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初めては幼なじみⅡ  作者: 亜果利
2/12

楽しいクラブ紹介


在校生による、趣旨説明が始まった。クラブ紹介の順番は、クジを引いて決めたらしい。


 一番クジを引いたのはサッカー部らしく、早速、サッカー部のクラブ紹介が始まった。


舞台端から出てきたのはサッカーユニホームを着た二年生らしき人たち五、六人。


「オットセイではありません。サッカー部員です」


三年生のキャプテンらしき人の声がスピーカーから響いた。


まるで水族館のオットセイのように、器用にサッカーボールをコツンコツンとヘディングしながらの登

場に、会場内は大爆笑だった。


五、六名の部員が横一列に並んで、ヘディングを繰り返す。


サッカーボールだけを見つめてボールを落とさないようにヘディングに集中する部員たちに場内から声援が飛び交う。


「ぜひみなさん。サッカー部に入って、オットセイを目指しましょう」


勧誘力があるのかと疑問に思う言葉で、サッカー部のクラブ紹介が終わった。


その後、男子卓球部員によるクラブ紹介が始まった。


青い襟つきのユニホームを着た部員五名が恥ずかしそうに横一列に並び、カチコチのおじぎをした。


サッカー部員とのギャップなのか、キャプテンらしき人が緊張しているせいもあり、笑いが起きず、場内はだんだん静まり返って行く。


地味な素振りを十回ほど繰り返して、卓球部のクラブ紹介が終わった。


半分口が開いた状態でボンヤリそれを見ている稲本の脇腹を肘でつついて


「感動してる?」


「感動……出来ない」


眠むそうに小さなアクビをし始めている。


続いて横一列に並んだのは部員数三名の天文学部だった。


畳一畳ほどもある大きな紙を広げ始めた。


そこには日本地図が描かれてあり、五月に起きる金環日食が観測される地域を現わしたものだった。


「二十五年ぶりに日本で観測される金環日食は、このように中心食帯が日本の主要都市、東京、名古屋、大阪にかかっており、広範囲で観測できます。中心食帯の中心に近い地域ほど、月は太陽の真ん中を通るため、この学校でも素晴らしい金環日食が観測できることでしょう。それから次に金環日食を肉眼で見る危険性について説明させて頂きます。太陽を肉眼で見ると……」


この時点で、隣の稲本をふくめ、会場内の約六割の生徒が眠りにおちそうになっていた。


お昼御飯を食べたばかりのただでさえ眠い五時限目の時間帯。


壇上に立つ相手は教師ではないので、緊張感がなく、眠気は最高潮をむかえる。


コツン


眠りに落ちた、となりの稲本がわたしの肩にもたれかかって来た。


肩をそらすことなく、稲本を受け止め横目でチラリと見る。


すでに熟睡モードに突入しているようだ。


体育館の二階の窓から差し込む柔らかな日差しを浴びたトラブルなど無縁の綺麗な肌。


油断すると額に直ぐにニキビが出来てしまうわたしには羨ましいほどだ。


前に目を向けるとわたしたちとは逆に、ポニーテールの女子生徒がとなりの男子生徒の肩に眠落ちして

いた。


会場脇に立つ教師たちさえアクビをこらえている状態。


もう一度肩にかかる稲本の寝顔に目をやる。


伏せられたマツゲは影が出来るほど長い。


普段は奥二重で、それほどマツゲの長さは気にならないのに、この寝顔は反則だ。


こんな無防備な稲本だけど、剣道では名の知れた選手で、それに四つ年上の彼女がいるんだ。


相手に告白されて、悩んでいた稲本の背中を押したのは、なにを隠そう、このわたし。


「人生、なにごとも経験だよ」


「じいさんが言いそうな言葉だな」


そう言いながらも、わたしの言葉に励まされたのか、稲本はその彼女と付き合い始めたのだ。

付き合い始めてもう直ぐ一年になるはず。


順調に愛をはぐくんでいるようだ。


でも、恋人同士と言うからには、愛の言葉とかもささやいたりするんだろうけど、このあどけない寝顔の稲本からは丸きり想像できない。



キスとか、それ以上のことだって、普通の恋人同士なのだから考えられるけど、この稲本に関しては全く浮んで来ない。


「キスか……」


キッチリ閉じられた稲本の唇を間近に見て、顔が熱くなってきた。


「稲本……経験あるのかな?」


興味は地球大ほどあるけど、やはり面としては聞けない。


相手が女子なら恥ずかしながらも聞けるけど……


やっぱりこうして気を許していても稲本は男子だ。




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