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1.ゴブリンと死闘を繰り広げる男

『拝啓、父様、母様。

 長い間お会いしていませんが、いかがお過ごしでしょうか?

 

 月日が経つのは早いもので、自分が家を飛び出しお二人の下を離れてから数年が経ちました。

 あの頃は世間知らずのガキだった私も今では冒険者となり、順風満帆とはいかないもののなんとか生活できるようになりました。


 そんな私が今、何をしているのかというと……』

 

〜〜〜


 とあるダンジョンにて。


「オラァァァァぁぁぁぁ!」


 黒いローブを着た男が、その辺に落ちていた石を全力で投げる。


「グギャ!?」


 石は緑の体に尖った耳を持つ魔物――ゴブリンの額に当たり、地面に落ちた。

 切れた額からは肌の色よりも濃い緑の血が流れ出ている。


「グギャアアアアアア!」


 痛みで怒りが頂点に達したのか、ゴブリンは石を投げた男を睨みつけながら鳴き叫ぶ。

 聞いているだけで不快感を催すような声だ。


「クソッ!せめて気絶くらいしろよ!」


 男は元気そうなゴブリンを見て悪態をつく。

 

 そんなことをしている間に、ゴブリンは粗末なこん棒を持って男へ向かって走り出した。


「ギャッ!」


 そうして距離を詰めて男の目の前までやってくると、重そうに両手で振り上げたこん棒を、力いっぱいに振り回す。


「うわっと!危ねぇ!」

 

 フォームもバラバラで大して力の乗っていないでたらめな一撃を、男は大きく後ろに跳んで躱した。


「ギャ……」

 

 ゴブリンの握力が弱かったのか、振り抜かれたこん棒が手からすっぽ抜けて明後日の方向へと飛んでいく。


「くそう!かくなる上は……」


 頬に冷や汗を垂らしながら男はそう呟くと、自分の懐に手を入れる。

 ローブの内ポケットに隠し持っていた球状の何かを手に取って、軽く振りかぶった。


「オラァ!」


 それを地面に向かって投げつける。

 

 球が地面にぶつかると、パカッと2つに割れて中から白い煙が出てきた。

 要は煙玉だ。


「グギャ……?」

 

 球の中に封じ込められていた煙が一気に広がり、周囲に拡散していく。


「よし……!」


 煙によって自分の姿を覆い隠すことに成功した男は、突如としてその場から駆け出した。

 途中で地面に置いてあった鞄を拾い上げ、そのまま迷うことなく走り続ける。


「ワハハハハハハ!三十六計逃げるに如かずってなぁ!すまんねぇ、ゴブ太郎君!君のように弱くて頭も悪い魔物が、この人間様を倒そうなんざ100年早いんだよ!ワハハハハハハブッ……!」


 男は視界が悪くて見えなかった壁へ盛大にぶつかり、無様な声を上げた。

 

 フードが脱げ、黒い髪に黒い目、そしてどこにでもいそうな平凡な顔が露わになる。

 顔面を強打したせいか、鼻からは血が出ていた。


「クソっ!なんでこんなとこに壁があるんだよ!もっと右の方だっただろ!?」


 文句を言いながら手探りで壁を伝い、いそいそとこの場を去っていく男。


 煙玉まで使って最弱の魔物と名高いゴブリンから逃げ出し、勝ち誇ったかのような捨て台詞を吐き、挙句の果てには無機物にキレ倒すこの男の姿は、誰かが見ていればさぞ滑稽に映ったことだろう。


 こうしてローブを着た男――レオンは人生最大のピンチを切り抜けることに成功した。


「グギャ……?」


 煙が晴れると、そこには呆然とした様子で棒立ちしているゴブリンの姿があった。

この小説を読んでいただきありがとうございます!


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