<<第二章~一気に急接近、お買いもの~>>22
――翌朝、少女は男の予言通りのことをしていた。
「わ、わたし・・・・昨夜はなんてことを・・・・・!!」
枕に顔をうずめ、両足をバタバタさせて布団の上をごろごろしていた。・・・・もちろん服はきている。というよりも、男に着ろと言われたからだが・・・下着姿で見た少女の身体は、文句のつけようがないラインだった。これで顔の幼さが取れたら超絶な美人と言える。
「だから言ったろ?」
男は自分で入れたコーヒー(もちろんブラック)を飲みながら、少女が落ち着くまで待っている。昨夜告げることができなかったことを、伝えるタイミングを探していた。
少女は時々、ああ、どうして、そんなと、声を漏らしていた。
「あ~、このブラックの安定感・・・・たまんないな・・・・・しかも、今日は休日。奴隷解放宣言の日だ」
一方、男は朝から至福の時間を過ごせていた。朝一番に広がる香り良い風味と、口内に広がる眠気を飛ばす苦味が、心身に活を与えてさわやかな気持ちにさせる。
「え・・・? ちょっと! どうして貴方ミルクを入れずに飲んでいるの?!」
「おいおい、そこに反応するか?」
「・・・昨夜から、ダメね。わたし・・・」
布団を片付けてコタツへと入ってくると、そのままテーブルにうつぶせになる。
「いや、そこまで落ち込むことないだろ? 俺が勝手にしただけだし・・・」
「・・・役割を果たさないわたしに・・・価値なんてないわ」
「いや、だからそこまで深刻に考えるなって・・・・それに、昨夜のお前がすごくかわいくて、俺としては得もした」
「あれ・・は・・・その・・・・うれしくて・・・・つい舞い上がって・・・・・迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑は・・・うん、理性が大変だった」
「・・・どうして怒らなかったの? わたしが不快なことをしていたのなら・・・・容赦なく言ってくれていいのに・・・・貴方にはその権利があるもの・・・・・」
「えっと、とりあえず勘違いしているぞ? いいか、まず俺は昨夜のお前に対して不快だなんて思っていはいない。そして、ここからが本題な。俺は男。お前は女。これでわかるな?」
「・・・なにが?」
「いや、だからだな・・・」
言葉を濁しながらコーヒーを一口含む。
「オスの本能を刺激するなと言うことだ・・・ちくしょう、言っててなんか情けなくなってきた・・・・・」
「どうして?」
「はっ?」
「わたしのような女を・・・・そんな目でみる男性はいないもの」
「・・・お前まじで言ってんのか?」
「・・・どういうことなの?」
「普通の神経をしていたら、昨夜のお前を抱きたがらない男はいない」
「つまり、貴方はわたしのことを・・・」
「・・・・」
黙ってコーヒーを一気に飲みきる。それが全てだった。
「あう・・・っ」
一瞬にして少女の顔が赤くなる。そういう目で見られていると意識した瞬間、急に恥ずかしさが込み上げてくる。感情を抑えなくなると、こういうところで不便だった。とはいえ、少女にはもう感情を抑えようという気は一切なかった。今や、男が自分を受け入れてくれているという、心からの安心があるからだ。
「あ~、まあ、朝からそんな夜の話は置いといて・・・」
「なんで・・・昨夜そうしなかったの・・・・・?」
「・・・頼むからそっちの話題は勘弁してくれ」
「ごめんなさい・・・・でも、そんなこと言われたのも、思われたのも初めてだから・・・つい・・・・・」
「やれやれ・・・普通そんなこと聞かないぜ? それと、俺を気持ち悪いと思わないのか?」
「貴方を気持ち悪いなんて思うわけがない! それならむしろ、わたしがそうだもの・・・・それに、わたしをそうする権利くらいあなたにはあるわ」
「まあ、それだな」
「え?」
「そういった感情を無視した権利っていうのは好かない。それに俺は人間だ。本能のままに動く獣じゃない。誇りなんてものは特にないが、それが俺の誇りになるのかな?」
「・・・ごめんなさい。貴方を侮辱することをいってしまって・・・・」
「そこはいいさ。俺はそんな立派な人間じゃないからな」
「そんなことない、貴方はいい人よ!」
「・・・そうか、ありがとうな」
「ふぁ・・・っ?!」
男が少女の頭に手を伸ばして撫でる。初めてされたその温もりに、少女は驚いてしまう。いままで、誰からも愛でられたことなどなかったからだ。
「悪い、いやだったか?」
「あ、大丈夫・・・驚いただけだから・・その、止めないで」
「あ、ああ」




