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<<第六章~終わる楽園~>>70

「ふふっ、うふふっ!」

「そんなに嬉しいのか?」

「当然でしょ? だって、貴方からの贈り物なんだもの・・・嬉しくないわけないわ」

 道を歩きながら、男の腕へと強く抱きつく。その柔らかな感触に慣れることができず、男はどうしてもそういうことを考えてしまう。それを少しでも紛らわすために、少女の指をみる。抱きつく少女の左手に、その指に輝く物があった。男から送られたエンゲージリングだった。初めて身に着けられて有頂天のようだった。

「しかし・・・」

 それを手に入れた流れを思い返す。あれから男は会社で作った人脈を使って、信頼できるそういった店を紹介してもらった。幸いというべきか、あの時家へと上り込んできた二人がそういった噂をしてくれたおかげで、説明の手間が省けた。むしろ、ようやっと身を固める覚悟をしたのかと言われてしまい、早く買いに行ってやれとまで言われてしまう始末だった。

 因みに、婚約者として少女の画像を見せたところ、全員から『ロリコン』と言われてしまった。本当の年齢では、男よりも遥かに年上なのだが、そこは絶対に言えなかった。なので、それほど離れた歳ではないとだけ伝えたが、それでもやはり『ロリコン』が撤回されることはなかった。

 そして、昨日その紹介先に行き、少女に見合う物を選んでもらった。ありがたいことに話しが通っていたのか、ある程度なら融通をきかせてくれた。ダイヤの大きさ、指輪のサイズ、店の在庫状況、刻印は不要、金銭面も問題がないなどなど、本来簡単に手に入るわけがないのに、運よく形としての婚約指輪は確保できた。本当ならもう少し時間をかけたいところだったが、少女の希望もあって当日購入という流れになった。なにせ少女が『結婚指輪には時間をかけるから、今は形としての指輪がほしいの』と、切なげに訴えかけたからだ。そうなると今度は式がいつになるかとか、そういったややこしい逆算の話になったが・・・そこはまた後日年明けにということにして、申し訳ないと思いながらも、絶対にやってこない未来へとぶん投げた。

 それでも、限られた中で選択されたことを考えれば(それ相応の金額も払っているので)、決して悪くはないものだということはなんとなくわかった。

「本当に運が良かったな。俺、これで一生の運を使い果たしたかもしれん。とはいえ・・・・急ごしらえで悪い」

「どうして謝るの? できる限りのことをしてくれたのだから、私はとっても嬉しいわ」

 天使のような顔で微笑まれると、それに見惚れて何も言えなくなってしまう。

「貴方・・・? どうしたの? ぼーっとして・・・・」

 見上げてくる少女の視線で我に返る。

「すまん・・・お前が綺麗で見惚れていた」

「・・・ここ数日から、かわいいって言ってくれなくなったわね・・・・もしかして、かわいく無くなっちゃった?」

「いや、かわいいぞ? だからそんな顔しないでくれ。ただ・・・・」

「ただ?」

「最近のお前は・・・かわいいのに綺麗だ。いや、綺麗でかわいいって言った方がいいのか?」

 契りを交わしたあの日から、少女は女としての魅力が急激に研磨されていた。容姿がどう変わったとかそういうのではなく、少女の持つ雰囲気がどことなく魅惑的な色を帯びてきた。おかげで夜が来るたびに男は・・・・

「・・・どうもよく分からん。だが、お前が魅力的になっていることは間違いないぞ?」

「そう・・・? ふふっ、だったらいいわ」

 ぴったりとくっついて歩いていく。もうすぐクリスマスということもあり、こういう行為にも、あまり問題がなさそうだったのが救いだった。

 喜びが絶えない笑みで、少女の視線は左手にはめられた指輪にあった。本当に、心から嬉しそうに見ていた。少女にとってそれは、男の女であることの証だった。

 ただでさえ可愛い少女が、より魅力を増した状態でそんな姿を見せているのだから、他の男が振り返らないわけがなかった。今の少女を放っておいたら、間違いなく男が群がってくるのは目に見えていた。

(指輪つけとけば虫よけにはなるよな・・・?)

 なので、この指輪は男にとっても有難かった。

 そんなこんなで、いちゃいちゃしながら歩いていくと、男が働いている職場に近づく。指輪を買ったらその相手を見せてくれといわれていたので、わざわざ婚約者(実際は妻)である少女を連れてきたのだった。助けてもらった以上、筋は通しておきたかった。

 時刻は昼間。ちょうど休みに入って一番暇な時だ。

 いつものように裏口から入っていき、階段を昇って休憩所までと歩いていく。案の定、そこから漏れてくるいつもの声や雰囲気から、だいたい全員が集まっており、男が連れてくる婚約者を待っていた。

「・・・大丈夫か?」

「・・・ええっ」

 どことなく緊張したような面持ちの少女に声をかける。極力、人との接触を避けていたので、人前が苦手だった。それでも、今回の件に関しては出てくることを選択した。指輪を探してもらったことへの感謝もあるが、もしかしたら男の女であることを知られたかったのかもしれない。

「無理そうなら今から引き返しても・・・」

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