表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/94

第五章 8

「ぁ・・ぅぅ・・・・っ!」

 目の前で見せられる間接キスに、か細いうなり声を上げる。無意識的に指が唇を触れる。普通にされるよりも恥ずかしかった。

「どうした? 顔赤いぞ・・・?」

「だ、だいじょうぶよ・・・?」

『貴方が何度も間接キスするからよっ! それだったら素直にわたしにしてっ!』とは言えなかった。

「それより・・・随分味わって飲むのね・・・・?」

「一気に飲むと胃がびっくりするからな。こういうのは少しずつ飲むようにしないとな・・・・・まあ、残りは一気に飲むが」

 そう言って、少女の唇が触れた部分へと、また口を重ねて飲まれていく。

「ぁぅっ!」

 最期は喉を鳴らされながら飲まれてしまい、蚊の鳴くような声が漏れてしまう。

「・・・なんでお前耳まで赤くなってるんだ? 風邪なら今夜は大人しく寝たほうがいいぞ?」

「それは絶対にイヤっ! こんなことされて抱かれないなんて、もう生殺しより酷いわよ・・・っ!」

「確かにずっと待たせていたからな・・・・ここでしないとなったら、お前も気がすまないよな」

「そ、そうよ・・・? ずっと、貴方が欲しかったんだから・・・・」

 会話の内容は確実にすれ違っていたが、そんなことを指摘したら“恥ずか死”してしまうので、そういうことにしておく。

「最後に念のため確認するが・・・・いいんだな? 俺はもう我慢しないぞ?」

 真剣な顔つきになった男が少女に問う。

「ええっ、貴方の・・・・女にして?」

 男の身体に近寄ってもたれかかり、その身を委ねる。

 少女を抱き上げて布団へと運ぶ。降ろすと視線が絡まりあい、互いが求めあうままに唇を――――



「夜分遅くに失礼するよ」



 ――――重ねることができなかった。

 二人を引き裂こうとした男が、あろうことか初夜に当たろうとしている時に姿を見せたからだ。昼間に入って来たベランダのドアから侵入してきた。

「・・・あなた、何しに来たのよ」

 いくら恥ずかしがりな少女でも、これには流石に怒りの方へと感情が向いてしまった。聞いたこともない声音を出した少女に男が驚く。

「・・・彼に関してはそんな声を出すんだね?」

「・・・あたり前でしょ。わたしがどれだけ想い焦がれていたと思うの?」

「お前、よくも顔を出せたな・・・」

 怒りという意味では彼のほうが強いと言えるだろう。知らないところで少女を泣かされ、危うく失うところだったから、その怒りは烈火の如くだった。

「まあ、まだ全てを聞かせていないからね」

 怒りを向けられた男は、そんなことは知らずとばかりに話しを始める。

「君は全てを聞く前に勝手に走り出して帰るから、これでもタイミングを選んだつもりだよ? 流石にあそこで出ていくほど無粋ではない」

「・・・嘘ね。今度は何を言って引き裂くつもり? またくっついて、そこを引きはがすのが狙いでしょ? 感情を効率よく集めようとすれば、そうするほうが早いもの」

 声が震えるのを抑えながら、気丈に言う。昼間とは違って、ここまで受け入れてくれているという安心感が、少女を強気にさせていた。

「ぎりぎり間に合ったのも、お前の計算通りというわけか?」

「そこは違うね。まさか君がこれほどまでに、彼女に心酔しているとは思わなかった。おかげでまた感情が集まったよ」

「感情か・・・それがお前らのエサなのなら別にそこはいい。それが基本的に人間の苦しみや、悲しみとかの負のエネルギーであることもどうでもいいさ」

 昼間、休憩中に現れた時に聞かされたことを思い出す。少女がやっていることはざっくりと言えば、人間が家畜の世話をしてそれを食べる。それと同じようなものだと。ただ、その立場は上位の精神体である存在が、家畜である人間に試練や悲しみなどを与えて、そこから引き出される感情を食べていると言うものだ。

 苦しみや辛さなどによって磨かれた人間の最後の収穫。それが少女のやろうとしていることだった。

「だがな、そこにこいつの感情まで入れるなっ! こいつまで対象にするのはおかしいだろっ?!」

 そう言って少女を抱きよせ、抱きしめる。最期には自分を収穫する少女を・・・・それを分かっていながら、彼は少女を腕に抱く。全てを知った上で、それでも自分を許してくれた彼に、少女は言葉では言い表せない感情で一杯だった。

「取れるところからは取っていく。それだけだ。おかげで昼間はいい感情が見られた。何せ、あの彼女が私に泣きながらお願いごとをしたのだから、初めての経験だったよ。それに関しては君に感謝する」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ