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玄関にて
「ほい、着いた」
優はあの後、格好強引に俺の服を引っ張って先導し始めた。
駐輪場に着くまで結局ずっと袖を掴まれたままだった。
「へぇー、ここが優の家ね」
場面変わって、目の前には結構立派な家。
優の言動からはお嬢様って感じはしないけどな。
「自転車はその辺に停めといていいからね」
「うん」
「あ、ちょっと待って!」
「?」
優は慌てて玄関を開けて、一足先に家に入ってしまった。
玄関にポツンと取り残されて、少し寂しいのだが、まあ、待てと言われたから待つか。
「お、おかえり〜……」
ガチャりと玄関のドアをゆっくり開けて、顔を真っ赤にした優がそういった。
「はぁ、ただいま?」
困惑しながらも、優が言ってほしそうな言葉を返す。
「アハハ」
「照れるならやるなよ」
「ま、上がってよ」
「優」
「なに?」
「ただいま」
茹でダコみたいに真っ赤な優とそれを見て満足げに笑う野薔薇姫。
笑いあって一緒に家へ入る。
とても、今日会ったばかりと思えないほど仲良さげに見える。