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第六章 8

「え・・・っ? ええっ?!」

 こうして少女の着せ替えショーが始まったのであった。




 飲食店のテーブルに腰掛けた二人は、昼食を食べ終わって、後は限定デザートを待つだけとなっていた。

「正直言って眼福だった。お前は本当に何でも似合うな」

「わたしは少し疲れたのだけど・・・・貴方が喜んでくれたのならよかったわ」

 あれから少ないとはいえ、何着かの着替えをして二人に見てもらっていた。結論から言えば、結局は買うことはなかった。女店員がまだ改良の余地があるからと言って、売ってくれなかったのだ。服に対するその情熱は賞賛に値したが、少女としては男が一番じろじろと見てきた服が欲しかった。

「そういえば、いやらしい視線で見ていた服があったけど・・・・・ああいうのが好きなの?」

「仕方ないだろ。脚出したり、胸元露出したりしたら、そこに視線が行くのが男だ」

「・・・えっち」

「・・・・・」

 何も言えずに黙り込む。そもそも、エロいのは男の本能だから仕方がなかった。とはいえ、そこを理性で抑えるのが人間でもあるわけだ。そこだけははき違えないようにしていた。

「・・・嬉しそうにいうお前もどうかと思うぞ?」

「そう? ふふっ!」

 誤魔化すわけでもなく、素直な笑顔で男の言葉に返事をしていた。恥ずかしいけど、男にそういう目で見られて嬉しいと。

「・・・お前って、本当に男にとって都合のいい女だよな」

「それは貴方にとっていいこと?」

「良すぎて困る。もうお前以外の女とはやっていけない」

「あら、だったらずっとわたしの虜なの?」

「当たり前だろ?」

「よかった・・・浮気とかされなさそうで・・・・・」

「お前以上の女なんていないから、浮気をする必要もない」

「・・・貴方」

 男の横に席を移し、手を握り、指を絡め合う。握り返してくる感覚に笑みがこぼれた。ここが部屋だったら、また口づけをしていたところだった。

「・・・むしろ、俺の方が浮気されるんじゃないかと不安だ。なにせ、お前は全ての世界の中で一番かわいいからな」

「・・・前はこの世って言っていなかったかしら?」

「あれから世界が広がった。で、その中でもやっぱり、お前が一番かわいいと結論づけた」

「もう・・・ばかなんだから・・・・でも、そんなこと言ったら貴方だって――――」

 こんなバカップル丸出しな会話をしていると、限定デザートがやってきた。店員などは二人のいちゃつき具合を見て、どこか営業スマイルが引きつっているような気がした。

「お待たせしました。カップル限定デザートの『いちゃ♡(ラブ)おやCHU☆タイム!』になります」

 店員としての矜持か、こんな頭の悪い名前を恥ずかしがることなく、自然に言い切る。が、その顔はやはりどこか引きつっているかのように見えてしまう。

 机の上に置かれたその姿を見て、本当にあったのかと思わせる。グラスのようなパフェの容器にジュースを注ぎ、その上にアイスを浮かべ、果物は容器の淵へと差し込んでいる物体。ストローはもちろん二本入っているのだが、それは曲げられてハート型へと変形させられていた。しかもそれは、同時に飲もうとしたら身を寄せ合ってしか飲むことができないようになっており、仲良く引っ付いてチューチューする必要があった。

 もちろん、アイスを食べるさじは一本。互いに食べさせあうもよし、一人で食べるもよしだった。周囲の視線が集まる中、少女は気にせずにさじでアイスを取る。そして、男へと向け・・・

「あむっ。んっ・・・甘くておいしい・・・・」

 ることもなく、自らが食べてしまった。周囲の目は期待違いにがっかりとしてしまう。

「お前、わざと・・・・」

「ふふっ、はい。あーんして?」

 甘い声音にとろけた笑顔で、今度こそアイスをとったさじが男に向けられる。それに男だけでなく周囲も理解した。今、男がこれを食べた瞬間、間接キスになると。

「どうしたの?」

「・・・いや、なんでもない」

 今さら何も気にする必要などなかった。せいぜい、周りへとあてつけていけばいいと思って、差し出されたさじを口にする。

「おいしい?」

「んっ・・・そうだな。じゃあ、次は俺からな。ほれ」

 そういって交互に食べさせていく。そうする度に二人は間接キスを交わしていく。

 アイスを半分ほど食べ終えると、少女が男へと尋ねる。

「ねえ・・・わたしのキスと、どっちがおいしい・・・・?」

「・・・お前に決まってるだろ?」

 この言葉が聞こえた人達が、この会話に顔を赤くする。そして、男の行動に店内の全ての人間が恥ずかしい思いをする。

「んっ!」

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