護衛対象
「黒板に席順が書いてあるから、それを見て座ってくださいね!」
ミラの席は窓側の一番うしろの席だ。
(全体が見渡せる席だね。いい席を選んでもらえたな)
「席、離れちゃいましたね」
「仕方ないさ、先生方が決めたことだから」
「じゃ、また後でね」
「ああ、また後で」
エルフはとにかく目立つ。耳は三角だから。
(人族の貴族さんは異種族を嫌うやつが多いからな〜。ま、何もしてこなきゃ、どうってこともないさ)
ミラは余裕の笑みで席に座った。全員が席に座るまで、特にやることもない。
(護衛対象の位置を把握しておくか)
まず、皇太子と未来の皇太子妃は中央に二人並んでいた。
(仲が良さそうでなにより。というか、皇太子がぞっこんだな。婚約者が可愛いのは分かるが、嫉妬丸出しはどうよ?)
まあ、その婚約者は何もわかっていないようだが。一方通行か?そこは知らないけど。
次に見つけたのは騎士団長の息子。廊下に近い席で前の方だ。
(彼が一番遠いな?何かあれば、すぐにでも駆けつけなければ、首が飛びそうだ。物理で)
そういえば、『鼻をボキボキに折ってきてほしいな』と言ってたな。どれぐらいの実力で、天狗になっているのだか。
濃紫の髪のそっくりの双子が近くの席に座った。
(彼らがイカれた野ろ……魔法庁長官の息子と娘……)
容姿は似てるが、性格はにないでほしいな。切実に。
(クソ宰相の息子が見当たらないね?どこにいるんだか?)
見つからないまま、自己紹介が始まった。
「さっき、紹介がありましたが、僕はリシ・サラシオ。教科は生物学。じゃ、前から順にいきましょう!」
すぐにリリーの番が来た。
「リリー・アイランです。よろしくおねがいします!」
「君が『聖女』?了解。次のひと!」
ま・じ・か!まさかの聖女さま。ん?護衛対象なのか?教会からの預かりもの?クソ宰相、説明しろ!まあ、いい。勝手に護衛しておこう。
ミラはリリーの正体に驚きながらも、次々に紹介される名前を記憶の中の情報と照らし合わせていた。
「ミラ・ゼネルです。種族は違いますが、同じように学習したいので、よろしくおねがいします」
って、これ、前も同じこと言ったよな〜。
「君が特待生かな?把握しました」
ザワッ。これも、同じ。てか、いつ、試験問題を解いた?
(あ、クソ宰相の呼び出しからの監禁状態でやった書類か!あいつ、許さん!)
「静まれ〜。次に進まないと!時間がないですから!」
リシ先生の声掛けにより、教室内のざわつきは無くなった。
「オーディス・フォーネス。よろしく」
クソ宰相の息子はまさかの、お隣。メガネをかけて、いかにも『真面目です』って感じ。
(似てねぇな。奥方に似たか?色は宰相だな)
ま、変に近づかず、のんびり様子見るか。人の青春を見るのもんだな。
ミラは先生の話を聞きがてら、教室中に目を光らせた。
読んでいただき、ありがとうございます!
感想や評価をしてくれたら、嬉しいです!