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11.キング

 暖かな日差しが窓から差し込む。

 窓の外では小さな鳥がさえずって、地面に落ちたきのみを啄んでいる。

 パルケアの街のではよく見られる何気ない朝の風景だ。


 そんな平和な日常を壊すかのように、鐘の音がけたたましく鳴り響く。


「うおっ!なんだなんだ?」


 まだ起床する時間ではないというのに、鐘の音に驚いたレオンはベッドから飛び起きる。

 隣のベッドで寝ていたノーラは、近くに置いてあった剣を手に窓から外の様子を窺っていた。


「ノーラ、外はどうなってる?」


「…いや…」


 レオンの問いに、ノーラは首を振って答える。


 この鐘は街に異常が起こった時に鳴らされるのだが、どうやらこの近くで何かあったわけじゃないらしい。

 一体何があったのかとレオンが戸惑っていると、部屋の扉が開く音がした。


「…何か…わかる?」


 アリアも鐘の音に起こされたようで、彼女はレオン達の様子を見に来たところだった。

 彼女はレオンとノーラの無事を確認すると、なぜ鐘が鳴っているのかをレオンに聞いてくる。

 どうやらアリアも何が起こっているのかわからないようだ。


「いや、俺らもわからねえ。もしかして、街の外で何かあったのか?」


 街の中に異変がないのなら、街の外で何かあったのかもしれない。

 レオンはそう推測した。


 しばらくして街中に鳴り響く鐘の音が止まり、窓の外で誰かが大声で叫んでいるのが聞こえてくる。


「…ってください!」


 三人の泊まる宿に声の主が近づいてきたのか、今度は何を言っているのかハッキリと聞き取ることができた。


「パルケアの近くで魔物の群れを発見しました!冒険者の方は至急ギルドまで来てください!」


 声の主は冒険者ギルドの職員だった。

 ギルド職員は拡声器のようなマジックアイテムを通して大声でそう伝えると、次の場所へと移動していく。


「魔物の群れ…?よくわからねえけど、とりあえずギルドに行ってみるか。」


 どうやら冒険者に招集がかかったみたいなので、レオン達は冒険者ギルドへと向かうことにした。




 パルケアの外へとつながる門の近くにある冒険者ギルド。

 普段ならばこの時間はまだ人気が少ないのだが、緊急招集をかけられたため冒険者達でごった返していた。

 眠そうにあくびをする者や、不安そうにあたりをキョロキョロと見回している者、慌ただしく動き続けるギルド職員達。

 そんなたくさんの人の中、レオンはよく見知った顔を見つける。


「よお、ハンスにミハイルにクレア!お前ら、何があったのか知ってるか?」


 ハンス、クレア、ミハイルの三人組だ。

 自分達よりも先にギルドにいた彼らなら何か詳しい情報を持っているかもしれないと、レオンはなぜ冒険者がギルドに集められたのかを聞いてみることにした。


「ああ。俺も詳しくは知らないんだが、この街の南で魔物の群れが発見されたらしい。数百体のオークとゴブリンがこの街を目指して移動してるとか。」


 ハンスはギルド職員の会話から聞こえてきた情報をレオンに伝える。


「マジか…オークとゴブリン、ってことはキングがいるのか?…厄介だな。」


 その情報からレオンは、オークキングないしはゴブリンキングがその群れを統率していると推測した。


 知能がほとんどない魔物として知られているゴブリンやオーク。

 この二体の魔物は通常、知能が低すぎるがゆえに最大でも十数体程度の群れしか維持できないとされている。

 だがそんなオークやゴブリンの中にも例外はいる。

 それが突然変異で生まれたキングの存在だ。


 魔物の中には通常の個体と違って、変異種という特別なスキルや力を持って生まれてくる個体がいる。

 レオン達がダンジョンで出会ったゴブリンナイトなんかもその変異種の一つだ。


 キングの称号を持つゴブリンキングやオークキングは、人間に匹敵する知能と高い統率力を持ち、何百何千という巨大な群れを維持できる。

 そしてその中にはナイトやアーチャーやメイジやヒーラーなど、強力な変異種の存在が多数いることも少なくない。

 キング自体の戦闘能力はそれほど高くなくとも、巨大な群れを維持する能力があるというただ一点において非常に危険な存在だった。


「そうだね…ゴブリンとオークという事は恐らくオークがゴブリンを従えてる形になるから、オークキングの方は確定だろうね。」


 オークの方がゴブリンよりも強く、自然界ではオークがゴブリンに従うことはめったにない。

 なのでミハイルの言う通り、ゴブリンがオークの群れに吸収される形で存在しており、この群れを統率しているのはオークキングなのだろう。


 そんな話をしていたら、ギルドの奥から中年の男が出てきた。

 筋骨隆々で野性味あふれるスキンヘッドの彼は、この冒険者ギルドのギルド長で、名をバルドスという。

 冒険者達の前にバルドスが立つと、ざわついていたギルド内が一瞬にして静まり返る。


「お前達!こんな時間なのによく集まってくれた!もう知ってる奴もいるだろうが、パルケアの南にある森でオークとゴブリンの群れが見つかった。先に出ていった調査隊の報告によると、数はゴブリンが三百にオークが二百で合わせて五百体。オークキングと多数の変異種の存在も確認された。そいつらが今、この街に向かって進んできている!」


 バルドスはギルド中に聞こえるような大声を出す。


「そこで、この街の騎士団と冒険者が合同で魔物を討伐するよう領主からの要請がきた。緊急依頼だ、お前ら!この街に向かって来るゴブリンとオーク共を根絶やしにするぞ!」


 そんなバルドスの血気盛んな演説も、冒険者達の反応はあまりよろしくない。


「マジか…五百体なんて…」

「変異種もいるんだろ…?」

「しかもステファンの奴は一昨日出ていっちまったし…」


 いつもは威勢がいい冒険者達だが、この日はそんな弱気な発言が目立つ。

 それだけこの魔物の群れが危険だということを物語っていた。


「…緊急依頼とはいえ、ギルド側が参加を強制することはできねえ。が、この依頼を受けた奴には特別報酬が出る!討伐に参加するだけで一人五万ギロム。さらに倒した魔物の数によって追加で報酬も出す!それと、ランクの査定においても優遇することを約束する!」


 バルドスから提示された報酬にギルド内がどよめく。

 五万ギロムという大金をダンジョンで稼ぐためには、実力のある冒険者がパーティーを組んで数日間探索を続ける必要がある。

 それを討伐に参加するだけで手に入れられるのだ。

 かなりの危険が伴うとはいえ、破格の報酬ともいえる。


 すると、大剣を背負った一人の男がバルドスの前に出る。


「バルドス!…今の話は本当か?」


「ああ!本当だ!」


 バルドスからの返事を聞いた男は、芝居がかったような動きで大剣を掲げると、大声で宣言する。


「聞いたかお前ら!一人五万ギロムだ!この街を守るついでにそんな大金が手に入るなんて最高じゃねえか!俺はこの討伐隊に参加するぞ!」


 それを皮切りに、続々と依頼の受諾を表明する者が現れる。


「よし!俺らも参加するぞ!」


「そうね。この街にいても討伐隊がやられたら危険なのには変わりないし、同じ危険なら前に出て街を守る方がマシだわ。」


「それに、一人五万ギロムなんて大金を稼げるチャンスはめったにないし。」


 どうやらハンスのパーティーは魔物の討伐に参加する意思を固めたようだ。


「…どうする?」


 レオンにそう問いかけたのはアリアだった。


「そうだな…」


 レオンはアリアとノーラの顔を見る。


 彼女達ならば、ゴブリンやオークの変異種にも遅れを取ることはない。

 だが今回は数が数だけに、万が一ということもありえる。


 討伐に参加するかどうかレオンが悩んでいると、ノーラが口を開く。


「…行こう…」


 彼女は一言だけそう言うと、真っ直ぐにレオンの顔を見る。


「行こうって、討伐にってことか?」


 ノーラが頷く。

 それを見たレオンは、アリアの方へと視線を移した。


「アリア、お前はどうだ?」


「…任せる。」


 アリアはどうやらレオンの判断に任せる様子。


「そうか。なら俺達も討伐に参加するぞ!」


 少し悩んだ末に、レオンも討伐への参加を決断した。


「それじゃあ討伐隊に参加する奴らはここに残れ!参加しねえ奴らは衛兵のとこに行って、住民の避難誘導の手伝いだ!」


 バルドスが大声を出すと、今回の討伐には参加しない冒険者達がギルドから出ていった。

 ギルド内に残った冒険者の数はざっと見た感じ四十人くらいだ。


「さて、それじゃあ時間もねえから早速今回の作戦について説明しておく!」


 討伐に参加する冒険者達は、バルドスから作戦を伝えられた。


 作戦といっても急ごしらえなのでそこまで複雑なものではない。

 パルケアとその南の森の間にある平原で魔物の群れを迎え撃つことと、ランクの高い冒険者や騎士を変異種の多い場所へ優先的に回し、ランクの低い冒険者は通常の個体を相手にするよう指示を出しただけだ。


「ただし今回は魔物の数が多くて、時間が経ったら乱戦になるかもしれねえ。その時は各々の判断に任せる!…それじゃあ各自準備を整えて、二時間後に街の南門に集合だ!」


 バルドスから今回の討伐についての説明が終わると、冒険者達はギルドから出ていった。


「それじゃあ俺らも行くぞ。」


 レオン達も冒険者ギルドを出て準備を整えてから、その二時間後に街の南門へと向かった。

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