護身授業
少し短め。
久しぶりに書いたので、口調がぐちゃぐちゃかもしれません……。
学園の生活にも授業にも慣れ、ミラは存外、楽しく護衛をしていた。
「ミラちゃん、今日もお部屋行ってもいい?」
「何なら、泊まりに来るか?あのでかい……大きい部屋に一人じゃ、寂しいし」
「ミラ様は案外、怖がりなのですの?」
「違うって。どちらかというと、大きすぎて人がいてほしい」
そう。ミラは特待生だからなのか、一部屋が大きい部屋に割り振られた。見られないところに、ゼロ室につながる魔法陣もあり、一人部屋なので、ゼロの書類仕事も気にしずにできると便利なのだが……。
「寂しいものは寂しんだよ……」
そして、隣の部屋のカトリーヌ・ロイズとはすっかり仲良くなり、リリーと一緒に3人で買い物やお茶、部屋の行き来などしている。
「そうでしょうか?わたくしには普通ですわ」
「まあ、そうだろうね……。一つの屋敷が大きいのに、一部屋が小さいわけがない」
「確かに」
現在は護身術の授業。まあ、お貴族様が多いこの学園では、令息令嬢向けの授業が多い。本格的なのを隣でしていた。
「いいな〜、全力でやりたい」
「ミラ様も剣を嗜んでおられるのですの?」
「当たり前だろう?そうでもなきゃ、身は守れないからね」
「エルフのイメージは魔法しかありませんでした!」
「精霊魔法が有名だね。でも、普通の魔術も使うし、剣、槍、弓矢など他の武器もできるように指導される、子どものうちにな」
理由は聞かれなかったが、『嗜んでいるからやってみたい』と思われたらしい。
(本音は鈍らないようにしたいんだけどね……)
「では、やってみるかい?ミラ嬢?」
「え?」
振り返ってみれば、かつての学友 ナンネールが立っていた。
(しまった、私としたことが!後ろに立たれていたのに気づけねえなんて!なんたる失態……)
「ごきげんよう、理事長先生」
「「ごきげんよう」」
「ええ、ごきげんよう。で、やってみるかい?ちょうど、騎士団長のご子息の休憩も終わったようだし」
(あ、ナンネールも一枚噛んでるなぁ。あと、目が笑ってない。後で呼び出しかねぇ)
ミラはできるだけ、ナンネールと目を合わせないようにしていた。それでも、ナンネールからの視線は突き刺さるが。
「やってみたいですね。どれぐらいの実力があるのか、試してみたいです」
「決まりね。説得は任せなさい」
ナンネールは剣術講師に近づいた。ミラもその後に続く。
「ごきげんよう、セト先生」
「おや、理事長。どうかなされましたか?」
「ミラ嬢の相手を誰かしてほしいのですよ、剣のね」
「ゼネルは剣を嗜んでいるのですか?」
「ええ、そのはずよ。だって、この子は私の旧友の親戚。この国のハイエルフの族長の孫ですもの。同じような教育はなされているはず。そうよね?」
嘘と事実を織り込んで、言葉巧みに説得するナンネールに変わってねぇな、と思いながら頷く。
「旧友もそれなりの強さだったから……、ジェイド卿。君が相手するのはどうでしょう?」
「え、俺?」
急に指名されて、驚いている。まあ、思惑通りだけど。ナンネールと父親の。
「いや、それは流石に…、」
「なに?文句あるの?私の旧友なら、当時の騎士団長よりも圧倒的に強かったわ」
当時の騎士団長。つまり、現騎士団長の父親相手にミネルバが勝ったということ。
(あれは、やりすぎたとは思ってる。いい思い出だけど)
「爺様をか?そんな馬鹿な!」
「ほんとよ〜。あの子、学園トップの実力者だったしー」
「アルゴ・テトリス卿は、『無敗伝説』があるほどの実力者のハズでは……」
「うん、そうだね。でも今は、彼女が帝国一の強者よ。どこにいるんだか、知らないけど。連絡も一つもないし」
――見つけたら、即説教よ。覚悟してなさい!
あ、説教確定だわ。ミラは逃げるのを諦め、大人しくナンネールの説教を受けることにした。
「で、では、ジェイド・テトリス、ミラ・ゼネル。両者、一歩前へ」