第二章 12
「本当は寝間着は必要ないのだけど、彼がずっと下着姿は勘弁してくれと言うから、せめて彼が嬉しいと思ってくれるのを着たいと思ってるわ・・・・」
「よく風邪ひかないですね・・・・」
訳が分からなさすぎてそんなバカみたいなことしか返せない。普通、寝間着くらい持っているものでしょうと・・・・
よくよく見れば、少女の体つきは男を虜にするにはもう十分な成長具合な訳で、それが下着姿でずっと男の前でうろうろとされたらそりゃ・・・・・ずっと??
「えっ?! もしかして同棲してるの?」
「『恋人』なら同棲するものじゃないの?」
「いやいや、普通しないっしょ!」
「『恋人』なのに?」
女はこの時少女がちょっとどころか、その容姿と同じ異次元レベルでずれていることを理解した。なんというかもう、温室育ちと何か混ぜてはいけないモノを一緒にして育つとこうなる感じというべきか・・・・・よく今まで無事に生きてこれたものだと本気でそう思う。
「えーっと・・・・ちなみにこれまで男と付き合った回数は?」
「彼が初めてよ・・・? むしろ、彼以外の男の人はわたしをそういう風に扱わないし、そういう目でも見てこないわよ?」
「そんだけかわいいのに・・・言い寄られないの?」
「寄るな、触るな、近寄るなとしか言われないわ。少し前・・・数年のことでいえば・・・犯罪者とか、死んでしまうとか言われたわね・・・・」
「確かに・・・中学生くらいの貴女をいい大人がそういう風にしたらそうなるけど・・・・普通同級生でしょ?」
「わたしにはそんな存在いないわ」
地雷を踏んだと思った。それと同時に、あまりこの少女のことを聞かないほうがいいとも思った。色々と闇が深そうだ。
「そ、そう・・・・」
なんだか嫌な汗が出てきた。根本的に理解ができないというのは、こうも気持ちが悪いことなのか。
「そうなると・・・彼氏さんって凄いのね」
「ええっ。そうね・・・彼だけはわたしと接してくれたわ」
男の話になると少女の表情が和らぐ。それだけでどれほど想っているのか、嫌でも感じ取れてしまう。
「だからわたしはこの気持ちを抱くことができた・・・彼だけが、この気持ちをくれた・・・・」
「・・・いい彼氏さんなんだね」
「そうね・・・わたしにはもったいないくらい優しい人よ・・・・・・」
「そんな人だったら、彼女さんのかわいい姿見れたらそれでいいって感じですね」
「そのかわいいが分からないのだけど・・・」
「大丈夫ですよ。彼氏さんがどんな人かを少しでも見れたので、おおよそ検討はつきます。それに彼女さんの希望を足したものを選ぶだけですから。少し時間もらえたらいくつか選びますんで、後は彼女さんが好きなの一つ選んでください」
「そう・・・? ありがとう。貴女もいい人ね・・・・」
「なんといいますか・・・面と向かってそういわれると恥ずかしいわね・・・・」
そういって服を見ていく、少女のかわいさをベースにして、大人な部分をアピールするような服を。その間少女はまた視線を上に向けてどこかを見ていた。
「ありがとう・・・これで彼に目を逸らされることがなくなるわ」
「いえいえ、毎度どうも。これで彼氏さんも少しは落ち着けるでしょう」
「でも・・・・こんなに買った覚えはないのだけど・・・・?」
服一つとは思えない大きさの袋を見てそう言う。他にも色々と入っていそうだった。
「色々とサービスしときました。というより、在庫処分な感じなので、お礼はいいですよ。昔にアレなものを少々作っちゃいましてね・・・・彼女さんなら問題なく似合うんでどうか持ってってください。あ、もちろん寝るときのものだから、それで外出しちゃだめですよ?」
見ればわかることだと思うが、この少女にそんな常識は通用しないと思って念を押す。
「彼氏さんに見せるための服ですからね?」
「んっ・・・わかったわ」
理解したとうなずくと荷物を手に取る。
「それじゃあ・・・いくわ。もうすぐ彼が困る頃だろうし・・・・」
「コーヒー飲むのに困ることって・・・・?」
この疑問に、少女がおかしそうに笑いながら答える。
「ふふ・・・っ! 彼ね・・・お財布渡したときに、小銭入れも一緒に渡していたみたいなの。あの時なにかおかしいなって・・・思っていたのだけど、今お会計して気づいたわ」
「それは早く行ってあげないとだめですね・・・・笑っている場合ではないかと思いますが?」
「そうね・・・でも、つい彼がかわいくて・・・・・こういうのはいけないわね・・・・」
抱いた感情をかみしめながらも、少女はすぐに自戒する。
「場所分かるんですか?」
「ええ、彼の居場所ならわかるわ。じゃあ、本当にもう行くわ・・・・・さようなら」
「ありがとうございました」
その背中を見送り、店内に一人となる。
「・・・なんだか変わった娘だったね。また来るかしら?」




