第六章 3
豊麗な胸部に腕を挟まれ・・・いやでも意識がそちらに残ってしまう。少女はそれを天然にやってしまう。計算のない色仕掛けに、日々男は手玉に取られている気分だった。
「毎日が刺激的だよ・・・慣れないと俺の身が持たなさそうなくらいにな・・・・・」
「えーと、つまり奥さんの方が積極的ということ?」
「そうだな」
「何言っているの? 貴方だってそうじゃないの。この間なんて・・・」
「それは言わなくていいっ! むしろそういう恥ずいことは言うなっ!」
このやりとりで全員は察した。この二人は完全にバカップルなのだと。あまり下手な質問はすると、アテられて火傷してしまうと。
そこから日常生活、デート、指輪の話しになって、婚約指輪は形的になってしまったから、結婚指輪はいいものを買ってもらった方がいいという話になった。それに対して
「彼がくれたんだから、それだけでもう十分に良いものよ? それ以上の指輪なんて、わたしにはないわ」
幸せがこれまでないほど詰まった微笑みでの回答に、全員がアテられてしまった。これ以上はもう何も聞かないほうがいいとうことで、二人はご退場を願われた。他人のラブイチャ幸せほど、独身者には辛いものはなかった。
なお、この間ネット上で騒ぎになっていた『遊園地、美少女お姫様抱っこ事件!!』の少女であることに、二人が部屋から去って遅まきながら気付いた者がいた。それは、少女だけが知らないところで盛り上がっていた話題であった。その当人が自分たちのすぐ近くにいたことに皆が驚愕すると同時に、やはり二人はバカップルもバカップル、超弩級のバカップルだと結論づけられた。その心中(男性陣)は『爆発しろ!!』である。
「なんか部屋から出た瞬間騒がしくなっていたが・・・俺たち何かイチャついていたか?」
「そうよね? 一体に何が、ちょう・・ど・・・きゅう・・・ばっかぷる? なのかしら?」
仲良く腕を組みながらの帰り道。去り際に聞こえてきた、超弩級バカップルについて話し合っていた。
「キスだって頬にしただけだし・・・腕に抱きついたことかしら?」
「別にお前がやる分には普通だろ? やっぱり、お前が言った指輪のことじゃないのか?」
「それこそ普通でしょ? むしろ貴方がプロポーズとともに言った言葉じゃないのかしら?」
「それはちょっと違うんじゃないか?」
どっちもどっちだ!という心の声は、この二人には届かない。
「・・・まあ、そんなことはどうでもいいか」
「そうね。むしろ、これからはずっと一緒なのよね?」
「ああ、最期は身辺整理も必要だと思ったから有休を取ったが・・・・まさか、お前が荷物全部整理してくれているとは思わなかった」
「ふふっ! 毎日少しずつしていたのよ? わたし、いい奥さんかしら?」
「ああ・・・最高の奥さんだよ」
「えへへっ・・・褒められちゃった!」
素直に褒められ、童女のように笑う。そのまま少女が身を寄せてきて、周囲を素早く見渡して人の目がないことを確認すると、男へと口づけた。さきほどの頬だけで満足できるわけがなかった。
「・・・そのうち人に見られるぞ?」
「そういうスリルがあるのも・・・いいでしょ?」
「お前・・・・本当にころころ顔を変えるな」
「そんなのわからないわ。わたしにわかるのは・・・貴方を愛してる、それだけよ?」
「・・・なんというか、愛が重いな~」
「そんなに気負わないでいいのよ? 貴方はすぐに難しく考えるんだから・・・もう少し感情的になればいいと思うわよ?」
「ああ、残りの時間はなるべくそうするよ。お前を愛したいからな」
今度は男から口づける。もう、人前だとかはどうでもよかった。
こうして、二人は共にいられる、最後の一週間を過ごしていくことになった。
朝からずっと二人きりで過ごし、残っている簡単な処理を行いながら、したいときに好きなだけイチャついていく。少女が読み終わった作品の感想を聞きながら、自分もそれを読み流して話しあう。
買い物にも二人で一緒に行き、少女から食養生の大切さを説かれる。おばちゃんズはもう二人に話しかけてはいけないことを悟り、普通の店員としての仕事をこなしていく。その時でさえ二人の会話は惚気に近く、精神的サイドからの影響を与えられてしまう。
食事も時間を気にせずゆっくりと食べていちゃつき、いちゃついては食べさせていく。お風呂もなんだかんだありながら二人で入った。そして、寝るとき・・・・なぜかベビードールを着ていて、その姿で誘われてしまう。先に上がっていた少女が、男を誘惑する服装をして布団の上で座って待っていた。後から上がってきた男を見ると、微笑みながら両手を広げて言う。
「来て・・・今夜も一杯、かわいがってくれる?」
「・・・なんでこんなものを持っていたんだ?」
その姿と表情、話される声全てに誘われるが、そこは理性で抑えつける。ここで襲うようならばただの獣でしかない。




