのを報せる鶏の鳴く声が聞こ
えた。
「あっ行かなくちゃ。直ぐに戻ってくるから
待ってて。」
少し上を向くと笑って走っていった。
その後は疲れて寝てしまった。
遠くの教会から3時の鐘が響いく音で目が覚めた
…
少年はいない…夢だったのかとおもった時手の中
にあるものに気づいて手を広げてみるそこには
暗くてみえなかったが紅い若葉の形をあしらった
ブレスレットがあった。
「嘘じゃなかったんだ…」
ガタガタっ
なにかと部屋から顔をだすとハイリが沢山の食
材を抱えて帰ってきた。
「ただいま。働いてる所からもらってきたん
だよ。こんなにたくさんっ」
そういってさっきまでマリアが被っていた毛布の
上に果実や野菜を置いた。
「ありがとう」
「いえいえ。あとね、君の父さん亡くなった
て…」
顔を歪めながら少年はいった。
「嘘だめ…だよ。」
マリアは父さまが死んだことが理解できず頭が白
くなる…視界が揺れて涙があふれる
すると少年が近づいてきて私をゆっくりと抱きし
め頭を撫で「大丈夫。大丈夫。」と繰り返しぎゅっ
とさっきよりも強く抱きしめる。
マリアの蛇が手に巻き付いてもそれさえも愛しい
かのようにされるがままになっていた…
その日からハイリは壊れた家具の整理やマリアの
世話、食材の調達をしてくれてほぼ一緒に暮して
いる状態だった。
昔のようにマリアは家事や洗濯全般を行いハイリが
いない時は昔から好きだった花の絵本をよんで帰り
を待ったりしていて傍からみると新婚生活ようだっ
た。
2人は月日が経って幾度にお互いが愛しくてかけが
えのない存在へとなっていた。
そんなある日、いつも月が出るまでには帰ってくる
ハイリが帰ってこずマリアは極寒の中玄関の前でずっ
とまっていた。
月が1番上に登る頃に村の方から千鳥足の人影が此方
に向かって歩いてくるのが見えた
「ハイリっ?!」
駆け寄るとそこには血だらけの愛しい人の姿があっ
た。
ハイリによると盗みを働いた少年を庇って数刻に渡り
殴られたらしい…
泣きながら治療をするマリアにハイリは
「俺さあんま眼がみえてないんだ…だからなにも視え
なくなる前に君の顔をみせてくれないかな。」
とイタズラが成功したかのように無邪気な
笑みで言った。
包帯を目に巻こうとするマリアの手を止め自分の
顔にマリアの顔を近づけると
「…綺麗だねマリア。君は僕の女神だよ。」
と笑いながら泣いた。
ハイリは眼がみえなくなった…それでもハイリは笑
って
「マリアと面と向かって話せるからいいんだ。」
と満足気にいう。
眼がみえなくてもできる仕事をして稼いでくれた
お陰でそのうち裕福になった2人はその大きな屋
敷を売り誰も使わなくなった森の奥の小屋に引越し
た。
「マリアっ!!何処にいるの?ねぇっ」
「ハイリ?どうしたの?」
「マリア。僕と結婚してください」
いつもへらへらしてるハイリがやけに真剣にそう言
ってから笑った。
「マリア?嫌なの?ねぇマリアってば!!」
私が沈黙しているとハイリが小さい子のように小さな
テーブルを両手で叩きながら頬を膨らませている。
(可愛い…ハイリ可愛い)
「マリアってば!!怒るよっ」
「ハイリは私のこと好きなの?」
「え?今更なのっ?!大好きだよっ愛してるっ」
「うん。私もハイリのこと愛してるよ。」
そう言うとはハイリは嬉しそうな顔をして私に
抱き着こうとして転けた。
ハイリが直ぐに結婚すると言いながらバタバタ
してるから起こしてあげると抱きしめて私の蛇
の頭を撫でていた。
それから、2人は小さな教会で式をあげ永遠を誓い
村の人達が羨むぐらい幸せに過ごしたそう…
幾年もの月日が経ち
ハイリとマリアには双子の兄妹が産まれ
兄のシオンはハイリ似で片眼が紅い妹想いの優しい
少年に育ち
妹のルリはマリアそっくりの容姿で明るく活発な
少女に育った。
ほら、今日も森の小さな小屋から楽しげな笑い声が
聴こえてくる…
「母さまっ!!シオンが怒るっ」
「だって、ルリが僕のお菓子食べたんだもんっ!!」
「喧嘩はダメだぞっ!!ルリはシオンに謝る。」
「お兄ちゃんきらいっ」
「母さんっ…ルリが僕のこと嫌いっていったぁ…」
「ルリは本当はシオンのこと大好きなのよ?だ
から気にしたらダメよ。」
「ほんとに…?」
「そうよ。お母さんもシオンのこと好きよ。」
「マリアっ俺のことは?!」
「ハイリのことは愛してるわ。」
「シオンみたか?お父さんのこと愛してるって!!」
「母さまっ!!ルリのことは?」
「ルリもシオンもハイリも皆愛してるわ。」
「僕も母さん大好きっ!!」
「ルリだって好きだもんっ!!」
「俺だって愛してるぞっ!!」