Track.04 Pappa Parappa
「シエンさん!!」
危機馴染みのある声に、「おうおう。今度は何の騒ぎだ?」と、シエンは店内の掃除の手を止めずに答える。焦り半分、怒り半分といった雰囲気で足を鳴らしながら階段を下りて来た彼は、ダン、と手ごろなテーブルの上に一つの封筒を叩きつけた。そのままじっと睨みつけられたので、シエンは仕方がなしに持っていた掃除用具を適当な場所に立てかけ、中身を確認した。
《取り下げなんて許さない》
《カレッジのライブに出演しろ》
《さもなくば殺す》
「……脅迫状か。お前もようやっとこの街で一人前になったじゃねえか」
「そんな冗談言ってる場合じゃないですよ!!」
まるで感心したかのように言葉を吐き出したシエンに向かって、いつも以上に生きのいいツッコミが飛んでいく。
「カレッジでトイレから戻ってきたら鞄に何か入ってるし、開けてみたらライブに出ないと殺しに行くみたいなこと書いてるし……! ていうか、なんで身バレしてるんだよお……!?」
あたまをくしゃくしゃとかきむしる彼を見て、シエンは「確かにな」とこぼす。
「あんだけ気い張ってたお前がヘマしたんだとしたら、そりゃよっぽどのもんだな。女装して名前も明かさずに働いているお前のことを特定してわざわざ脅迫してくるなんて、お前に相当お熱な奴がいたらしい。なんというか、まあ……残念だったな」
「もう……僕はどうしたら……!?」
いよいよわざとらしく縋り付いてきて、思わず顔をしかめる。が、数秒も経てば、シエンが眉をひそめている別の理由が浮かび上がってきた。
「……こうなっちまったら、しゃあねえ。癪ではあるが、護衛手配はびっくりするぐらい手頃だからな。やらねえわけにもいかねえか」