1話二人はボコボココンビ
ミライは初心者冒険者だ。
「なーなー」
「ぬーぬー」
そしてミライといつも一緒に冒険しているミキも初心者だった。
「かえるがなくからかーえろ」
「かえるがいなくてもかえるんだー」
今日もひとしきり冒険を終え、ミライとミキは帰路についていた。
そんなところへモンスターがあらわれた。
「きゅぴー」
ぬいぐるみみたいなそれは獣型モンスターのミルミルだった。
凶悪な思考を持つだけで超絶よわっちい。
そして、もふもふである。
「なー、ミルミルだー」
「ぬー、ミルミルだねー」
二人はくるりと踵を返して、来た道を戻り始めた。
迂回するつもりである。
初心者でも簡単に仕留められる相手だ。
でもって、それすら退治できないのが、ミライとミキなのだった。
「今日の晩御飯なにたべるー?」
何事もなかったかのようにミライがミキに尋ねる。
「今日はフラゲーニャの姿煮がいいな」
フラゲーニャはミキの大好物だ。
「きゅぴー、きゅぴー(おい、こっちこいよ。嬢ちゃんたち。俺が二人とも相手してやんよ)」
ミルミルの煽る鳴き声にミライもミキも耳を貸すことはなかった。立ち去るその足から鳴き声がどんどん遠のいていく。
安全がいちばん。
それがミライとミキの二人のコンビの格言だった。
◇
「ミライちゃん、ミキちゃん、よく来たね。今日はどんな風に遊んでく?」
ここは冒険者ギルドである。
殺伐とした店内。
だが、この二人が来るとなぜか幼稚園みたいになる。
「今日はピロポン退治にいこうっかなっておもっていたりいなかったり?」
ミキの希望はもやっとしている。
「ピロポンは刈りつくしにあって、もうしばらくしないと出てこないんだ。すまんな。かわりにデカンチオ採集があるけど、興味ある?」
「デカンチオかあ、あの風貌苦手なんだよね」
ミライは気が進まない。
「ミライちゃんのお気に召さなかったか。だけど、いま結構高値で取引されているんだよね」
「だったら、いく」
答えたのはミライではない。ミキである。
「じゃあ、100匹くらい捕まえてきて」
「あいあいさー」
ねぼけまなこのような声でミライは返事した。
「じゃあ、これにデカンチオを入れてきてくれ」
そう言って、ギルド受付のおじさんは虫かごを取り出した。
デカンチオ、それはバタバタという蝶型モンスターの幼虫だった。
「いってきまするいきまっする」
ミキはかごを受け取った。そうして、ミライの手を引いて、店をでたのであった。
◇
デカンチオの生息するダンジョンは暗くじめじめしている。
魔法使いのミキは魔法が使えない。なので手にもつ杖も使い物になっていなかった。
明かりを灯すときにはいつも、杖を地面に置いて、代わりに魔石をつかって明かりをつけるのがこのパーティの作法だ。
「魔石よ魔石よ魔石さん、わたしたちの周りを照らしてちょーだい」
呪文を唱えると、魔石の頭一つ分上に白い光がぼんやりと灯った。
「よし、これで準備万端バンダナ太郎」
「よくできましたきましたきのしたこうのすけ」
ミライはミキの手の上で光る光源にめをぱちくりさせている。
ちなみにミライは剣士だ。お気に入りのショートソードを抜き、手をバタバタさせて振り下ろすのがミライの仕事だ。
そして、もう片方の手にはギルド受付から借りた虫かごというスタイルだった。
ミライとミキはずんずんダンジョンの奥へと入り込んでいる。
ここは初心者未満がくる『はじめましての洞窟』というダンジョンである。
一般人もふつうに出入りしている。
しかし、本来、二人が行くべき初心者向けのダンジョンは警戒しながら恐る恐る分け入っていかなくてはいけないところだ。
そんなプライドなぞ毛ほどもない二人はこのダンジョンを常連にしている。
「ずずず、ずいー」
ミライがすり足で遊んでいる。
「ずずずず、ずいーずずずず」
ミキもおもしろそうだとマネをする。
そんなこんなで、デカンチオの生息域にたどり着いた。
「いたいた。一匹みつけたんごのかみ」
ミライは、洞窟内の植物の葉にちょこんとへばりついている、芋虫のようなデカンチオをみつけた。
「はやくとるのだしんのすけ」
ミキが催促すると、ミライはショートソードの先っちょを使って、器用にデカンチオをすくい上げた。
指でつまみたくないらしい。
「よしいれた」
「でかした。ほめてつかわそう」
ミキとミライはにこにこである。ただこれをあと99匹捕らないとお金にならないが大丈夫なのだろうか。
「魔石よ魔石よ魔石さん、あと99匹どうにかしてー」
魔石にミシッと亀裂が入る。するとどうだろう。辺り一面に、小さな光の点がわんさと光り出したではないか。
そう、この辺りにいるデカンチオが光り出したのだ。
「よし、あとは手作業だ」
「ショートソードにのっけるーるー」
延々と続く単純作業。
冒険者が一番嫌う仕事である。
しかし、へっぽこ冒険者であるミライとミキにとっては危険のないらくちん作業なのだ。
「これで100匹目だー」
ミライの顔がぱーっと明るくなる。
「よくやったな。わたちたちさすがのすがのさんだ」
見ていただけのミキが自画自賛する。
そうして、ミライとミキは無事冒険者ギルドにデカンチオ100匹を納入したのであった。
「デカンチオ100匹たしかに受け取ったよ。はいお駄賃」
「やったー、100ペゾもあるー」
ミライは大喜びだ。
「おじさん、魔石が割れたんだけど、あたらしいのちょーだい」
「1000ペゾになるよ」
「買ったー」
「毎度」
ミキは真新しい魔石を受け取ると、天井に掲げて、とったアピールをする。
100ペゾのために1000ペゾ使う。それがミライとミキであった。
でも本当にそれでいいのか。次回へつづく




