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第二章 4

「とても似合っておりますよ」

「・・・そう? ありがとう」

 いつものような感情のない淡々とした口調も、今の異次元的な魅力をもつ少女であれば何の気にも障らなかった。逆に、人間離れしているからこそ、それが映えるのであった。

「その・・・あなたは・・どうなの?」

 そんな少女も、男には色づく声音で訪ねてくる。

「あ・・・・悪い。あんまりにもかわいすぎて見惚れていた」

「前よりも・・・もっとかわいい・・・・?」

「かわいすぎてやばいくらいだ」

「『かわいすぎる』。うん・・・・この服にする。じゃあ、早く・・・帰りましょ?」

 男の返事に満足したのか少女が購入を決意する。

「いや・・・他のはいいのか?」

「いらない・・・・一つあれば十分。それに・・・初めのこの服以上に・・・貴方がかわいいと思ってくれるものはないわ・・・・初めての感情を上回るものはないもの・・・・」

 予想もできないくらいのかわいらしさを、初めに少女はたたき出した。だが、それは二回目以降からは最初の物差しができてしまい、どうしても0からの感情で服を着た少女を見ることができなくなってしまうことを意味する。そうすれば、初めて以上の感情が出てくることはない。

そもそも、少女にとって重要なのは服の数ではなかったし、興味事態もなかった。

「わたしは・・・・貴方が一番かわいいと思う姿をしたいの・・・・・だから・・・一つだけでいいの」

「・・・わかった。俺もこれ以上かわいいお前を想像するのは難しいしな・・・・じゃあ、着替えて会計するぞ」

「ええ・・・分かったわ」

 カーテンが閉じられ、着替えるところから離れていく。美少女の生着替えを聞かされては、色々と煩悩が大変だからだ。

(もうちょっと自制には自信があったんだが・・・・あいつがかわいすぎて本気でやばい)

「あの、お客様・・・・」

 二人の甘ったるい会話を聞かされて、辟易していた店員が声をかけてくる。

「ん?」

「あちらの服はお値段が少々張るのですがよろしいでしょうか?」

 金額を見せられる。それは思った以上に高い値段だが、今の男からしたら、どうでもいいことだった。

「これくらいの値が張るっていうことは、かなり上等なものだな」

「それもそうですが、なにぶん複雑な工程を経ているようでして・・・・」

「長持ちするか?」

「そこはご安心ください」

「だったらいい。あいつのかわいさに代えられるものはない。カード、一括で頼む」

「・・・・わかりました。では―――」

 さらりと惚気られて店員がしばし閉口するも、少女が着替えている間に会計の手続きを行う。

 着替え終わった少女に、梱包されて紙袋にいれられた服が手渡されると、素早く店から出て歩き出す。もちろん手はつないだ状態で、歩きながら会話をしていく。

「さてと、次の物を買いに行くぞ」

「どうして?」

 握り合っているため、片手で荷物を抱くようにして少女は歩いていた。

 男が持とうとしても、買ってくれたものは自分で持っていたいとの少女の願いだった。

「お前の寝間着が必要なんだよ・・・・」

「・・・別にいらないわよ? それより、早く帰って・・・・また頭を撫でて欲しいわ」

「頼むから買ってくれ。俺の理性を助けると思って、寝間着を着てくれ」

 苦悩する男を見て、少女が今朝の言葉を思い出す。

「・・・わたしが『抱いて』と言えば・・・・貴方としては問題ない?」

「んなっ?!」

「両者合意の上であれば、貴方としてもいいのよね?」

「おいおい、そんな安売りをするなよ」

「・・・そんなんじゃないわよ? 貴方に抱かれるのならわたしは構わないし、それにわたし達『恋人』でしょ? だったら、そういうのも普通じゃないの・・・・?」

「お前な~。今朝は恥ずかしがっていたくせに、今は何を淡々と言って―――」

 隣で歩く少女と目を合わせる。その顔は真っ赤に染まっており、その熱は耳にまで達していた。

「・・・・ばかっ」

 男に顔をみられ、俯くことでその視線から逃げる。かける言葉がなかった。

「・・・・」

「・・・・」

 互いに黙り込み、気まずい雰囲気になってしまう。だが、幸いにもそんな空気を変える出来事が二人に起こる。

 すぐ近くで、少し重たげな音を立てて収縮する何か。それも一回ではなく何度かにわけて行われ、聞くものの同情を誘う音が立つ。

「・・・ふふっ!」

 思わず少女が笑いだす。子供を優しく見守る母親のような笑みを浮かべて男をみる。

「貴方のお腹・・・かわいそうなくらいに鳴ったわね・・・・・」

 くすくすと、さっきまでの空気はどこへやら。普段ぶっきらぼうで近寄りがたいけど優しい男の、どこか哀愁を誘う生理行動に、少女は言葉にできない気持ちを抱く。

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