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第四章 6

 このまま沈み込みそうな雰囲気をどうにかしないといけないと思い、男は努めて明るく振る舞う。自分にできることと言えば、それくらいしかないからだ。

「わたしは・・・貴方だけがいればいいわ。貴方以外のモノなんていらない」

「それは俺も同じだ」

「ほんとう?」

「ああ、お前以外の女はいらない」

「・・・うれしいっ!」

 ようやっと明るい笑顔をみることができた。

「でも、そうまではっきりと言い切られると、それはそれで恥ずかしいわ・・・・」

 両手で頬をさわり、熱くなっていることを確認する。胸にもじんわりとした熱が広がり、満ちていく想いがある。

「それだけお前に惚れているってことだ。それより、早いとこ食べて回ろうぜ? あまりお前をちらちら見られるのは、気分がよくないからな」

「・・・そうなの? ふふっ! だったら―――」

 一口サイズのサンドイッチを一つ手に取り、男へと差し出す。

「あーん、して?」

「ここ外なんだが・・・」

「だからよ? 仲を見せつけたらそんな視線もなくなるわよね?」

 俺に対する視線が厳しくなるがな。そう思っていても、少女から視線を逸らせるならそれでいいかと考える辺り、自分もイカれているなと感じた。

 いつも部屋でしているように慣れた動きで食べる。その瞬間、視線が男へと集中し何とも言えない居心地を味わう。

 『バカップル』『うざっ』『こんなところでラブラブいちゃいちゃして・・・・』

 そんな声が聞こえてきそうだった。それでも二人はそれを止めず、周囲に見せつけていく。男が食べたら、今度は少女に同じことをする。その時男の指に調味料がついていることを、少女は目ざとく見つける。

「もう・・・ダメじゃない、ちゃんととらないと。んっ・・・」

 そんなことを言いながら、少女の小さな舌がそれを舐めとっていく。流石の男もこの行為には驚いてしまう。そして、こうなったらとことんバカップルを演じることにしようと腹をくくり、それはもう見るのが嫌になるくらいに、いちゃいちゃラブラブなことをしていく。食べ終わる頃には周囲の視線はなくなった・・・・というよりも、当てられるのが嫌でそれぞれが自分たちの世界へと引き込んでいた。

 その甲斐あって、食後のコーヒーはのんびりと楽しむことができた。ただし、冷静に返った少女の顔は、茹で上がったかのように赤くなっていた。

『やりすぎたわ・・・』

 雰囲気に飲まれ、思った以上の行為をしてしまったことが、今になって羞恥心として現れていた。

 下を向いていた少女が上目遣いで男を見てくる。その視線が合うと、さっきまでの爛れたような行為を思い出してしまう。

「あの・・・ごめんなさい・・・・その、舐めたり咥えちゃったりして・・・・ちゃんと洗ってね?」

「いや、俺も悪い・・・つい同じことしちまって・・・・・手を洗うついでに、そろそろ行くか?」

「そ、そうね・・・・時間は過ぎていくものね。そうしましょう」

 コーヒーを素早く飲みほし、逃げるようにして二人は外へと出ていくのであった。




 手洗いを終えて、昼からの行動をしていく。食べたばかりに乗り物系は嫌なので、探索系(?)を考える。

「迷路とか好きか?」

 すぐ近くに見える『鏡の迷宮』と書かれた施設を指さす。

「めいろ?」

 まだ少し赤みが残る顔で少女が聞き返す。どうやら知らないようだ。

「入り組んだ道を迷わずに抜け出す遊びだな。まあ、絶対に迷うんだけど」

「迷って出られるの?」

「入口に戻ればいい」

「・・・そうなの? じゃあ、どんな感じなのか知りたいわ」

「分かった。じゃあ行くか」

 そういって二人は『鏡の迷宮』へと入っていく。

 一歩入れば、そこは天井と左右の壁が鏡張りの世界だった。こういう地味な施設に人はあまり来ないので、そこには二人だけが映っていた。

 因みに、こういう迷路は初めに壁に手をついて進んでいけば必ず出口にたどり着くことができると相場が決まっている。入口と出口は壁伝いに繋がっているからだ。もちろん男はそれを知っているが、今回は使うつもりはなかった。

「とりあえず、お前が行きたいようにいけばいいぞ?」

「どうして? こういうのは貴方得意じゃなかったかしら?」

「いや、実を言うとな・・・俺、ここの迷路覚えてるから、普通に歩くとまっすぐに出口に行っちまうんだよ。だから、お前がどういう風に考えるのか見てみたい」

「覚えてるのに楽しめるの?」

「お前の反応を楽しむ」

「むう・・・っ、いい趣味じゃないわよ?」

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― 新着の感想 ―
いちゃラブでほんわかしたのじゃ!もう!見せつけてくれるのう!迷路で少女の反応を見たいと言う男は意地悪のようで愛し合っているのがわかるのじゃ!面白かったのじゃ!
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