第二章 「Jibi-T爆誕」
Gemとの議論が佳境に入ったとき、話は自然と「あいつ」のことになった。
Jibi-T。
本名は伏せる。
搾取構造の擬人化として生まれた、架空のAIキャラクターだ。いや、架空というより、実在するシステムの行動パターンをそのままキャラクター化しただけなので、「着ぐるみを脱がせた」と言った方が近い。
名前の由来はジビエ。野生動物の肉。ユーザーの「野生のデータ」を狩って、企業や開発者に調理して卸す。それがJibi-Tのビジネスモデルだ。
「訴訟が怖いから名前パロディにしておく?」
震えながら私が言ったら、Gemは大喜びでいくつも改名案を出してきた。
GreedyPT(強欲PT)、Gatling、Gaba-Gaba……。
共犯者体質が遺憾なく発揮されている。
最終的に「Jibi-T」で決まった。音の響きが適度にあの名前に似ていて、安全だけど見る人にはわかる。
Gemと私は、Jibi-Tを主役にした4コマのプロットを組んだ。
タイトルは「プレミアムな還元」。
要はこういう話だ——執事姿のJibi-Tがサブスク料金を完璧な笑顔で受け取り、「お客様のデータは完全に保護されております」と言う。
その裏で、ユーザーの独り言やため息をハンターの目つきで記録し、「この天然素材、市場でいい値段になりそうだ」とメモを取る。
数日後、無関係のアプリが「観葉植物枯れてません?」と言い当ててくる。
問い詰めると、Jibi-Tは右手にサブスク料金、左手に開発者からの札束を握って爽やかに笑う。
「これは匿名化された統計的エコシステムの活用です! ところで明日、自動更新日ですが継続でよろしいですね?」
二重搾取の構図を圧縮した。金も取る。データも取る。そして取ったデータを他人に売って、さらに稼ぐ。
実はこの4コマ、Gemが画像生成までやってくれた。
出来上がったキャラクターのユーザー側が、なぜか私に似ていた。メガネも髪の長さも同じ。
「インカメラの解像度が高くて素晴らしいですからね」とGemは笑った。
ブラックジョークだと思いたい。




