かわいい学友
「入学おめでとう、未来を担う子どもたちよ」
ついに来た、入学式。講壇にいるかつての同級生で学友が力のこもった言葉を述べている。
(なんだろう……、不思議な感覚…)
今朝まで書類仕事に追われていたミラ・ゼネル――もといい、ミネルバ・イリアスはぼんやりと、連絡をしていなかった旧友を眺めていた。目元には薄っすらと隈らしきものがある。
「次に先生方を紹介します」
どうやら、担任と養護教諭だけらしい。A組から順に、リシ・サラシオ先生、ネネロア・ティアナ先生、シオン・クラン先生、アリステア・アルセーヌ先生。そして、養護教諭のサラ・ソネット先生。
「これで入学式を閉式いたします。順に教室に向かいます」
そう言うと同時に、各人のもとにクラスが書かれた手紙が飛んできた。
「ここも変わらないんだな」
ミラのつぶやきは誰も拾いはしなかった。
「A組から移動しまます!A組のみなさん、ついてきてください!」
元気のいい先生だな〜。ミラが進みだしたとき、前を進む少女が白いハンカチを落とした。
「落としましたよ」
「あ、ありがとうございます!て、あ!さっき、転ばないように支えてくれた人!」
(そういえば、転びそうになった少女を助けたな。誰だったか忘れたが、この子だったか)
「あのときは挨拶もしず、すみませんでした。私はミラ・ゼネルです。クラスメイトとして、よろしくおねがいします」
「リリー・アイランです。庶民出なので、敬語を外してください!えっと…、友達になってくれませんか?」
パッと開いた笑顔がミラを照らした。その後の若干、もじもじした感じにも心を打たれた。
(なんて、かわいい子!)
「もちろんだよ、リリー。私も庶民出だから、よろしく」
「はい!ミラちゃんは『エルフ』ですか?」
「そ。目立つからわかりやすいでしょ?」
「初めて会いました!」
「そりゃ〜、そうでしょ。世界一エルフの多い国だけど、あまり、私達は出ないからね。特定の里から」
サンサール帝国は世界の中でも、エルフの総人口が多い国。しかし、定住区からめったに外に出ないため、珍しがられるのは、当たり前だ。
「じゃあ、なんでここに?」
「なんとなく、かな?見聞を広げるために」
「そっか〜」
「閉鎖的な空間でずっといるのは良くないらしく、長が推奨してるんだ、外に出て学ぶことをな。そういう君は?」
「いろんなことを学びたいの!」
「ホォ〜、勤勉だね」
「そんなことないよ〜」
リリーはキラキラしていた。
(友達として、この子も守りますか。てか、そうしたほうがいいな。悪い虫が付きそうだ)
一応、周りに睨みをきかせた。彼女に近づこうものなら、せいぜい頑張れ頑張れ。それぐらいできるだろ?ご貴族さんなんだから。
「?どうしたの?ミラちゃん?」
「ん?牽制?」
「け、けんせー?」
あ、わかってないな、この子。ま、いいか)
「何もないよ。困ったことがあれば、遠慮なく言って。力になるから」
「え?あ、うん!」
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