第三章 4
『好きです・・・影闇君』
思いだされるのは少女自身のセリフ。ヒロインと同じように自分から口づけをして―――
『愛してるわ・・・・だいすき・・よ』
(~~~~っ!)
少女はもう耐えられなかった。耐えられなくて本を閉じてしまう。
「あ・・・わたし・・・・こんなに恥ずかしいことしてたんだ・・・・・」
今になって気づく、あの時少女と男がどれくらい恥ずかしいラブシーンを展開していたかを・・・・
「・・・・自分でしている時は気づかないのに・・・こうやって見せられると凄く恥ずかしい・・・・っ!」
それでも続きが気になってしまい、ほとぼりが冷めたころに読み進めていく。これまでのものと比べて読みやすく、テンポも少女にあっていた。
(恋人って・・・こんなことするんだ・・・・!)
食事を食べさせたり、同じ飲み物をストローで飲みあったり、膝枕をしたりと、もう色々と現実とかけ離れている内容を少女は鵜呑みにしていく。
(きゃ~っ、なにこれっ?!)
指でつまみ、一口で食べられる小さな果物をヒロインが主人公に食べさせるシーンがあった。その時に主人公が指までくわえてしまい。ヒロインが恥ずかしがる。
『指まで食べないでください・・・・///』
『んっ? 聖望の指おいしいぞ?』
『な、なにを言っているんですか?!』
『あ、そういや俺ばっかり食べてて悪いな。聖望も食うか?』
『え? あ、はい・・・頂きます』
『んじゃ、こっち来てくれ・・・いや、俺が行った方が早いな』
『えっ? それってどういう・・・・んむっ?! う・・・ん・・っ!? はあ・・・っ!』
『・・・どうだ?』
『・・すごく・・・あまい・・です・・・・』
口移しで食べさせるシーンを見て、少女は湯気がでそうなくらい頭が熱くなった。
そこから二人が交互に一つ一つ果物を食べていくシーンが続き、食べるものがなくなったら、ディープキスへと移行して互いの唇を貪るように求めていった。
(何これ何これ何これ何これ何これ何これ何これ?!?!?!??)
漫画的表現でいうならば、今少女の目はぐるぐるとした渦巻状態で、全身真っ赤の頭からは蒸気がでて沸騰していた。
それでも何かに憑かれたかのように少女は読んでいく。
シリアスな展開があっても、それが終われば二人はいちゃつく。
シリアスな展開がなくても、二人はいちゃつく。
些細なことがらであっても、二人はいちゃつく。
とにかく何らかしらの手段で二人はいちゃつく。
そんな、いちゃいちゃラブラブした内容(最終話辺りやところどころ真面目なシリアスもあるが)を全話で通して見せられる。
最終話の後半のシーン。主人公が夢から覚めてヒロインと会話を交わす。
『あれ・・・聖望? なんでまだ居るんだ?』
『もしかして寝ぼけていますか?』
『聖望、何をいっているんだ?』
『ふふっ! またそう呼んで・・・今の私は『影闇 ひかり』。アナタのひかりですよ?』
『・・・ああ、そうか。俺たち結婚したんだよな』
そんなことを言って二人がいつものようにいちゃつく。しかし、これまで甘えっぱなしだったヒロインも男を甘やかし、大人の女性としての包容力をみせていた。それに男が少年のように笑い返す。
そうして最後のシーンへと移る。主人公がヒロインをお姫様抱っこしてベッドまで運ぶ。夫の腕に抱かれ、幸せを隠せないその妻の笑顔。その胸中は色々な想いが交錯していた。
――アナタはいつだってあの頃の表情を見せる。その顔を見るたびにわたしはいつも貴方に恋をする。ありがとう、影闇君。わたしを好きになって、恋人になってくれて・・・。そして、私と結婚してくれた今のアナタを――――――――――――心から愛しています。
(なにこれ・・・・?)
呆けていながらも、少女は読み終わった物語をいつものように整理していた。
読み終わったばかりの物語を思い返し・・・・
(わたし・・・・彼とまだここまでいっていないわっ?! 少しは恋人らしいことをしたと思っていたけど・・・・全然だったのね・・・・・・)
盛大な勘違いをしてしまうと同時に、使えそうな内容をいつか男に対してやってみようと決意する。
(『あーん』とか、膝枕くらいならすぐにでもできそうね・・・・口移しは・・・その、どうなのかしら・・・・?)
想像しようとして胸が高鳴り、どうしようもない恥ずかしさが込み上げてくる。




