第三章 11
「・・・意外と自分がしていることって分からないよな。お前に何をしてやれたんだろうか? 何をしてやれるんだろうかって、ずっと思っている。だけど、お前はそんなことないと言ってくれる」
「貴方は・・・自分を過小評価しすぎよ・・・・・貴方のような人間なんて、どこを探してもいないわ・・・・・」
「・・・それはお前もだろ?」
「・・・わたし達・・・似たもの同士なのかしら?」
「案外そうかもな」
「これも・・・バカップルになるの?」
「ははっ、そうかもな」
少しだけ身体を離して互いに見つめあう。そして、どちらからともなく口づける。
「ん・・・もう・・終わりなの・・・・?」
離れる感触が名残惜しくて、男にねだる視線を向ける。もっと長く、もっと深くして欲しいと。
「その気になったらヤバいからな。せっかく着てくれたかわいい寝間着を脱がすのはもったいない。それより次の休みなんだが・・・」
「何かあるの?」
「いや特にないから、デートでもしないか?」
「デート・・・」
漫画でも定番のネタ。二人の男女がどこかに遊びに出かけて、楽しむというあれだ。
「ほら、せっかく服も買ったことだし、それ着てどこかに行かないか?」
「・・・・」
漫画の内容を思い出す。『Fragment』でのデートと言えば、主人公とヒロインが最後には結局いちゃいちゃしていた。
「・・・最後は結局家に帰るのなら、初めから家にいてこうして抱きあっていたいわ」
そんな身もふたもないことを言って、男に甘えたくて身体を密着させる。
「んー・・・・まあ、確かに外だとあまりべたべたする訳にはいかないよな・・・・・シーズン的にも恋人らしくデートでもしてみようかと思ったが・・・・・」
「・・・やっぱりデートする」
「おっ? なんだ急に・・・・」
「貴方の恋人として過ごすのが、今のわたしの望みだもの」
デートが男女の遊びだけではなく、恋人としての行いということも思い出し、少女が掌を返した。よくよく考えれば、少女は男ともっと恋人らしいことをしたいと思っていた。あの作品の二人のように、自分も男と過ごしてみたいと。男に抱きつき、抱きしめられている状況に浸ってしまっていたので、反応が鈍くなっていた。
「だから、デートしたいの」
「どこか行きたいところあるか?」
「・・・遊園地」
ぱっと思い浮かぶものを適当に呟いた。
「了解、ちょっと遠出になるけどいいか?」
「だいじょうぶよ」
「じゃあ、次の休みは遊園地にデートっと。んじゃそろそろ寝るから離してくれないか?」
「離してもいいけど、一つしたいことがあるの」
「抱けってこと以外ならいいぞ」
「その・・・貴方を抱きしめさせて・・・・?」
いつも自分が甘やかされているから、たまにはそれを男に返してあげたかった。
「どういう意味だ?」
意味が分からなくて首をかしげる。その間に少女が離れようとしたので腕を解く。
少女が男に向き直って座りなおす。向きなおったと思ったら手を伸ばして、男の頭を優しくその胸に抱き寄せた。
「なっ?!」
少女のふくよかな胸の感触に男が驚く。反射的に逃れようとしてしまうが―――
「いつも、お疲れ様・・・・ずっと、ああいう風に生きてきたのよね・・・・・」
そんな言葉をかけられたら力が抜けてしまった。というよりも、疲れを自覚させられたというべきかもしれない。
「どうした・・・? 急に・・・・」
いつもと違って、男が少女を見上げて尋ねる。
少女は少し気恥ずかしいのだろう、ほんのりと赤くした顔で男の質問に答える。
「『Fragment』で、疲れた男の人にこうしてあげたら喜んでいたから・・・・貴方もそうかなって・・・思って・・・・・嫌じゃ・・・ない?」
「好きな女にされて、嫌なわけないだろ?」
「よかった・・・嫌がられたら・・・・どうしようって思ってたから・・・・・」
そういってもう少し強く男を抱きしめる。
「ちょっと待て、嬉しいがあまり強くされると息ができなくなる」
「そうなの・・・? どれくらいまでなら大丈夫なの?」
「ちょ・・・っ!」
一度思いきり頭を抱きしめて、そこから男が無理なく呼吸できるところまで弱めていく。
「・・・ぷはっ。さすがにいきなりは勘弁してほしいな・・・・」
「ごめんなさい・・・・」
「まあ、十分役得はあったがな・・・・」
「顔が赤いけど・・・我慢させすぎちゃった・・・? ごめんなさい、息は大丈夫・・・?」




