第六章 7
「『昨日から彼とデートなの』ってやつらは、仕事を舐めてるわよね! 少しはバイト君の崇高さを見習うべきだと思うわ。この期間に限って」
「・・・なんだか来てはいけなかったのかしら?」
「あ、いえ・・・別に彼女さんだけならよかったんですが・・・・・・って」
少女へと視線を転じて気づく。前と服が違うことに。
「随分と人を選ぶ服を着こなしてますね・・・・」
「そうなの? 貴女はこういったのは着ないの?」
「自分にはどう考えても合わないんですよ。そういったかわいい系の服は・・・・ところで、彼女さん・・・・ちょっとこっち来てください。あ、彼氏さんは聞いちゃだめですよ?」
「何となく察したがな・・・・」
「鋭い男は嫌われますよ?」
「こいつ以外の女にはどう思われても結構だ」
「うわ・・・うざっ!」
「褒め言葉として受け取っておく」
「・・・あまり彼を貶すと怒るわよ?」
「怒るな怒るな。お約束ってやつだ。別に悪気はない」
少女の頭をぽんぽんとたたき、自然と頭を撫でていく。
嬉しげに眼を細めて男を見上げると、そのままいつものように二人の・・・・
「・・・うわぁ・・・・あんたら、いつもこうやってるんだろ? 自然の動作で普通キスまで行く?」
「「あっ」」
唇ではなく、声が重なった。つい、気が緩んでしまい、人様の目の前でまたそういうシーンをするところだった。
「はいはいはい。よ~~っく、分かりましたよ。あんたらが仲良し夫婦だってね。ちゃっかり指輪までつけちゃってさ」
「そう?」
指摘をうけて少女が微笑む。それがどれほど嬉しいのか嫌でも感じ取れてしまう。
どうやらこの二人は上手くいっているようだった。
「それより、話し戻して・・・ちょっとこっち来てください」
「・・・なに?」
二人がこそこそと話し始める。男はそれをどこか安心した顔で見ていた。少女が自分以外の人間と、こういう会話をしているのを初めて見たからだ。これなら、今後も上手く人とやっていけるのではないかと思えた。
「・・・あの服使いました?」
「っ!?」
顔を赤くして返事をする。それを見て女は使ったことを確信した。
「どうでした? 彼の反応は」
「えっと・・・その、すごかったわ・・・・」
「ほうほう、つまり彼氏さんに見事と・・・・」
「・・・・」
黙ったまま頷いて返事をする。
「だったら何より。大切にされるのもいいですが、手を出されないのも、それはそれで女として傷つきますからね~。わたしの黒歴史が役に立ってよかったですよ」
「・・・そうね、あの時が一番すごかったわ」
「あの時? っていうことは・・・・別にいらなかったですかね・・・・・」
「そんなことないわよ? 彼が喜んでくれたし、それに凄く・・・・あうっ・・・・・」
「・・・ごちそう様です」
「? 何を食べたの?」
「お二方の思い出を少々ね」
「?」
「まあ、上手くいっているのなら何よりです。それで? そもそも何しに来たんですか? まさか、本当に見せつけに来ただけじゃないでしょうね?」
「えっと・・・ういんどうしょっぴんぐ? で、いい服が決まらないから、ここならと思って・・・」
「なんで外国の貴女が、横文字をそんな風にいいますかね? とはいえ、前回に試したのでもうないんですよね。すいません」
「そうなの? じゃあ・・・・」
「ただ、こんなこともあろうかと、昔自分が作った奴をアレンジしたので、そこから選びましょう」
「えっ?」
「あれから創作意欲が刺激されましてね。彼女さんに会う服を作ってみようかなと思ったわけですよ。ちょっと待ってくださいね。持ってきます」
そういって少女を残して女は後ろへと下がっていく。それを見て、男が話しかけてくる。
「終わったのか?」
「いえ、どうやら彼女が作った服を――――」
「お待たせしましたーっ! じゃあ、はい。彼女さんこっちくる。彼氏さんは着替えるまでちょっと待つ!」
「えっ?!」
手を引かれて着替える場所まで連れて行かれる。男を見ると手を横に振っており、自分では処理できないと言っていた。
「着せ替えタイムの始まりよっ!」




