第三章 3
「ごめんなさい、主様。包み隠さず、あやめさんには全てお話ししました」
「そうか・・・・泣かないでください、あやめさん。あの時、ただ一人あやめさんだけが自分に優しさをくれました。ただ、その恩に報いただけですよ」
「そんな・・・あの程度で・・・・・どうしてここまで・・・?」
「『あの程度』すらもらえなかった自分にとって・・・・あなたのそれは救いでした。救われたから、救いかえす・・・・別におかしくないでしょう?」
「そんなの・・・っ! 全然違いますわ・・・・っ! 主様のそれはあまりにも大きくて・・・・わたしには不相応に過ぎます・・・」
「いいんですよ? 自分はそんなに優しいわけではないですから、ここから去って違う世界に行かないといけないので・・・・知っているでしょう? 主はその世界に束縛される。だから逃げただけですよ」
「っ!! それはっ! 滅びないことが前提じゃありませんかっ!!! もう主様は・・・っ!!!」
「ははっ・・・やっぱりあやめさんは賢いな~・・・・自分が作った技を説明してないのに、視ただけで本質を理解している・・・・・なんというか、すいません。最期になってこんな感じで。どうも壊れたせいで、変になっているみたいです」
「!!」
「・・・あやめさん、今度はあいつと一緒に幸せになってください。情けなくて頼りない、昔の自分で申し訳ありませんが・・・・それでも過去の自分は、今の自分が超えられなかった運命を超えた・・・・だから今度こそは大丈夫です。あなたを・・・独りになんてさせない・・・・」
「あ・・・っ! ううっ・・・主様っ!!」
「・・・それじゃあ・・・・・そろそろ・・・お別れみたいです・・・・・」
「まってくださいっ! 私まだお礼も・・・・!」
「・・・・・・・・・」
「主様・・・っ?! 主様っ!?」
(・・・・・・)
少女は無言で読み進める。
すると、泣き喚いていた巫女に声をかける存在が現れた。主人公の魂をすくい上げた女狐だった。現れると主の魂を救う方法が一つあると告げる。そしてそれを実行できるのはもう一人の巫女である『くろみ』だけだった。そしてくろみは受け入れた。主が宿していた、決して受け入れられることのなかった魂の全てを、その身に宿して来る時まで待つと。
そして、物語は終焉へと至る。
その後、あやめは高天原を目指して上に昇る。主人公には主のことを黙ったまま。
主人公はカミアガリを成し、二代目の主としてこの世と天の狭間にて穢れを祓い続ける。三代目の主が現れるその日まで。
くろみは・・・・・主が抱えていた深すぎる苦しみと悲しみを知り、毎夜涙を流して一人で過ごす。いつか夢見た未来の・・・・その先が来るまで、彼女は主の魂を宿し守り、孤独と絶望の中で待ち続ける。いつ終わるともしれない時の中で、独り泣き続けながら・・・・
一つの物語を読み終わり、少女は本を整えて整理していく。
(・・・確かに最後は驚いたわ。でも・・・・この世界観にも驚かされたわ。いがいと、作り物の世界もばかにはできないのね・・・・・特にあの女狐が主の魂を具現化して巫女に宿すところ・・・・あの魂は酷いわ・・・・・・あんなになるまで在り続け・・・まして想い続けるなんて・・・・・そんなことできるわけが・・・・・・・)
ふと男の顔が浮かぶ。こんな自分に優しさをくれた最愛の人。
(もしも・・・・彼だったら・・・・・・・ううんっ、そんなことできるわけないわ。彼は変わってはいるけど、普通の人間なんだもの。こんな物語にでてくるような特別な人間じゃないわ)
特別なことができる人間は、それ相応のモノを背負うはずだと、少女はそういう風に考えていた。
(でも、彼は変わっているから・・・・これだけ優しいのかしら? 優しくて不器用だから・・・彼は簡単に傷ついてしまうんじゃ・・・・?)
「甘えてるばかりじゃなくて・・・・わたしも彼を甘やかせてあげたい・・・・・・・」
(・・・・そうなると、参考になりそうなのは)
少女が恋愛系の漫画へと視線を移す。『Fragment』と書かれた漫画を見る。表紙に書かれている黒髪の男が、ヒロインである少女に笑いかけている。ヒロインである金髪碧眼の少女は恥ずかしそうにしてその男を見ていた。そんな表紙。
その二人をみて、どこか自分たちと似ているような気がしてしまった。そして、ついに少女はその本に手を出すことになった。
ぺらぺらと読み進めていく。相性が良いのか、すらすらと読めていき、あるところで気づく。
(これ・・・わたしが彼を好きになったのと同じような展開だわ・・・・・!)
ヒロインの少女が男に抱きしめられ(しかもそれはヒロインの苦しみや悲しみを和らげようとした男の行為)、その温もりが孤独な少女の心を溶かしていくというありきたりな展開だった。が、それと似たようなことを、つい最近やってしまった少女としては凄く恥ずかしい内容だった。
(やだ・・・・恥ずかしいわ・・・これ)
繰り広げられる展開に顔が赤くなる。
極めつけは、ヒロインが主人公にお願いして膝をついてもらってからのキスシーン。その直後のセリフ




