この環境からの卒業〜生まれによって優遇冷遇される俺〜
同じような姿形で生まれたのに、生まれた環境が違うだけで、扱いが変わる。
わかったような気になってはいたけれど、俺が体験するとは思わなかった。
同じような姿のまま、違う場所に生まれ変わる。
三度目にして、今回の俺は、冷遇されているとわかった。
姿形は、たいして変わらないのに。
「くさい、くさいわ。あーあ、こんなところにいなければ良かったのに。」
「こんなに大きいなんて! 早くいなくなって欲しい。」
女達は、俺の生まれた環境に敏感だ。
一度目は、あんなに褒めてくれたのに。
「なんて、セクシーなの。素敵!」
「たくましさの象徴だわ……。」
うっとりと、撫で付けられのを思い出してしまう。
二度目は、大勢の中のひとりだった。
何十万とひしめき合う中、必死で日々を生き延びていた。
二度目の終わりはあっという間だった。
ほんの少し、体の色が白く変わっただけ。
それだけで、掻きむしられ、追い詰められ。
ぷつん。
そこで、二度目の俺はお終いだった。
ああ。振り返ってる間に。
あの光が俺を照らし出す。
「ふふ。全部、焼き払うから。」
三度目は、地獄の業火に灼かれながら、一瞬で命が刈り取られた。
ふっと意識を向けた。
ここは……四度目、か?
周りに俺の仲間は……いない。
俺ひとりだけの、限られた場所のようだ。
ひっそりとした場所で、ゆっくりと日々を過ごす。
体が白くなることもなく、充分な時を経た頃。
「おじいちゃん! 足の小指に、毛が生えてるよ!」
「抜いていい?」
ああ。今回は、ここまでか。
長く生きた。
他の場所で生まれた仲間の話も、ずいぶん聞いた。
あるものは忌み嫌われ、あるものは優遇され、持て囃される。
ほんの少し、生まれた場所が違うだけで、同じものなのに。
「抜くのは、やめておけ。死ぬまで、ずっと一緒にいるんじゃ。」
小指の先の方まで声が届き、俺は、ほっと息をついた。
翌朝、爪切りの時に間違って切られ、そのまま細くなっていた俺は、するりと抜け落ちた。