源平の菊池氏
私たち家族はダイニングで夕食を楽しんでいる。
私たち家族が夕食を楽しんでいるダイニングの隣にあるリビングでは、鎧兜を身に着けた武者が2人、日本刀を振り回しチャンチャンバラバラと互いに切り合っていた。
武者の1人は平家菊池氏の祖で私の御先祖様。
もう1人の武者は源氏菊池氏の祖で妻の御先祖様。
此の2人の武者は遥か昔源平合戦が起きる十数年前、九州菊池氏の分家筋の家に双子で生まれた。
此の事は未だに九州菊池氏の間で語り継がれている話しらしいのだが、2人は互いに掴み合いながら母親の腹から出てきたという。
ようするに母親の腹の中にいた時から喧嘩してたという事。
当然、生まれた後も2人は何かと張り合い喧嘩する間柄になる。
2人の父親は何方か一方に家督を継がせようとしたら殺し合いが始まるんじゃないだろうか? と、ホトホト困り果てていた。
そんな時に九州の一大勢力である菊池氏を自分たちの陣営の味方にしたいという思惑を抱いた源平の両家から、菊池氏本家に養子縁組をしたいという申込みがくる。
本家は2人の息子の処遇に頭を悩ませていた分家に此の話しを持って行く。
そして1人は関東源氏の家にもう1人は西国の平家の家に養子に出される。
2人の父親は関東と西国で遠く離れた地に別れたから金輪際会うことあるまいと安堵した。
にもかかわらず数年後に源平合戦が始まり、2人は戦場で顔を合せる事になる。
その結果2人は歴史に残る幾多の戦いの裏側で、一族郎党を率いて戦という名の喧嘩をしていた。
源平の戦いの決着がついたあと源氏菊池氏は領地を増やし、平家菊池氏は九州菊池氏の反発を恐れた鎌倉幕府に許され、鎌倉幕府の臣下に収まる。
その後2人は関東と西国で同じ日に亡くなった。
亡くなってそのままあの世に旅立てば良いのに2人は、自分たちが亡くなった直後に生まれた両家の嫡男の背後霊に収まる。
否、収まったのでは無く、嫡男の背後霊として此の世に居座った。
それから約800年、2人は両家の本家本流の跡継ぎの背後霊として此の世に居座り続ける。
結婚したあと妻と2人の背後霊を叩き出した寝屋で話しあい、背後霊の所為で源平の菊池氏の本家本流は衰退したという結論に達した。
今現在、両家とも分家筋の方が栄えていて、私と妻は令和の時代には希少な仲人小母さんに互いを紹介され結婚しなければ、私たちの代で家が無くなると思っていたからだ。
食事を終え私たち家族はリビングのテレビの前のソファーに座る。
2人の背後霊はテレビと私たちの間でチャンチャンバラバラを続けていた。
その2人の背後霊たちに、私たちの可愛い双子の娘たち揚羽と竜胆が声を荒げる。
「「お爺ちゃんたち、邪魔!」」
双子の2人の可愛い娘たちは爺どもと違い仲が良い。
2人の爺は娘たちに怒鳴られるとイソイソと娘たちの背後に座り、妻が用意したお茶を飲みながらテレビに見入るのだった。
コロン様作製「菊池祭り」参加賞イラストです。