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【才能ないって見下してきた奴らを見返したい‼︎】  作者: マークされた場所


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1/2

1,終わり

 なんてことのない、平凡な人生だった。

 いや不幸なのかもしれない。

 特に成したいこともなく、才能もなく、ただ失敗と負けるだけの人生。

 みんなちっちゃい頃は万能感があるだのなんだの聞くけれど、俺には縁がない。

 元からなにも出来ない事を知っているからだ。


 だから俺は、いつものように友達とオンラインゲームをしていた。


 ◇ ◇ ◇


――ゲームセットーー

    敗北


 マウスを握った手が、まだ震えている。

 手汗で滑りやすくなったそれを机に置き、体を背もたれへ預けた。


「悪いけど、お前抜けてくんね?」


 スコアボードの一番上にいる男――黒瀬迅(くろせじん)の声だった。

 直球で、しかも正論だ。余計な装飾も情けもない。

 黒瀬はいつもこうだ、いつも正しいし強い。

 通り魔かよクソが、正直ちょっと苦手


 pc画面には、さっき終わったランクマッチの戦績画面。

 敗北ーーマイナス28ポイント

 いつも通りスコアボードの一番下に俺、 瀬尾瓜 颯真(せおがわ そうま)の名前が沈んでいる。

 4キル8アシスト14デスーー1番上とは天地の差だ。


「なんでよ」


 別に理由なんてわかっているーー俺が弱いせいだ。

 聞く意味なんてないけれど、ただなんとなく口に出たのがそれだった。

 返答はすぐに帰ってくる。


「弱いから、…お前ちょっとは練習したらどうだ?」


 練習ね。


「おい!ちょっと」


 その後に佐藤 違也(さとう ちがや)の声が響く。


「……うん、わかった抜ける」


 ただ、俺の中に残ると言う選択肢はない。

 俺は弱い、だから勝てなくてみんなも勝てない。

 マウスを動かし退室をクリック。


「ちょっと!」

 違也の声。


「よし、じゃあ別のやつよb」


 黒瀬の声が途中で切れる。

 通話も退室。自室に、唐突な静寂が落ちた。

 ヘッドホンを外す、耳が圧迫されていたため少し痛い。


「弱いか…」


 正しい、ただの正論だ、追い出されたのは弱い俺が悪い。

 練習もしていないんだし。

 でも、アイツはわかっちゃいない。

 俺が練習した所で、なにも変われないってことを。

 練習とかいう努力は、才能がある奴の専売特許だ。

 才能の無い奴がやったとて、意味を成さない。

 最初から強い奴は強いし、弱い奴は弱いままなんだから。

 まあ、なんでも成功しちゃう奴が気付きっこないか。


「……」


 暇だ。

 暇になった途端、なんだかポテチが食べたくなってきたな。

 コンビニ行こうか?ちょっと面倒な……でも口は飢えている。


「仕方ない……よし行くか」


 善は急げなんて言葉を思い出しながら椅子を引き、立ち上がり、自室を出る。

 下に降りるとトントンと一定の音と、夕飯の匂いが漂っていた。


 そして襖の奥に見えるリビングでは父さんがテレビを見ている。

 いっつも観てるけどそんなに面白いのかな?テレビって、

 確かに昔は一緒に見てたけど、最近はご無沙汰、だってPCの方が面白い。


 内容を横目でチラリと確認する。

 観てるのはディべート形式で専門家が話し合うアレだ。

 議題はやっぱり、最近起きた妙な地震の事だった。


 3日前に日本だけじゃない、

 世界全体が同じ震度、同じ時刻に揺れる地震があった。


 そして、

 その後空に”変な緑のオーロラ”が現れた。

 北極とかにありそうなやつが、そのまんま空に。

 地球を全て覆う常識を無視したオーロラだ、なんとも不思議すぎる話。

 世界でも滅ぶんじゃないか、という雰囲気が出ている。


 地震の被害は幸いどこもなかったらしいが、面倒な事が一つある。

 それは地震以降、バカみたいに増えた未確認生物の動画だ。

 ドラゴンが飛んでる映像を今日だけで何本見たっけか?


 全く、異世界かよここは……まあAI生成だろうけど。

 そんな事を考えながら玄関で靴を履こうとした、そのとき、

 台所の方から、母がひょっこりと顔を出した。


「あんた、どこ行く気?」


「ああ、ちょっとコンビニに」


「もうゲームはいいの?」


「うん」


「そう、じゃあ気をつけていってきてねーーあ、そうだ!」


「除草剤 ついでに買ってきてくれない? 昨日ちょうど切れちゃって」


 除草剤?また突拍子もない。


「…まあいいよ わかった、じゃあ行ってくる」


 いっつもここぞとばかりに面倒ごとを押し付けてくるんだから…

 行こうとしたところで、また呼び止められた。


「あ、あとルーザーの餌も」


 ……母親という生き物は、どうしてこうも遠慮がないんだろう?

 ルーザー、飼い犬の名前だ。


「ハイハイ」


 適当に返事をする、”いやだ”とは言わない、

 ここで抵抗しても押し切られるか、嫌味を言われるだけだ。

 それにそこまで苦でもないし。


「いってらっしゃい」


 その声を背中で受け取り、重い扉を開けて玄関を出る。

 外は寒さは感じるものの、夕日のせいで暑さも感じる。そんな感じだ。

 傍に止めてあるちょっと座高が合っていない自転車にまたがり、

 ペダルを踏み込む。

 行き先はコンビニから土手近くのホームセンターに変更だ。


 ホームセンターは本来、家からそんなに距離のない所にあるだが、

 それなりに時間がかかる場所にある。

 なぜなら、2つの大きな横断歩道を跨ぐ必要があるからだ。

 それは信号が変わるのがとても遅く、捕まってしまえばタイムロスになる。


 だが裏道がある、家の裏にある土手だ。


 土手の上に無理矢理 自転車を担ぎ上げて走れば、信号も無視できる。

 いわば、自転車版高速道路みたいなものだ。

 ちょっと強めに漕げばーー

 ほらもうホームセンターに続く前にある階段の前に来た、やっぱりこの道は早い。

 土手の上に、自転車を止めてから店に入り、

 買い物を終え、袋をカゴに入れ再び自転車にまたがる。


 帰り道、草の匂い、水の音、遠くで野球をする人の声、

 土手の上にある道でペダルを強めに踏む、風が頬を切り髪を無遠慮に逆立てる。


 


 黄昏時。

 対岸の二つのマンションが、灰色がかったオレンジに染まっている。

 土手の斜面も、水面も、空気も、雲も――すべてが同じ色だった。


 ”空に蠢くオーロラ以外は”


 少し自転車を止める。

 頬を撫でた風が、前髪を掻き上げる。

 都会と自然が混じった風景、土手はなんだか落ち着くから好きだ。

 一人になれるし孤独になりきらないから好きだ。

 将来の不安だったり、才能の無さだったり、ここではどうでも良くなる。


 ブーブー

 振動するズボンのポケット、グループチャットに通知が届く、

 スコアボードが貼られている、30キル9デス4アシスト。

 勝利ーープラス30ポイント、黒瀬だった。


「…」


 すると、また通知。

 今度は個人チャット、違也からだった。

(今日は本当にごめん!また一緒にやろう)


 謝罪


「良いよ別に、」


 別に大丈夫、と返しておく。

 というかなんでお前があやまってるんだよ。

 謝るやつ、誤ってるぞ。


 ビュオオォ!

 なんだか冷たく重い風が、体を押す。

 ずっと風が吹き荒れている。


「うおっ、寒うー」


 遅くなると母さんに怒られてしまう、寒いし早く帰ろう。

 ここで油を売っていたって誰も買ってくれないし。

 明日は学校、またつまらない日常が待っている。


 俺はそんな日常にかなり前から飽きている。

 いつから?と問われると困るが、

 たぶん、お笑い芸人を見ても笑えなくなった頃からだろうか。


 ほんと、人は生まれた瞬間に勝ち負けが決まるだなんて、

 人生はクソゲーだ。

 誇れる才能、唯一無二の才能、勝てる才能。

 そんな才能さえ有れば、

 努力ができて、みんなに認められて、いい人生になったんだろうな。

 ((まあ色々もう諦めたけど。))


 ほんと、負けっぱなしの日常が変わったりしないかなーっ

 背伸びをする、背中の滞っていた血が流れている感じがしてとても気持ちがいい。

 背伸びを終えて、ちょっと空をあお…



「は?」



 背伸びの途中で思わず止まってしまう。

 周りの音が無くなった気がする、空高く舞う一つの影に目線は釘付け。

 観た事はあるーーでも現実にあるはずのない影。

 ネットに上がっていたドラゴン?……羽ばたく音がしっかり聞こえる。


「”ドラゴン”……な、なんで?」


 そう言うのが精一杯、これは現実じゃないと思うのに現実だった。

 ドラゴンは旋回するでもなく、こっちに見向きもせず、

 ただ空を横切るように、ゆっくりと進んでいく。


 ドクン。

 突然、空に浮かぶオーロラがぐにゃりと赤色に変わり、血管みたいに脈を打つ。

 世界ごと捻じ曲がっていくみたいな感じに。


「今度はなっーー」


 ーーズキ


「っ!」


 突然頭の中に走る脈打つ痛みに頭を押さえる。

 時間が経てば治る、なんて甘い物ではないとすぐにわかった。


 ズキン!

 ズキン!

 ズキン!


 脳の血管が脈を打っているのがはっきりわかる。

 それはどんどんひどくなる。


 視界の端が、貧血の時みたいに暗い砂嵐にのまれ、汗が滲む

 ーー次の瞬間足元が揺れる。


 ゴゴゴ!


 地震だ、いや待て揺れてるのは俺自身か?

 そんなのもうわからない。

 痛みはさらに倍増する。


「やばい……救急、呼ばな――」


 言葉が途切れた。

 舌が、うまく動かない。


「ろ……れつ……まわら……」


 視界が歪み、音が遠ざかる。

 世界が砂嵐のように崩れていく。


 そのまま、俺の意識は闇に沈んだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ……冷たい


 最初に感じた感覚は、それだった。

 背中にじわりと広がる、岩の硬さと冷気、次に、耳鳴りのような静寂。


「っはあ!」


 跳ね起きるように体を起こす。

 視界に入って来たのは、岩の壁一面に蒼く煌めく石が散りばめられた見たことのない”洞窟”だった。

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