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この環境からの卒業〜生まれによって優遇冷遇される俺〜

作者: 黒イ卵

 同じような姿形で生まれたのに、生まれた環境が違うだけで、扱いが変わる。


 わかったような気になってはいたけれど、俺が体験するとは思わなかった。


 ()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()


 三度目にして、今回の俺は、冷遇されているとわかった。

 姿形は、たいして変わらないのに。


 「くさい、くさいわ。あーあ、こんなところにいなければ良かったのに。」

 「こんなに大きいなんて! 早くいなくなって欲しい。」


 女達は、俺の生まれた環境に敏感だ。

 一度目は、あんなに褒めてくれたのに。


 「なんて、セクシーなの。素敵!」

 「たくましさの象徴だわ……。」


 うっとりと、撫で付けられのを思い出してしまう。


 二度目は、大勢の中のひとりだった。

 何十万とひしめき合う中、必死で日々を生き延びていた。


 二度目の終わりはあっという間だった。

 ほんの少し、体の色が白く変わっただけ。

 それだけで、掻きむしられ、追い詰められ。


 ぷつん。


 そこで、二度目の俺はお終いだった。


 ああ。振り返ってる間に。


 あの光が俺を照らし出す。


 「ふふ。全部、焼き払うから。」


 三度目は、地獄の業火に灼かれながら、一瞬で命が刈り取られた。



 ふっと意識を向けた。


 ここは……四度目、か?


 周りに俺の仲間は……いない。

 俺ひとりだけの、限られた場所のようだ。


 ひっそりとした場所で、ゆっくりと日々を過ごす。


 体が白くなることもなく、充分な時を経た頃。


 「おじいちゃん! 足の小指に、毛が生えてるよ!」

 「抜いていい?」


 ああ。今回は、ここまでか。

 長く生きた。

 他の場所で生まれた仲間の話も、ずいぶん聞いた。

 あるものは忌み嫌われ、あるものは優遇され、持て囃される。

 ほんの少し、生まれた場所が違うだけで、同じものなのに。


 「抜くのは、やめておけ。死ぬまで、ずっと一緒にいるんじゃ。」


 小指の先の方まで声が届き、俺は、ほっと息をついた。


 翌朝、爪切りの時に間違って切られ、そのまま細くなっていた俺は、するりと抜け落ちた。

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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 頭ならいいんですけどね。
あらぬトコロの宝ゲのワキ藹々とギャランドゥ〜♡w  お久しぶりて〜す♪
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